第225話 緑色の髪の人に声をかけてみよう
町のゲートをくぐり、ギルドを探す。
どうも、近くにはないようだ。
町の中央の噴水を越え、辺りを見回すと
港には、大きな円形状の公園、山側にはバザーが広がっていた。
これは、どこにあるかわからないな。
近くであるいていた冒険者に聞くと、来た道とは反対側、
この先の通りに建物があるようだ。
噴水を通り過ぎる道なりにV字ラインのような道をまがると、
冒険者で混雑している建物を発見した。
モモさんがいっていた緑の髪の人は、直に発見できた。
頭一つ高いせいで目立つのか、筋肉隆々のモヒカンで目立つのか、
判断はつかないが、誰よりも異彩を放っていた。
声をかけたくない気持ちでいっぱいだが、
勇気を精一杯出して、話しかけた。
「すみません、シノブさんですか?」
「あぁ、誰だ!下の名前で呼ぶやつわ!」
ドゴン!
彼のげんこつが、僕の頭にめり込んだくらいの衝撃が加わり、
あまりの痛さに、地べたにうずくまった。
「いたた、たた」
周りでは、地雷をふんだ、だの、かわいそうだだの、死んだななど、
様々な声が冒険者から漏れた。
「おまえか、俺がどれだけ、下の名前でよばれることを知ってて
やってるのか?あぁ」
彼は、僕の首ねっこを片手でつかむと、空中にぶら下げた。
「いえ、しらなかったんです。モモに紹介されて」
そう聞くと、彼は笑顔になり、僕をゆっくり降ろしてくれた。
「すまない。君がヒビキ君だね。
私が、このギルドのマスターのハンだ。
娘から、君が来ることは聞いてるよ」
彼は、手を出し握手を求めた。
当然のように僕も握手を返すと握りつぶされるのかと思うくらいに強かった。
「じゃ、モモのお父さんなんですか?」
「あぁ。あいつは昔から、いたずら好きでな。
甘やかして育ったせいかもしれない。
私が下の名で呼ばれることを嫌がってるのを知ってるのに、
ああいった嫌がらせをするんだ。
そういえば、教えてくれた時ににやにやしてたから、
なんかあるなとは、思ってたんだけど……。
ほんとにすまなかったな。」
彼は、深々と僕に謝った。
「いえ、ハンさん、もう大丈夫です。
確かに、紹介されたとき、様子がおかしかったですから、
気を付けるべきでした」
「さぁ、ヒビキ君こっちだ。
既に準備はできてるから、
ついてきたまえ」
彼は、僕の背中をバンと叩くと、そそくさとギルドの中に入っていった。
叩かれた背中と頭は、同じくらい痛かった。




