第231話 新しいスキルを貰ってみよう
「ひびきくぅ~ん、むすめがねぇ、むすめがねぇ」
「ええ、ええ、どうしました」
「かまってくれないのぉ。シクシク」
どうしてこうなったんだろう。
あの後、オリビアさんが、二人をポーションで回復した。
肩を抱き合い、3人で酒場に行ったのはいいとして、
まだ、二杯も飲んでいないのに、この有様だ。
モヒカンのおっさんは、泣きながら、語ってくるし、
アフロのおっさんは、愉快そうに笑ってる。
泣き上戸に、笑い上戸だよ。
「ヒビキくん、聞いてる。
聞いてくれないと、おじさん悲しくて泣いちゃう」
「けら、けら、けら」
きっと、ディアナさんは、毎度のことなんだろう、
一緒にいきますか?って聞いたら、
ギルドにお金を返してこなきゃいけないから、
っていって、飛んで帰っていった。
しっかし、この親子は、酒を飲ましても、
素面でも、面倒なことこの上もない。
そんなことを思って、ぐいっといっぱい飲むと、
三人で三杯目を頼んだ。
ハンさんは、相変わらず、号泣しながら、
つまみを食べては、泣いていた。
アフロは、そんな様子を楽しそうにみていた。
「バート師匠は、この大陸の魔王なんですか?」
「けらけらけら、ちがうぞ。
わしは、向こうの諸島の魔王じゃ」
「魔王が自分の大陸を離れててもいいんですか?」
「いいんじゃ。
副魔王が優秀じゃから、いない間でも、
ちゃんと回っとる」
「そういうもんですか、よくわからないな。
ここの魔王と敵対したりとかは、ないんですか?」
「モーリスとは、仲がよいからのぉ。
おぬしが倒したジルとは、不干渉の間柄じゃったが、
仲は悪くもよくもないぞ」
「あれ、僕、倒したっていいましたっけ?」
僕は、三杯目のワインを飲み干すと、
四杯目を注文した。
「おぬしが、言わんでも、魔王であれば、
倒したかどうかは、わかるんじゃ」
「そういうもんなんですか?」
「そういうもんじゃ」
僕は、一口飲むと、机に突っ伏した。
「こいつは、酒が弱いのぉ。
とはいえ、このままほおっておくと、いつ死ぬか判らんしのぉ」
彼は、僕をみてごにょごにょすると、
僕の体が一瞬光ったように見えた。
周りの様子に変化がないことから、他の人間には、みえなかったようだ。
「あまりにも、おぬしが酒に弱いから、
おぬしに、状態異常耐性変化をつけた。
魔法の用に念じれば、状態異常耐性を強くも、弱くもできるぞ。
便利じゃろ」
「弱くする必要あります?」
「弱くする必要は、ないじゃろうが、
強くなりすぎると、酔えなくなるぞ。
それじゃ、つまらないじゃろ。
何事も、臨機応変じゃ」
「そういうもんですか?」
「そういうもんじゃ」
何か同じようなやり取りをしている気がする。
「それにしても、おぬしは、これで三つの
ユニークスキルを持っておるなぁ」
「へえ、そうなんですか」
「普通は、一つなんだが、珍しいな。
もう、増えることはないと思うんじゃが……
5つ以上のユニークスキルを覚えると、
おかしくなるから、気をつけるんじゃぞ」
「装備でもですか?」
「装備に紐ついてるのは、大丈夫じゃ。
あくまで、個人でもっているのものってことじゃ」
僕は、酔いがまわっているのか、理解できなくなってきた。
「もう、増えないんですよね。
後天的には、増える機会は少ないんじゃが、
今回のように、ゼロではないのじゃ」
「ちなみに、おぬしには、好意のユニークスキルがついてるんじゃが、
これは、先天的か?」
「わかりません。
以前に、スイカの女性に、好意をつけてもらったことがあります」
「スイカの女性って誰じゃ。
スキルが付けれる人物は限られて……
まさかとは思うが、シューリン様じゃないじゃろうな」
「はい、スイカのシューリン様です」
「おぬしは、馬鹿なのか、大器なのか、まったくわからんな。
大体……
何かを言いかけると同時にモヒカンが目に見えた
「そんなつまんない話はいいから、
私の話を聞いてよ。シクシク。
とりあえず、かんぱーい」
「「かんぱーい」」
僕は、残ってたグラスを飲み干すと、
そのまま記憶を失った。




