第226話 通信して状況をきいてみよう
ギルドの中は、以前広かった水上都市と同じくらいの大きさが
ありそうだった。
「こっちだよ」
「はい」
ハンさんは、ギルドの入り口近くの階段を登ると、
僕を誘導してくれた。
「前も2階だったんですが、
今回も通信する部屋は2階ですか?」
「そうだね。一回は、クエスト発行する大部屋って
だいたい、決まってるね。
クエスト発行以外は2階が多いね」
「そうなんですね」
彼は二階を登りきると、左に曲がり手前の部屋に入っていった。
「さぁ、こっちだよ。
おまたせ。ヒビキ君が来たよ」
「「はい、マスター」」
二人の女性が同じタイミングで、返事をした。
「あら、これがモモちゃんがいってた彼ですか。
思ってるより、痩せてますね」
「そうね、もっと筋肉質が好みかと思ったけど」
彼女たちが、交互に僕を品定めしている。
「こらこら、観察してないで、
早くつないであげなさい」
「はい、マスター」
一人の女性が、奥の水晶玉に向かうと、通信を開始した。
「こちら、シュンセルのギルドですが、
ヒビキさんがいらっしゃいました」
「判りました。お繋ぎしますので、お待ちください」
「ヒビキさん、変わりましょう。
あとは、自然に変わると思います」
「判りました」
僕は彼女に変わって席に座ると、部屋に居た全員が後ろで見守っている。
しばらく待っていると、前と同じように徐々に人物と風景が見えてきた。
前回は女性だったが、今回は男性のようだ。
同じようにフードをかぶっており、顔の上半身はお面を被っていた。
「ヒビキ君、大丈夫かい?」
「はい、大丈夫です。あなたは?」
「私は、連絡者だ。
リイナから、連絡をもらっている。
昨日、ターバレスを出発して、今は、工業都市 セユクーゲに到着する予定だ。
だが、まだ、連絡がきていないな。
旅は順調で、昨日は、元気な声を聞こえたよ」
「そうなんですか、それはよかったです。
ところで、リイナは、一人旅なんでしょうか?」
「ターバレスで、知り合いの冒険者にあって、
今は女性3人で移動しているとのことだ」
「そうですか。一人じゃなくてよかったです。
少し安心しました」
「ヒビキ君は、一人だろう。
もし、ほかのパーティに紛れることがあったら、
そっちのほうが安全だよ」
「わかりました。少し考えてみます」
「明日は、迷宮都市エンバーソグだろう。
その次の日には、王都ベーオーンだから、リイナより、大分早くつけそうだね」
「はい」
僕は、ふと昨日のやり取りでの注意事項を思い出した。
「お名前を聞いてもよいでしょうか?」
「私の名前かね。……オーサだ」
「オーサさんっていうですね。
わかりました。
ところで、この前の女性の方は、どうしたんですか?」
「彼女は、体調をくずしてね、今は休んでるよ。
今後は、わたしの方で、連絡する」
「そうですか、お大事にと伝えてください」
「ありがとう。病気ではないから、気にしないでくれ。
じゃ、ヒビキ君、
気を付けて、旅をつづけたまえ。では」
そういうと、そうそうと、通信は途切れた。
「ありがとうございました。
助かりました」
「「いえいえ」」
立ち上がり後ろを振りむき、ギルドの職員さんたちに、お礼を述べた。
一人のモヒカンは、顎に手をやると少し考えているようだった。
「ヒビキくん、後で、一緒にご飯を食べよう。
夕暮れ時に、港の前の公園で待っててくれ。
私は、今、急用ができたので、ここで失礼する。
ディアナ、ギルド前まで、送っていってあげたまえ」
「わかりました。
では、いきましょう」
「はい」
僕とディアナさんは、部屋からでると、階段に向かって歩き始めた。
「私は、ディアナといいまして、ここで副ギルドマスターをやらしてもらってます」
「そうなんですね」
しばらく進み、階段を降り始めると、
「モモちゃんにいたずらされました?」
「ええ、入り口で、ハンさんを怒らせました」
「ああ、かわいそうに。なでなでしてあげましょうか?」
「えっ」
「冗談ですよ、ふふふ。ヒビキさんはからかいがいがありますね」
「はぁ」
にやにやしているディアナさんをと一緒に、最後まで、階段を降りると、
ギルドのドアを開けてくれた。
「ありがとうございます」
「はい、またいつでもきてください」
彼女は、一礼するとギルドに戻っていった。
この大陸では、からかうのが普通になってるんだろうか。




