第232話 投げた杖を回収してみよう
おっさんのいびきで目が覚めた。
誰かの家のソファーだと思うが、ハンさんがいるところを見ると、
彼の家なのだろう。
テーブルの上には、開封済み、未開封の酒瓶が転がっているのをみると、
こっちに戻って、さらに飲んだのが伺えた。
暗い部屋の中をみて、自分のバックがあったのを確認したが、
杖がでてこないことを知って、愕然とした。
「探索」
自分の杖をイメージして、魔法を唱えると、遠くの方に
転がっているのが分かった。
これは、はやくとりにいかなきゃ。
部屋内をうろうろしても、
起きる気配がないため、寝ている彼らをおいて、出発することにした。
「ごちそうさまでした。
いってきます」
彼らの返事があった気がするが、
ごにょごにょして、聞こえなかった。
家をでると、見知らぬ風景が続いていた。
それでも、方角は脳裏に焼き付いているため、
道沿いにしたがって進んでいくと、噴水が見え、訓練場を見えてきた。
再度探索の魔法を唱えると、方向は海をさし、明らかに、海の中にあることが分かった。
さいあくだ……
僕は、なるべく泳ぐ距離を短くするため、直線状で最短の砂浜に沿って歩いた。
もっとも、短いところまでくると、近くの茂みにかばんと脱いだ服を置いて、
海に潜っていった。
海は、ひんやりとしており、酔った体を冷やしてくれて気持ちよかった。
三十分ほど泳ぐと、ようやく杖がある真上に到着でき、
沈んでいた杖をもぐって回収することができた。
僕はふと思い、風の魔法を後ろに向かって放つと、
ゆっくりだが、砂浜に向かって、移動できた。
だんだんイメージを強風にしていくと、5分ほどで砂浜に到着することができた。
今後、これはつかえるかもしれない。
浜辺にあがり、全身に水を浴び、風で乾かした。
服をきて、何事もなかったように、出発することにした。
仮面の男が言っていて、迷宮都市に向けて、出発しようかと思ったが、
せっかくなので、ジュウベエさんに教わった型の朝練を開始した。
一時間みっちり行う汗だくになったが、気にせず、ゲートに向けて歩き始めた。
前の町では、モモが入口に待ってたが、
流石に、よっぱらいのおっさんが二人まっていることはなかった。
だが、女性のシルエットが見えた。
ディアナさんが、ゲートの前で待っててくれたようだ。
「おはようございます」
「おはようございます。ヒビキさん」
「どうしたんですか、
もしかして、見送りしてくれるんですか?」
「ええ、ああ、うん、まぁ。」
どうも、歯切れが悪い。
「何か、ありましたか?」
「ええ、昨日結局、通信費を貰い忘れて、ギルドに帰っちゃったわ」
「ああ、そうかもしれません」
僕は、バックから大銀貨一枚を取り出すと、
彼女に手渡した。
「ありがとう。
じゃ、気を付けて、いってらっしゃい」
「はい、ありがとうございます。
いってきます」
僕は、彼女に見送れらながら、
路銀が底をつくのは、後わずかであることを悟った。




