第18話 この世で一番うまいシチューを食べてみよう
「ごはん、できたよ~」
アンリさんが、明るい口調で呼びかけた。
となりで、カミュの鳴き声も聞こえる
たぶん、カミュのご飯もあるんだな。
「昨日の夜は、大目にポトフを作ったから。
残りをシチューにしてみたの。」
テーブルの上には、
僕とアンリさんの分のシチューが
大皿に乗って準備されてた。
カミュには、お肉が皿に入って、暖炉の前に置かれていた。
「カミュも食べていいわよ」
「わん」
元気な鳴き声と共に、勢いよく食べ始めた。
アンリさんが、
水差しとグラスを持って
台所から戻ってきた。
対面の椅子に座ったところで、
一緒にいただくことにする。
「「いただきます」」
僕は、一口食べたところで、
あまりのおいしさに、夢中になってしまい、
シチューの皿しか見えなかった。
「ふふふ、おかわりあるから、
まだ、ほしかったら、ゆってね」
気付いたら、一気に、半分くらい食べてた。
きっと、すぐになくなる魔法がかけられてる、そうに違いない。
〈お願いだから、もっと、上品にたべて〉
泣きそうな声をだしながら、リイナが言っていたが、
無視をし、また、がっついた。
アンリさんが作ったシチューは、
今まで、食べた物の中で断トツに一番おいしかった。
あわてて食べようとしたせいか、
ニンジンをテーブルの下に落としてしまった。
「ごめんなさい」
「いいわ、後で片づけるから、まずは、シチューを食べて」
床に落ちてしまったニンジンを、目でおいかけると、
カエルがニンジンを食べはじめていた。
「アンリさん、カエルはニンジンを食べるものでしょうか?」
「あのカエルは、変わってるわね。昨日は、カミュのごはんのお肉食べてたし。」
あれをカエルと思っちゃダメなんだな。
皿に残っていた最後のお肉を食べ終えた。
「おかわりください!」
「は~い」
「元気のいい妹を持ったみたいで、私も嬉しいわ。
もっと、おかわりしてね、まだあるから。」
そういって、アンリさんは、皿をもって台所に走って行った。
〈ちょっと、もう少し遠慮しなさいよ、
わたしが、がさつな元気っ子に思われちゃうじゃない〉
さっきは、悲しげで、今度は怒り気味か、
情緒が不安定だな。
お腹にものが入ったことで、心に余裕が生まれたのか、
分析をおこなってしまった。
意見を無視し、注いでくれた新しいシチューを
食べ始めた。




