第213話 手づかみのシーフードを食べてみよう
まだ、モモさんは、来ていないようだ。
日陰で、少し待たせてもらう。周りの昼時だからか、
朝より大分、人が、少ない。入口でも、出入りの少なさが分かるぐらいだ。
そろそろ出てくるかな。
少し待つと、モモさんが、建物からでてきて、あたりを見回している。
こちらは、日陰からか、よく見えてないのだろう。
僕は、日陰からでると、モモさんに見えるように手を振った。
彼女は、僕を見かけると、小走りでやってきた。
「もう、隠れないでください。
探しましたよ」
少し怒り口調だが、本当に怒っているわけでは、なさそうだ。
目元に力がこもっていない。
「ごめんなさい。少し買い物疲れで、木陰で休んでました」
話を聞くと、モモさんは、の先導し海側に向かって歩き出した。
「買い物は、終わりました?」
「いや、まだ、足んなくて。
できたら、手伝ってほしいんだよ」
「いいですよ。でも、その前に腹ごしらえですね。
この先に、おいしいシーフードレストランがあるんですよ」
「そうなんだね。
任せるよ」
彼女についていくと、港に向いている大通りが出てきた。
大通りを向かい合うように、いくつもの飲食店が連なっていった。
どのお店も賑わっており、中央にあるお店に入っていった。
「おじさ~ん、きたよ~」
「おお、話は聞いてるよ、奥に場所とっておいたから、使いな」
一人の年配の女性が近づいてきた。
「あら、モモちゃん、男連れなんて、
初めてじゃない。
なかなか、かっこいい男の子じゃない。
あなたも、モモちゃんに声をかけるなんて、
見る目があるわね。
この子はね……」
遮るように、モモさんが、話だした。
「―――おばちゃん、向こうの席でしょ。
案内は、大丈夫だから。
料理は、お任せするわ。
飲み物は、いつものを二つお願いするわ」
「はいはい」
おばさんは、そういうとキッチンに注文を伝えに戻っていった。
周りは、がやがやしているが、特にこちらを意識していることはなく、
みんな手掴みで、魚やら貝、エビなどを食べている。
僕らは、四人掛けのテーブルを対面で座った。
「ここはね、手掴みで食べるお店なのよ」
「手づかみで食べるのは、初めてだよ」
「でしょう。ここの近辺の町でもないのよ」
ここに、ボールに入ったスライムさんがいるでしょ。
指をいれておけば、全部綺麗になるのよ」
ボールを見ると、ぎょっとした。
確かに、ボールには水色のスライムが、ゆらりゆらりと蠢いていた。
こんなところにまで、使われるとは、流石だ。
僕は、思わずジュウベエさんを思い出し、
こちらに向かって、得意げにしているのを想像した。




