第192話 ジャイアントサーペントを一撃のもと討伐しよう
一時ほど過ぎるとばたばたしていた甲板も静かになった。
リイナと顔を見合わせると僕らは、甲板に向かうことにした、
甲板では、船員の半分は、腰かけ、休憩にはいっていた。
一段落したんろう。
「まだ、そんなに離れてないね」
「そうね、まだ、聖都がよく見えてるわ。おばさんが働いてるのも見えるわ」
「お嬢ちゃんがた、日が暮れて夜遅くには、
町に到着できるよ。それまで、自由にしてていいぞ。
ただ、船員たちの邪魔はすんなよ」
「「はい」」
僕らは、船長の言葉をきいて、再度、あたりを見回して見る。
ほとんどの船員は休憩しているが、一部は、マストの上では、船員が見張りをしており、
船のまわりには、何人ものマーマンが警護をしている。
マイミさんの旦那さんも、後方で警護をしていた。軽く手を振ると、同じようにこちらに手を振ってくれている。
遠くの方で、巨大な生物が見える。
「あのでっかい生物は、モンスター?」
「そうね、あんなのが襲ってきたら、船なんか、一撃で壊れちゃうわね」
しばらく眺めていると、だんだんシルエットが大きくなってきている気がする。
「ねぇ、さっきより、大きくなってない?」
「たしかにね、でもマーマンもいるし、大丈夫でしょ」
船の周りのマーマンをみていると、気づいていないのか、様子に変化はない。
だが、マストの上にいる見張りが、船長に注意を呼び掛けている。
「ちょっと、ぷりぴりし始めたね」
「何もないといいわね」
残念ながら、僕の希望とは裏腹に、巨大な魔物は、どんどんこちらに近づいてくる。
もしかしてだが、今の海原で、あたりを見回しても、この船しかいないのが、災いしているのか。
船の下にいたマーマンたちも、自体を察しはじめピリピリしている。
「きょ、巨大すぎる」
まわりでは、節々に船員たちの悲鳴と、船長の怒声が聞こえ始めた。
「もう、だめだ。マーマンたちでは、あのジャイアントシーペントに勝てるわけがない」
「みろよ、マーマンたちも逃げ始めてる」
僕は、船の周りをみると、数人のマーマンは、既に船からはずれ、全力で聖都にむけて移動している。
「船長、僕たちも戦うよ」
「悪いが魔法が使ええたら、攻撃してくれ」
「ヒビキ、見てなさい、新しく覚えた海上限定魔法で、一撃よ」
リイナは、本を取り出すと、ページをめくり、真ん中まで開くと、目をつむり集中し始めた。
僕も魔法を唱えるため、魔王の杖をとりだそうと、魔法のバックに手を入れる。
「海上流渦空天! 」
彼女が魔法を唱えると、海面がサーペントを中心に渦上に巻きあがっていく、30メートルの頭しか見えなかったが、徐々に上空に連れていかれる。400メートルぐらいの上空まで上がっても、まだ、サーペントの体は海面に隠れている。
「――極雷曇天激!! 」
続けて魔法を放つと、上空で、サーペントの頭を囲むように膜が現れ、上空には黒雲ができあがり無数の稲光が、サーペントに向かって放たれている。
数度の雷がサーペントに当たると、光の粒子に変わり、サーペントは消えていった。
上空にまで、舞い上がった海水が海上に落ちると、高波が船を襲った。
僕は、鞄から杖を取り出そうとしていた手を、手すりにつかみなおすと、
魔王の杖は、海底に落ちていった。
あたりは、生き残ることができた船員たちの絶賛の声が彼女に届いている。
船のしたでも、マーマンたちが、魔法のすばらしさを褒め讃えている。
僕は、胴上げされている彼女を眺めることしかできなかった。
今度は助ける側になるのだと、心に決めた。




