第216話 パフェを食べてみよう
「店員さん、あれをひとつ」
注文を聞くと申し訳なさそうにしている。
「すみません、巨大パフェは、売り切れまして、
小さいのであれば、一つは提供できます」
「じゃ、それと、ヒビキさんは?」
「ぼくは、あたたかい飲み物を一つ」
「わかりました」
店員さんは、いそいそとキッチンに戻っていった。
「ヒビキさんは、それで、よかったの?」
「僕は、さっきのお昼でおなかいっぱいだよ」
「せっかく、おいしいのに、残念ね」
「そういえば、どうして、ムラサキさんなんだろうか、
疑問に思ってたんだ」
「なぜです?」
「僕は、どちらかというと、ムラサキさんより、ミカンちゃんの方が
仲がよかったきがする。一緒にいた時間も長かったし……」
「ああ、そういうことね。
ミカンは、不精なんで、なかなか返事をよこさないけど、
ムラサキは、まめなんで、ちゃんと返事を返してくれます」
彼女と会話をしていると、店員さんがパフェを持ってきてくれた。
巨大ではないが、それでも、30cm位は、あるように思える。
中には、クリームやら、コーンなど、が入っているグラスに、
色とりどりの果物が見える。
僕の前には、あたたかい紅茶のティーセットが置かれた。
一杯目は店員さんが継いでくれた。
その横で、彼女は、パフェをもの珍しそうに見ている。
「いただきます」
「どうぞ、どうぞ」
彼女は、返事を聞く前に、スプーンをグラスにいれると、
一口一口をおいしそうに、食べている。
そんな様子を僕は、和やかに、見ていると、
「そんなにみてるなら、一口あげるわよ」
「はい、あ~ん」
そんなに物欲しそうにみえたのかな。
くれるというなら、もらおうかな。
彼女は、グラスから、一口分をすくうとと、
僕の顔の前に、スプーンを出してきた。
パク。
クリームは、甘く柔らかく、
コーンはある程度の歯ごたえが、より、クリームを柔らかさを引き出させている。
「おいしいね。僕も頼めばよかった」
「でしょ。
はい、あ~ん」
彼女は、もう一口、グラスからすくうと
また、顔の前に出してきてくれた。
僕は、顔を前に出し、スプーンにのったクリームを食べるために、口を広げた。
ガジ。
―――その刹那、スプーンは、クルリと、モモさんの方に回転し、
彼女は、自分の口に咥えた。
「おいっし。
一口っていったでしょ」
僕の失態をきゃっきゃ言いながら、
楽しそうに笑っている。
僕は、恥ずかしさのあまり、コップに入ったアツアツの紅茶を
ゴクリと飲んだ。
あまりの暑さに、ゼハゼハ口で息をしていると、
それが、より一層、おもしろかったのか、声を大きくげらげらと笑った。




