第202話 嵐から脱出してみよう
「リイナ~」
僕の叫びとは、裏腹に、どんどん、馬車から遠ざかっていく。
これは、やばい。死ぬかもしれない。
後ろ向きに、ハリケーンに引っ張られていっていたので、
向きを変えると、100メートル先には、黒い渦の塊が、僕を待ち構えていた。
渦の中には、先ほどの飲まれた巨木が、回転しながら上にあがっているが、
同じように巻き上げられた物とぶつかって、徐々に体積を減らしている。
これは、中に巻き込まれたら、一貫のおわりだ。
僕は、自分に落ち着けと心に念じたが、一向に落ち着かない。
何か、身を守るもの、この場から脱出するものは、
ないか、必死で考えるが、一向に出てこない。
これまでの経験が走馬灯のごとく、思い出されていく。
そして僕は、起死回生の魔法を思い出した。
一回でうまくいくはずがない、
勇者にだって、使いこなせなかった魔法が、
僕にできるはずがない。
そんな思いが湧き上がっていくが、
勇気を振り絞り、魔法をイメージしていく。
僕が飛ぶイメージが出来上がった時には、
目の前には、黒い渦の塊が呑み込まんとしていた。
僕は、反対を振り向き、リイナがまつ馬車を見ると、
魔法を唱えた。
「飛行」
魔法は発動され、ゆっくりとハリケーンから離れていき、
どんどんスピードが増していった。
気が付くと、馬車の上空を通過し、弾丸のような速さで、森に向かっていった。
樹に頭から激突しないように、頭を腕でカバーした。
目をつむり、なすがままにすると、森の木枝をばきばき折りながら、進んでいく。
その後も、木々をなぎ倒しながら進んでいったが、
しばらくすると、森を抜ける光が見えてきた。
僕は安堵し、森を抜けるのをまった。
抜けた先には、巨大な茶色物体があり、頭から、激突した。
ボワン
巨大な激突音の後、3メートル上空に浮かび、砂浜に着地した時には、
僕の意識は失っていた。




