第176話 報酬をはらってみよう
「うん、わかってる、よろしくね」
スズネは、軽い感じで返答してる。
「いいの?」
「いいよ、おにぃ、誰かのためになるなら、
それもいいかなって」
「ありがとうございます。
既に、村人から危険なモンスターの報告があります。
ワイバーンとか」
「ワイバーンは、もう倒したよー」
勇者は大司教にひきずられ、奥のドアに連れていかれた。
どうやら、気心が変わる前に、話を進める気なんだと思う。
「この続きは、奥で行います。
あと、ユキナは、学校で再度勉強すること、
他のみんなが心配してましたよ、勝手に抜けるんですから。
他の方々は、ご協力ありがとうございました。
後は、ご自由に。
くれぐれも、魔王復活の話は、なされないように。
話した場合は、敵対することになりますからね」
顔は笑っているが、
目の奥は、笑っていなかった。
大司教は、勇者をひきつれて、奥に消え去った。
「なんか、嵐のように過ぎ去ったね。」
「そ、そうね。
なるようになるでしょ。
ところで」
そういうとリイナは、おもむろに
ローブを脱ぎ始めた。
「ど、どうしたの」
僕の発言を気にも留めず、
ローブをきれいに畳むと、その上に指輪と杖をおいて、
ジーンに手渡した。
「いままで、ありがとう。
約束通り、報酬として、返すわ。」
「返してくださって、ありがとうですわ」
彼女も、丁寧にうけとると、カバンの中にしまった。
「そっか、約束だったもんね。」
「昨日返してもよかったんだけど、
ヒビキが起きてる時のほうがよいかなと思って」
ローブを脱いだリイナは、下着の上に質素な服をきているだけだ。
僕はこれまで、考えていたことを話始めた。
「考えてたんだけど・・・・
リイナ金貨1枚貸してくれない。」
「別にいいわよ、何に使うの?」
リイナの問いかけを無視し、話を進めた。
「ジーン、お願いがあるんだ、
金貨一枚で、そのローブを貸してほしいんだ」
「別に、ヒビキになら、いいですわよ、
いつまでですの?」
「ぼくじゃなくて、彼女なんだ。彼女が亡くなるまで、貸してほしいんだ。」
「彼女?ヒビキじゃないの?」
リイナが聞き返した。
「そう、彼女。
僕らの命の恩人にさ」
僕は、そういうと二人にウインクをした。




