第185話 ユキナに借金をしてみよう
「そういえば、皮手袋してないね」
「あれは、ジーンに上げたわ。
あなたが、倒れるたときに、ジーンの弓の話が出て、
20本練成できるか、対決でわたしが勝ったのよ」
「へぇ、ジーンはできないかったの?」
「ジーンは10本までだったみたい。
きっと、幸運の指輪のおかげね、成功率が上がったんだと思うわ。
そのついでに呪いも解けたのよ。
で、わたしのは、不要だったから、飲んでる時にあげたってわけ」
「ジーンさんは、これで、最終奥義が使えるっていってたよ。
あれ以上の技なんか、使うところがあるのかな」
「たしかにね」
魔王にすら、風穴を開けるような技のそれ以上なんて…
ちょっと見てみたいかもしれない。
「じゃ、防具屋に行くわよ。ヒビキ」
「バザーで怪しい物じゃなくて、いいの?」
僕は意地悪にいってみた。
「当然、バザーで掘り出し物をみてからに決まってるじゃない」
「りっちゃんは、ほんと、掘り出し物がすきだよね」
「掘り出し物はロマンだからよ。店売りの安全なものには、
何の価値もないわ。前進あるのみよ」
彼女は、先陣をきって町の中央に向かう。
是非安全を確認してから、前に進んでもらいたい、特に装備は。
僕とユキナは、お構いなしに歩くすぐ後ろを冷やかな目をしながら歩いた。
「ヒビキさんは、すぅちゃんのように、鉄系のアーマーの装備は、
しないんですか?」
「ヒビキは、体力ないんだから、皮系の鎧か、
私みたいに、布系の軽いのにしなさい」
「わかってるよ、どうせ、貧弱ですよ」
いずれは、ミスリルのように軽くて、頑丈な装備にしてみたいけど、
今は、お金がないから無理そうだ。
目の前に露天に、ミスリルの小手が、大銀貨一枚で売られていた。
僕が小手を一つ手にとると、露天の店主が、
「それは、お買い得だよ、ミスリルがそんな値段では、変えないからね」
僕が、鑑定の魔法をとなえると、確かに、金貨10枚と出てきた。
「ヒビキ、やめときなさい」
「そうだよ、ヒビキさん」
「「片方しかないじゃない」」
たしかに、右手しかない。
「どう、おにいちゃん、今なら、半額でいいよ。」
「うん、買うよ、リイナ、お金かして」
「いやよ、もっとちゃんとしたものを買うならまだしも」
嫌なものを見るように、顔がしぶくなっている。
「ヒビキさん、それがいいの?」
ユキナの表情も、少ししぶい感じがするが、まだ、好意的だ。
「うん、これなら、下手な盾よりも硬いんでしょ?
「そうだよ、お兄ちゃん。よくわかってるね」
「うそよ、そんな薄いので守ったら、直ぐに壊れるわ。
勝てるのは、皮や鉄の盾とか、ぐらいでしょ。」
彼女は店主にかみつき、店主はたじたじになっている。
「鋼や、それ以上と比べでも、目的が違うんだしね、ねぇ。
どうだい、大銀貨2枚でいいよ」
「そうだよ、鋼の盾なんか重すぎて、もって歩けるわけないだろう。」
僕は、リイナに詰め寄るが、彼女は、こちらを見てくれない。
「はい、おばちゃん」
ユキナは、店主に2枚はらい、僕に小手を手渡した。
「ヒビキさん、あげるよ、大事につかうんだよ」
流石に、自分より年下にものをもらうわけには、男のプライドが、
「これをただで、もらえないよ」
「ヒビキさんは、旅にでるんだから、その餞別…」
と言いかけると、リイナの方を向き意地悪そうな顔つきに変わった。
「じゃ、借金ということで。ほかにも、買うのに必要だよね。
ヒビキさんは、私のいうことも、聴かないといけないんだよ。
これで、りっちゃんと一緒だね」
彼女は、バックからの八枚の大銀貨を取り出すと、僕に手渡した。
「あ、ありがとう」
僕は、受け取るとお礼を述べるしかなかった。
「え! なんでヒビキは受け取るのよ、お金ならわたしが貸したのに」
悔しそうにいうと、ユキナの方を睨みつける。
貸さなかったじゃないか、リイナは。
これで、金貨2枚の借金になってしまった。




