第220話 夕焼けをみてみよう
「じゃ、部屋も決まったし、
お勧めの場所を案内したげる」
彼女は、笑いをいったん止めると、
「え、ああ、うん、お願いするよ」
あんまり乗り気ではなかったが、断れる雰囲気ではなかった。
「じゃ、付いてきて」
彼女は、宿をでると、左、左とまがり裏側に向かって歩き出した。
先ほどまでの通りでは、冒険者たちを見かけたが、全くいなくなり、
人どおりがなくなった。
それでも、民家の合間を進んでいくと、山道が見えてきた。
「こっちよ」
彼女は、僕の手をとり、ぐんぐんと山道を上っていく。
意外と体力があるのか、息も切らさずに上っていく彼女と、
体力がないのか、直ぐにぜひぃぜひぃいいながら、進んでいく僕。
「ほら、がんばって」
彼女の応援も、限界が近い僕の耳には聞こえない。
山道を一時ほど一緒に上ると、日もだいぶ落ち、
夕焼けが見えてきた。
「到着したわ」
彼女のいうとおり、湾が一望でき、ふたつの山で遮られた町並みが、
夕陽に染まって、美しく彩られていた。
「どう綺麗でしょ?」
彼女の笑顔にも夕焼けあたり、美しく彩られている。
そいうえば、リイナとみた夕焼けも綺麗だったなぁ
「きれいだねぇ」
「でしょ」
「モモも綺麗だよ」
「え?」
「これをつけると、もっと綺麗だと思うよ」
僕は、さっき買った白いイヤリングを彼女に手渡した。
彼女は、後ろをむくと、両耳に白いイヤリングをつけた。
それは、夕陽を浴びて、白にも、オレンジにもみえ、
彼女の美しさに純連さが追加されたように見える。
「よく似合うね、可憐にみえるよ」
彼女は、驚いた表情を一瞬したあと、笑顔に戻った。
「大事にするね」
「うん、さぁ、暗くなる前に帰ろう。
夜の山道は危険だよね」
「残念ね」
彼女は、僕の腕にしがみつくと、下目づかいで
照れているようだった。
彼女をみてから、僕はふと思い、一瞬真面目な顔になる。
僕は、いったい、なにしてるんだろう?




