第239話 爆弾を静かに運んでみよう
奥では、四人での飲み比べを行っていた。
どうやら、そうそうにエドワードさんが、つぶれたことで、
お呼びがかかったようだ。
僕にとっては、状態異常耐性【無効】により、
飲みにくい水でしかないのだが、早くは飲みにくい。
そんな僕を交え、一気飲み会を2回、3回と続け、
一時ほどたつと、ペテさんも酔いつぶれた。
後ろから声がして、振り向くと、
「わたしたちも、そろそろ宿に戻り……zzz」
最後まで話すことなく、騎士の腕のなかで、お姫様だっこされたのが気持ちよかったのか、眠りについていた。
先ほどから、仮面はこちらを向いており、見られているのかもしれないが、
伺うことはできなかった。
騎士は、一礼すると、抱きかかえたまま、酒場を後にした。
残るは、3人の戦いとなったが、姫君が飲みながら眠りについたことで、お開きとなった。
「ヒビキ殿は、姫様を頼みますじゃ」
彼は、眠っている姫様を僕に大事そうに手渡すと、
両脇に、ドワーフを一人づつ抱きかかえた。
僕の腕の中では、かわいらしい女の子が、寝息をたてて、幸せそうに眠っていた。
「ヒビキ殿くれぐれも、起こさないように。
一度、地面に落とした従者は、今は土の中ですじゃ」
「ははは、冗談ですよね」
沈黙があたりを包んだ。
ゴクリ……
どうやら、冗談ではないようだ。
僕は、慎重に運ぶ必要があるといいきかせ、
慌てずに、ゆっくりと忍び足で進んだ。
オオストラトさんに連れ添って、
しばらくすると、立派なホテルにたどり着いた。
「いらっしゃいませ」
「おう、ではな」
挨拶を軽くすまして入れるところをみると、
連泊しているようだ。
水上都市のように小部屋にはいると、上層の階に運ばれた。
小部屋が開くと、女性の担当は立ち上がり、深々と頭を下げた。
廻りには、部屋の扉は、一つしかなかった。
「おかえりなさいませ」
「おう、今日は休むぞ」
「はい、ごゆっくり。何かありましたら、
ご連絡ください」
彼女の言葉とともに、扉が開いた。
「ヒビキ殿は、左側の部屋をおつかなされ。
右側は、シスター殿たちが一室を二人で使っておる。
わしと息子は、ヒビキ殿の隣じゃ。
こいつは、シスターたちの隣の部屋じゃ。
姫様は、奥の寝室じゃ。
し・ず・か・に、起こさないように、寝かしといてくだされ。
し・ず・か・に・で・す・ぞ!」
僕は、返事をせず、うなずくと、奥に向かって歩き始めた。
やっぱり、姫様っていうだけあって、お金がいっぱいあるのかな。
水上都市以上の広さがあり、豪華さはこちらが上だった。
奥の扉を見つけると、ドアを開けれないことに気付いた。
不自然な体制のまま、ドアをあけると、
「うぅぅ」
爆弾が、起動しはじめた。
僕は、ドアをあけ、ゆっくりと彼女をみると、また静かに眠り始めた。
「よかったの」
「ひぃ。びっくりするじゃないですか、
驚かさないでください」
「ちょっと、心配になっての」
彼は、扉を最大限まであけると、キングサイズのベッドを指さした。
僕は支持されたまま、彼女をベッドにおろすと、
安堵のためか、深いため息をはいた。
掌は、びっしょり汗で濡れていた。
「そもそも、オオストラトさんが
運べばよかったんじゃないですか?」
「わし、死にとうないもん」
酒で酔っているせいか、本音をそのままつぶやいたようだ。
彼に、お休みの挨拶をすると、
静かに扉をしめて、自分にあてがわれた部屋にはいった。
部屋は、素晴らしい装飾品に、柔らかそうなベッドがあった。
服を着替えることもせず、ベッドに横になった。
一瞬で眠りに、つき、しばらくぶりに、どこまでもどこまでも、
深い眠りに入ることができた。




