第214話 モモさんと会話をしてみよう
「どうかしました?」
「思わず、スライムさんの開発者を思い出しまして」
「ジュウベエさんですね」
「ご存じなんですね」
「ええ、この大陸でジュウベエさんを知らない人はいないと思いますよ」
「そうなんですね、すみません」
「……ところで、どっかであわれたんですか?」
僕は、これまでの経緯を話し始めると、その途中で、料理が運ばれてきた。
料理と一緒に、赤ワインのグラスが、二杯出てきて、一杯づつ受け取った。
昼から酒なんだなぁ
乾杯をすると、話をいったん中断し、出てきた料理を観察してみる。
炒めてあるシーフードは、伊勢海老やらホタテやらが入っており、
ときおり、色合いの美しいパプリカなど、熱によって形の代わりにくい野菜が入っていた。
その食材からは、にんにくの効いたスパイシーな香りが、食欲をそそられる。
まずは、エビの殻から身を外すと、ソースがたくさんついている野菜と一緒に
口に入れた。
香辛料の風味とにんにくの香りが口の中に広がる。一口噛むごとに、
なんとも言えない、エビのうまみと、ソースのうまみが合い、噛むのをやめることができない。
エビのぷりっぷりの歯ごたえが、相まって、あっという間に胃の中に納まった。
モモさんは、僕の食べっぷりを見ていて、満面の表情をしている。
その後、自分の料理を手につけ、
恍惚の表情を浮かべては、口に運んでいる。
しばらくは食事に集中で、会話はあとだな。
出てきた料理が、次々と口に運ばれ、あと一口といったところまで、減っていった。
モモさんは、ゆっくりと食べているのか、まだ、半分くらいのこっていた。
そんな視線に気づいたのか、食べながら、話かけてきた。
「明日、シュンセルに向けて出発するんですよね?」
「ええ。教えてもらった通り出発して、到着する予定ですよ」
「シュンセルのギルドの人に連絡しておきましたから、
すぐに、対応してもらえますよ」
「ありがとうございます。助かります」
「いえいえ、ごちそうになるんですから、当然です」
「えっ」
僕は、顔を見ようとしたが、視線を料理にそらし、
話をすり替えようとしている。
「で、髪の毛がグリーンですから、一目見れば、誰かわかりますよ」
「今度は、グリーンですか、名前は?なんていう人でしょう?」
「シノブですよ」
彼女は、うつむいて、表情を隠している。
肩が震えているところをみると、笑いをこらえてるような気がする。
なにか、あるのだろうか。
肩の揺れが収まると、また、何事もなかったように食事を始めた。
テーブルの上の料理をすべて食べ終えると、店員さんを呼び出した。
「おばちゃん、お土産に一人前と、口直しを何かもってきてほしいな」
「あいよ」
店員は、注文を聞くと、また、直ぐに戻っていった。
「おいしかったでしょ?」
「うん、おいしかったよ」
「でしょぉ。お土産として持って帰れるから、後で、主菜として食べるといいよ」
「そっか、わかった。ありがとう」
しばらくすると、テーブルには、パイナップルがでてきた。
出てきたパイナップルは、甘く温かかった。
なんとか、パイナップルをおなかにいれ、
店の入り口でお金を支払うと、お土産の箱をいただいた。
モモさんは、すでに店を出ており、店員さんに、お礼をいって、店を後にした。
外にいた、モモさんは、嬉しそうだ。
それも、そうだよね。お金を払ったのは、僕だもん。




