第221話 一緒にお酒を呑んでみよう
「おい、ヒビキ、もっと飲めよ」
「はい、いただきます」
どうして、こうなったんだろう。
あの後、二人で、彼女の馴染みの酒場に入ったまでは、よかったんだけど、
3杯目くらいから、こんな調子だ。
そして、今、彼女は、5杯目に突入した。
僕も、遅ればせながら3杯目を頼む。
「だいたいね、内の上司が……」
「そうですね」
「聞いてんのか、ヒビキ」
「はい、聞いてます」
僕は、あらためて彼女の顔を見るが、
完全に目が座っていた。
「何見てんだ、ヒビキ」
「いえ、なんでもありまっせん」
絡み酒ってやつかな。
やっかいだ。
僕は、出てきた酒をぐいっと一気にかっ込む。
「いい呑みっぷりだな。
店長、もういっぴい!」
「あいよ」
彼女のグラスは、いつの間にか空いていた。
「おまち」
テーブルの上には、なみなみ積まれたワインが
2杯置かれた。
「よし、ヒビキ乾杯だ、かんぱーい」
「かんぱーい」
僕は、一気にグラスを胃に流し込むと、机に倒れこみ、
そのまま、気を失った。
ちゅんちゅんちゅん。
鳥の声で、目が覚めると、部屋に居た。
見覚えがないが、たぶん、ホテルの部屋だと思う。
あたりには人影もなく、ベッドに一人で横たわっていたようだ。
うぅ、きもちわるい。
ベッドから、立って、辺りの様子をうかがう。
昨日と同じ服装で、かばんはテーブルの上に置かれてあった。
カーテンを開き、外を見ると、まだ朝早いせいか、
人はまばらにいるだけだった。
僕は、魔法で水をだし、一杯のむと、かばんを片手に、
フロントに向かった。
「おはようございます!」
フロントの大きな声に、頭がいたい。
「お連れさんは、先ほどかえられましたよ」
「モモさんですか?」
「ええ、スィートに泊まられました。
お代は、ヒビキ様からといわれておりまして……
大銀貨1枚になります」
「え?
えぇ」
僕は、涙目になりながら、バックから大銀貨一枚取り出すと、
彼に支払った。
「毎度ありがとうございます。
帰る際に、奥に大浴場がございますので、お使いになられても、
かまいませんよ。
冒険者様は、出発する前に、よく入られます」
「はい、ありがたく、使わせていただきます」
僕は、彼が勧める大浴場に、重たい足をあげた。




