第155話 ジーンの弓の腕をみてみよう
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ダンジョン前は、昨日よりも、混雑していた。
昨日の到着が昼過ぎだったこともあって、
比較的すいてたんだろう。
列をみると、昨日の倍は、並んでいる。
ということは、一日中列が無くなることはないんだろう。
「結構、待ちそうだね」
「そうですわね」
「2年前よりも、少し多い気がするよ」
そんなたわいもない話を繰り返しながら、
周りの様子を伺ってみる。
流石にダンジョンに行って直ぐに帰ってきたりする人は
少ないなぁと思って観察すると、
時たま、怪我をして、帰ってくるパーティを見かけた。
さっき入ってった人が、すぐ戻ってくると、
行列で待っているパーティから、冷やかされている。
踏んだり、蹴ったりだな。
ってことは、昨日はあんなだったのかな。
「昨日もあんな感じだったの?」
「そうだね、あんな感だったよ」
ユキナさんの顔が少し、顔が引きつってるのをみると、
あれより酷かったんだと思う。
他のパーティは、必ず前衛職がいるのに、
こっちは、一人もいないし、
バランス的によくないよね。
ようやく、自分たちの番が回ってきた。
「では、行くよ。しがみついてね。
帰還」
ユキナさんが、魔法を唱えると、
僕のまわりに光り輝き同時に、
視界がゆがんでいった。
昨日はなんとなく、わかった感じでいたが、
いざ、実際に移動すると、胸やけがするような、
違和感があった。
そんな感じも、数秒のうちに終わり、昨日と同じ小部屋についた。
〈なんか、気持ち悪くなるもんなんだね、リイナ〉
〈そうね、初めはそんなものよ、直ぐに慣れると思うわ〉
〈あと、魔王のいる場所は、階段をおりた先だから、
直ぐに到着できると思うわ〉
ドアの前では、真っ先にジーンが、
開けた先の状況を確認している。
「どう?ジーンさん」
「デーモン系が3体おりますわ。
グレータ1、レッサー2だと思いますわ」
「あぁ、そんな感じですね」
僕も二人の後ろから覗き込み、
ヤギ顔の高さ2mとそれより、体まわりが一まわり大きな
モンスターが一体。
その一体だけ、体の色の深緑が濃くなっている。
ただ、あれが何なのか僕にはまったくわからない。
「あれを倒さないと、階段に向かえないね。
こっから、一体ずつ倒すことできるの?」
「できるよ。向こうからの攻撃は食らわないので、倒す
よくある戦法だよ。ただ、混雑してるときにやってると、
他のパーティに怒られるよ。
今は、私たちだけだから、問題ないよ!〉
「わかりましたですわ。
わたくしは、奥のグレーターデーモン目がけて射抜きますので、
同一タイミングで、魔法を撃ってくださいですわ。
まずは、頭となりそうなグレーターを倒すことにしますわ」
「了解。
合図は、ユキナさんがドアをあけた時にしよう。
よろしく。」
「はい、おまかせだよ」
僕は、昨日のリイナが放った火の玉が
まっすぐ進むようにイメージし始めた。
隣では、5本の矢を屋筒から抜くと
胸の前で、一本の矢に練成していた。
出来上がった矢は、長さが2メートルぐらいあり、太さが親指よりも太かった。
ジーンは、地面にやじりを置き、徐々に弦をゆっくりと引いていった。
半分を過ぎたあたりから、きりきりと弦から嫌な音がし始め、
弓からもみしみしといった音が聞こえてくる。
気に留めることなく、さらに絞って行き、
狙いを定めていく。
「肘くらいまで、引いたら、ドアを開けてほしいですわ」
「わかったよ」
事のありさまをみていたユキナさんは、
緊張しているようで、息をのんでいる。
奇怪な音は、徐々に大きくなっていき、
引いている矢も、8割以上となったとき、
ドアが開いた。
一気に最大まで腕を伸ばし切り、狙いを定めて、解き放った。
「赤い稲妻矢!」
呟きと共に放たれた矢は、
一瞬で、グレーターデーモンの頭に向かっていき、
矢に当たった衝撃で爆散していた。
近くにいたレッサーデーモンにグレーターデーモンの血が飛び散っていた。
矢は、どこまでも飛んでいき、直ぐに見えなくなった。
僕は、放った矢から、かなり遅れて、
頭のなくなった体めがけて、火玉を撃った。




