第238話 親睦をふかめてみよう
廻りは、がやがやと五月蠅いがこのテーブルは比較的静かだ。
正面の姫と黒は、会話がないし、
隣の親父組は、飲み比べて、昔の話をしていた。
左奥では、シスターと騎士が、内緒話のように、
密着して、楽しげに会話をしたいた。
シスターの顔色しかうかがえないが……
正面の黒い人に話かけた。
「エドワードさんは、冒険者としては、長いんですか?」
「長くない」
「冒険の前は何をしていたんですか?」
「修行だ」
一問一答みたいになって、話がつづかない……
そんな様子を見かねたのか、ツインテールが会話に参加してきた
「エドワードは、わたしの幼馴染なの」
「そうなんですね。
じゃ、小さいころから?」
「そうなの。エドワードは、小さい時の絵本でみた忍者に感動して、
忍者の修行をしているの、絵本に従ってなの。ぷぷぷ」
「笑わないで、いただきたい」
忍者は、グラスにあった古酒を飲み干すと、新しくお酒を注ぎ始めた。
「じゃ、エドワードさんは、忍術とか使えるんですか?
僕はわらわないように気をつけ、質問を行った。
聞いてはいけないことを聞いたのか、
悲しそうな顔を浮かべると、うつむいて静かにお酒を呑み始めた。
「まったく、使えないの。
そんなの絵本の中だけなの」
反対に、姫は、かわいらしい笑顔を浮かべながら、けらけらと笑っていた。
目元は邪悪だった。
「そんなことありません。
剣術も投げ術も使えます!」
食い気味に話を乗り出すと、さらにお酒をかっこんだ。
「剣術なんて、普通に戦ったほうが強いの。
投げ術なんて。ぷぷぷ。ただものを投げてるだけですの。きゃきゃっきゃ」
彼は、発言を聞くと泣きだし、容器ごと酒を呑み始めた。
かわいそうに。この大陸の女性は、全般的にサディスティックな傾向にあるんだろう。
いまだ、いびられているエドワードさんというか、凶悪な姫様をほおっておいて、
懐かしい大陸の美少女に、話をするため席を移動した。
「こんばんわ。
明日から、よろしくお願いします」
「あぁ、こんばんわです。
何もできないですけど、よろしくですぅ」
酔いが回ってるのか、先ほどよりも砕けた会話のようだ。
心なしか、ほっぺたが赤く、やさし気な上場は、挨拶のときよりも、緊張がほどけていたのかもしれい。
「アンドレアさんは、若いのにちゃんとしてて
すごいね。僕も同じように、しっかりしなきゃって、思ったよ。
挨拶が堂に入ってて聞いてて、魅入ったよ」
「へぇ、そうですかぁ。へへへ。
褒めても、何もでませんよぉ。
ちゅーぐらいしてもいいですよ、うふ」
背筋を伸ばそうとしたのか、酔いのためか、
僕の方に、よっかかってきた。
その様子をうかがっていたであろう、カエル仮面は、
彼女の腕をひっぱり、自分の方に倒れさせた。
「いたいよぉ、アンちゃん。
ちからいれすぎだよぉ」
あんちゃんというと、お兄さんなのかな。
「そちらの方とは、ずっと一緒なの?」
「もちろん、子供のころから、
寝るときもお風呂も一緒だもんねぇ。
でも、12歳の時に、騎士になるって
わたじをおいて、騎士の学校のある町にいなぐなったのぉ、ぐすっ」
急に泣き始めたなぁ。酒のせいだろうか。
こまったなぁ。
がっしゃんがっしゃんいいながら、騎士は、彼女の頭をなでると、
彼女は泣き止んだ。いまは、騎士にしがみついていた。
あんなに気丈だった面影は、皆無だった。
とりあえず、泣き止んでくれて、よかった。
「僕もこの前、エイトビから、仲間と一緒にこっちに来たんですけど、
嵐ではぐれちゃたんです」
「それは、大変ですねぇ。心配でしょう」
「一応、連絡がとれて、明々後日王都で会う予定なんです」
「それは、よかったですねぇ」
彼女は、鎧がひんやりしてきもちいいのか、目をつむり、
ほっぺたをおなか部分につけて、話していた。
むしろ、年相応なのかもしれない。すこし幼くみえた。
「どういった人なんですぅ?」
「リイナっていって、大魔道士ですね。
僕なんかと――」
――フルプレートの彼は、ガシャンと立ち上がると、
くっついてたスライムみたいな女の子は、僕の方によろけた。
「急におきあがったら、危険でしょ、もう。
早く座って」
とろけていた女の子の叱責により、しぶしぶそうに座ると、
僕は横から声をかけられた。
「ヒビキどの、飲み比べをしよう。
全然よってないところを見ると、
つよいんじゃろう。
誰が一番強いか、くらべよう」
僕は、彼に引きずられると、姫様の方へ引っ張られた。




