第186話 ジーンを連れて逃げてみよう
まだ、お怒り気味のリイナは、後ろを確認もせず、前に進んでいる。
嬉しそうに僕と腕を組んでいるユキナとは対照的だ。
ふと、リイナが止まると、皮の手袋を発見したようだ。
「これをもらうわ」
「あいよ。お姉ちゃん、それは、ダンジョン産の名品だよ」
僕が近づいてみると、どくどくしい雰囲気を醸し出している防具にみえる。
「やめときなよ、それ。それ呪われてるでしょ、絶対」
「そんなことないわよ」
そういうと、怒りながら手袋をはめた
「てへ、のろわれちゃった」
「「やっぱり」」
何度も繰り返される光景に、僕とユキナは、相変わらずの光景で呆れている。
彼女は、鑑定をとなえ、何のスキルが付いてるか確認している。
同じタイミングで解呪を唱えているが、成功しなかったのか、顔が曇っている。
「どうやら、空腹度アップみたいね」
「とりあえず、命に別状がないなら、よかったよ」
僕は、安堵し、肩の力をぬいた。
「さぁ、ご飯にしましょう。買い物は、後ね」
どうやら、影響は、早いみたいだ。
早いタイミングで、呪いを解かないと、僕と彼女は太ってしまうだろう。
それは、いいか。
「りっちゃん、じゃ、麺料理しようよ、この先にあったよね」
「そうね、ジーンにあげちゃったし、ヒビキも食べてないでしょ」
「うん、やったね!!」
そういえば、僕は一口も、食べれてなかった。久しぶりに食べ物で喜んだ気がする。
道なりに少し進むと、行列が見えてきた。
僕らも直に同じように並ぶが、なかなか前に進まない、
僕は、少しずれて、店の先頭を眺めてみる。
先頭では、買い物客が店の店員ともめているのが原因だった。
話を聴くと、全ての麺料理を買おうとしているようだ。
僕らは、慌てて止めにいった。
「ジーン、流石に、買占めはまずいよ。
後ろで買いたい人もいるんだから」
そう、もめていたのは、さっき別れたジーンだった。
「あら、ヒビキ。旅の途中、麺料理で進みたいのですわ。
今、買えるだけ買うのは自然の摂理ですわ。
他の方は、次の日にでも買えばいいんですわ」
相変わらずのマイペースだ、後ろからの視線が、僕には耐えれない。
このままでは、埒が明かないと思った僕は、
ジーンを抱きかかえると、その場を逃げさった。
「リイナ、ユキナ、4人分買っといて」
「あとで、合流するわ」
「離しなさいですわ。
わたくしの~、わたくしの~」
肩の上で、大絶叫、大号泣するエルフを連れて、
僕は、バザーを駆け抜けた。
捕まらないといいなと切に思った。




