第201話 嵐対策をしてみよう
二人で、荷馬車の後ろに乗り込むと、ゆっくりは進み始めた。
おじいちゃんは、御者台に座り、馬を見ている。歩みは、徒歩よりも早いが、
走るよりも遅いためか、他の荷馬車にごぼう抜きされ続けている。
「遅いわね」
「そうだね、大分ゆっくりだね、これだと、夜ぐらいになるのかなぁ」
「特に、やることがないわね」
「そういえば、ここも、前の大陸みたいに一方通だね」
「そうね、今日、ママに行程をきいたんだけど、
豊穣都市 ダーパレス→工業都市 セユクーゲ →独立国家 モンテリンク→交易都市 ランボス→王都 ベーオーン
って、感じね。
他にも、途中、途中で村があったりするのよ。
で、今、向かってるのが、ダーパレスの間にある、アクレセっていう村よ」
「よく、おぼえられたね」
「わたしって、天才だから」
「そういえば、スキルをもってなかったっけ」
「そうだっけ、忘れたわ」
そういえば、帽子のスキルが、記憶力に関するなんかだった気がする。
記憶を思い出そうとしていたら、幌にポツリポツリと、
雨が降り始めた。
おじいちゃんをみると、雨合羽を着始めている。
「本降りになりそうですか?」
僕は、おじいちゃんに聞こえるように大きな声を出した。
「やばいかも、しれんのぉ。
途中でどこかで雨宿りが必要かもなぁ」
おじいちゃんが指さした先には、どす黒い雲が当たり一面広がっており、雲の終わりが見えなかった。
「これは、やばいわね」
「何もなければ、いいね」
僕の願いも空しく、雨はどんどん本降りに近づき、たまに、雷が聞こえてきた。
「お嬢ちゃんたち、そこの広場でやり過ごすことにするぞぉ」
雨音が五月蠅く、声が聞こえにくい。
声が聞こえたと同時に、後ろを塞いでいた布が緩み、雨が馬車内に振り込んできた。
「つ、つめたいわね」
「外にでて、むすんでくれるかいのぉ」
「わかりました。
ちょっと、結んでくるよ」
「気をつけてね」
僕は、リイナにいいところを見せるため、おじいちゃんの御者台から外にでた。
さむい、僕はすぐに後悔した。
視界は最低。
雨は、30cm先も見えないほどで、バケツをひっくり返すとは、
このことだった。
頭の先から、靴まですべてびしょ濡れになりながら、馬車の後ろに回ると、
外れている紐が、空中を泳いでいた。
雨で滑りながらも、ようやく掴み、馬車の紐を結び終わるのに、
結構な時間がかかった。
これは、風邪でも引くかなと思ったら、おじいちゃんの声が怒声が聞こえてきた。
「あ、あぶないのじゃぁ、
早く、馬車にはいりんしゃい!!!」
僕は、慌てて、何事かと御者台の方を見ると、目に見えて判る300メートル級のハリケーンがこちらに向かって進んできている。目と鼻の先にある、樹々をなぎ倒し、空中に巻き上げていった。
「ヒビキ、早くもどって!!」
リイナの叫び声も聞こえ始め、僕は、急いで戻ろうとしたが、
既に足は、地面についていなかった。
僕の体は、馬車についていた紐一本でかろうじて、飛ばないように耐えていた。
そんな小さな抵抗も、雨で滑る紐では約にたたず、すぐに嵐の中に、ひきずりこまれていった。




