第228話 酔っ払いと勝負をしよう
どうしよう、どっかでお金を稼いだほうがいいのかな。
う~ん
僕が悩んでいると一人の酔っ払いが声をかけてきた。
「あんちゃん、どうした。
何かこまりごとか?」
「ちょっとお金を使いすぎて、
どっかでお金をかせがないとかなぁと
考えてたとこです」
近づいてくるだけで、酒のにおいがしてきた。
昼間っからお酒とは、いい身分だ。
「ほうほう。
じゃ、あんちゃん。
わしと勝負をしよう。
どちらか、先に一撃与えられたら、勝ちの勝負じゃ。
わしが勝てば、あんちゃんが、わしの酒につきあう。
あんちゃんが先に一撃を与えられたら、
なんでも望みを叶えてやろう」
だいぶ胡散臭いが、暇だから受けてみようかな。
「いいですよ。
よっぱらい相手でも、全力だしますからね」
「ほうほう、威勢がよいのぅ。
こっちじゃ」
「はい」
彼につきあって奥にいくと、木板で囲まれた30メートルの円形上の砂場に到着した。
「ここはなんです」
「昔でいう、闘技場じゃ。
今は、訓練場っていうか、空き地じゃ」
彼は、よたよたと中央までいくと。
「武器は、なんだっていいぞ、
あんちゃんじゃ、かすり傷一つつけられないじゃろうからな。
わしは、素手で十分じゃ」
「いいましたね。
怪我してもしりませんよ」
僕は、彼の軽い挑発にのり、杖と剣をバックから取り出し、
右手に杖、左手に剣を装備した。
「変わった装備じゃな。杖と剣の組み合わせじゃとわ。
そんな装備で大丈夫か?」
「ええ、大丈夫です」
僕は、10メートルほどの距離を取ると、ジュウベエさんに習った防御の型を行った。
まずは、相手の様子をうかがおうかな。
重心を後ろで静止し、右足と右手を前、右手は、腰よりも低くし、杖の先は肩幅と同一に合わせた。
後ろ足は、いつでも移動できるようにつま先のみ、地面についている。
「うむ、構えだけは、いっちょまえだのう。
どこかで見覚えがある気がするが、思い出せんわ。
じゃ、いくぞ――」
「――火玉」
彼の発言が終わる前に彼に向かって、先制で、魔法を放った。
彼は、全く意に介せず火玉に走り込むと、
滑りながら、火玉を躱した。
とても、べろべろの酔っ払いの動きじゃない。
あっという間に、半分の距離を縮めるとさらに早い動きで、3メートルくらいまで近づいた。
仁王立ちの構えから、腰を落とし、正拳突きをはなった。
拳自体はこちらまで届かないが、拳の風圧が、砂煙を書き上げながら、
こちらに迫ってくるのが見えた。
すぐに、右足を半歩下げ、剣と杖でクロスにすると、来るであろう衝撃に備えた。
構えた直後、衝撃が腕にくると、両腕が万歳のように吹き飛ばされ、飛ばされた腕に引きずられるように、一メートル後方に吹き飛んだ。
「おぉ、初撃を耐えれたのは、久しぶりじゃ。
次は、接近戦じゃぞ――」
――彼の言葉が終わるころには、僕の目の前に到着していた。
僕は、急いで躱しの型に遷移した。
彼の左手の攻撃を右手で受け、相手の力を利用し、右回転して、体勢をかえながら、
力を逃がしていった。
上段攻撃、下段攻撃と、僕がうけれるぎりぎりの速さで攻撃してくれているようだった。
側から見ると、踊っているように右回転、左回転と、フットワークを使いいなしていく。
数分もたつと、彼は急にその場でたちどまると、嘔吐した。
僕は、彼が落ち着くまで、その場で、乱れた息を整えた。
「急な運動は、よくないねぇ。
待ってくれてて、申し訳ないね」
「いえ、接近戦も本気じゃないんでしょう。
最初の一撃に比べると、速さが半分もでてませんし……」
「あんちゃんが、どこまで型をつかえるか、みてみたんじゃよ。
相手の力量を図るのも、戦術の一歩じゃ――」
――僕は、三メートルほど距離を離れると、攻撃するイメージを固めた。
たぶん、この人は、別格で強い。
倒すなんて、もってのほかで、正攻法では、一撃も当てられない。
離れた直後、ゆっくりと正中線を崩さないように近づくと、虚をつかれたのか、彼は身構えた。
僕は、更に近づくと、右足で、足元の砂を右足で全力でまき散らした。
あたり一面は砂煙となり、見えなくなると同時に、
右手の杖を彼の胸をめがけて投げた。
「ほほう」
砂煙は、彼の目前まで、広がっており、
彼からは、僕の行動が視覚になってみえないはず。
そんな状況でも、杖の先が一瞬みえたのか、
体をくの字に曲げると、ぎりぎりで彼の頭の先を通過していった。
彼の視線がこちらになくなり、姿勢をくずしたのを確認すると、
必殺の一撃をくりだした。
「スズネ突撃壱!」
人生で、二度目となる必殺の突撃技は、前回よりもスムーズに、
彼の胸先に向かっていった。
「なんと‼︎」
彼が頭を上げると驚愕し目を見開くいた――
――直後、右手の人差し指と親指で剣先をつまんだ。
僕の全力の一撃は、彼を二メートル、後方に飛ばしただけで、
剣先は、あと一歩、彼に届かなかった。
「もし、その構えを思い出しておらんかったら、
くらっとったかもしれんのう。
次は、わしの番じゃな」
彼は、剣を放し、手をぐるぐるとまわし始めた。
僕は、彼の攻撃を身がまえるため、2メートルほど下がると、
両手で剣を身構える。
「いくぞ、
必殺!正掌鳳凰拳」
彼は、正拳突きをはなつと、衝撃波はこず、
僕の足元に数メートルの魔法陣がゆっくりと描かれた。
僕は下をみると、魔法陣は光輝き、紫色の巨大な握りこぶしが、
僕を上空にふっとばしたところだった。




