第222話 出発してみよう
朝早いこともあって、使っている人は少ないようだ。
早々に服を脱ぎ、けだるい体を引きずって大浴場に向かった。
扉を開けて、中にはいると、浴槽が2つあった。
フロア内は、レンガ造りの何十人もはいれそうな浴槽が一つ、
もう一つは、外は、岩で囲まれた、露天風呂のようだ。
露天風呂には、数人の男女が話をしながら入っていた。
室内の浴槽には誰も入っていなかった。
体を洗い、近くにある浴槽にはいる。
思ってたよりも、湯の温度は高かった。
そんなに長くは、入ってられないだろう。
のんびり入っていると直に体が温まった。
体が温まったら、半身浴に切り替え、足のみで入ってぼんやりしていると、
外にいた冒険者たちが中に入ってきた。
外に、誰もいなくなったため、
入れ替わりに外にいくことにした。
外にでると、風が温まった体を冷やしてくれて、気持ちがいい。
体が冷え切る前に、誰もいない岩風呂にはいる。
熱過ぎず、いつまでも入っていられそうな温度だ。
深々と肩までつかると、足を伸ばして
体の力をぬくと、気持ち良すぎて、眠ってしまいそうだ。
目をつむっていても、樹々からたまに、漏れる朝日が、眩しい。
瞼から、光がみえることで、寝そうになる抑制剤になっている、
しばらくすると、だんだんと体が熱くなる。
湯船からでて、全身で風を浴び、体を冷やす。
片手間になったので、ついでに、ジュウベエさんに習った型をゆっくり行う。
こんなことを交互にやっていたら、
結構な時間がたっていた。
教えてもらった最後の型まで行うと、体調の悪いのも飛んで行った。
最後に、室内の浴槽で体を温めてから、
大浴場をでて、服に着替えると、ホテルのロビーまで来た。
「どうでした?いいお湯でしたでしょう」
「ええ、とても、よかったです」
「では、お気をつけて、
いってらっしゃいませ」
「いってきます」
僕は、挨拶をすると、ホテルをでて、町の中央に足をむけた。
町の中央にある噴水までくると、
次の町にむかうゲートが見えてきた。
ゲートの近くでは、白い貝殻のイヤリングをした女性が、待っていた。
僕を見かけると、笑顔を見せ、手をふりはじめた。
「ヒビキー、おはよー」
「おはよう、モモ」
「昨日は、大変だったんだから。
女でひとつで、ホテルまで運ぶのは」
「迷惑かけてごめんね。」
「いいわ。その分、スィート泊まれたし。ふふふ」
「ひどいよ」
「えへへ。ベッドよかったわ。
お詫びとお礼にお弁当作ってきたから、
道中で食べてね」
彼女は、バックから、お弁当を取り出すと、
僕に手渡した。
僕は、受け取り、バックに目を向けるため、
下向くと、ほっぺたに柔らかい感触があった。
ちゅっ
僕から、少し離れると
「じゃ、気をつけて、いってらっしゃい」
彼女は、ちょっと距離をあけると
笑顔で、手をふっている。
「いってきます」
僕は、彼女に向けて手を振り
後ずさりをしながら、歩き始めた。
しばらくして、彼女が見えなくなると、
ほっぺに残る感触が寂しさを増大させた。




