第153話 事前に前方は確認しよう
半時ほどゆっくりと前に進むと、リイナ達の番となった。
3人は、手をむすぶと、リイナは呪文を唱えた。
「帰還」
三人が光り輝くと同時に、
視界がゆがんでいき、
ゆがみが終わったときには、
6畳くらいの小さな部屋にいた。
〈ぼくも一緒に移動するんだね〉
〈まったく考えてなかったわ。
一緒にこれてよかったわね〉
あやうく、おいて行かれるところだった。
そんな会話をしている後ろで、
「これかしら」
とドアを開けた。
「急にあけちゃだめ、ジーンさん」
ユキナの大声が部屋の中に広がった。
リイナとユキナさん急いで、ドアに近寄っていくと、
目の前には、5メートルはありそうな巨体のミノタウルスが立っていた。
緑色に輝く鎧をきたミノタウルスは、3メートルほどの斧をもっており、、
今、まさに、ジーンの頭めがけて、振りぬかれようとしていた。
〈あぶない!〉
ぼくは、あわてて大きな声をかけたが、
リイナ以外には、聞こえない。
ジーンは、状況が理解できず固まっており、身動きできずにいた。
ジーンの背中を押そうとした、ユキナさんは、あと一歩届かなかった。
だが、同時に駈け出したリイナは、
ユキナさんより、一歩前に、でていた。
リイナは、飛びついてジーンの背中を押した。
脳天に振り下ろされるはずだった斧を、回避することができた。
だが、無残にも、その斧は、つきとばしたリイナの背中に振り下ろされていた。
あたりには、ユキナさんの悲鳴がこだました。
一瞬で、現状にひき戻ったユキナさんは、
呪文を唱えた。
〈領域回復〉
呪文を唱えている最中に
リイナは、立ち上がり、
〈火玉〉
をとなえた。
リイナの体よりも大きな火の玉ができあがり、
ミノタウロスに向かって進んでいく。
ミノタウルスは、火の玉に気付き、必死に避けたが、
あまりの大きさのため、避けきれず、体半分を焼かれた
火玉は、ダンジョンの奥まで進んでいった。
一瞬で、ミノタウルスは、魔玉へと姿を変えた。
「あー、痛かった」
何事もないように、ユキナさんの前に振り返った。
辺りには、ユキナさんが唱えた回復の効果が発動する手前で、
回復の光の粒子が消えてなくなると、
同じタイミングで、リイナは、地面に崩れ落ちた。
「ど、どうしたの、りっちゃん」
ユキナは、再度呪文を唱えた。
リイナが光り輝くと、
その場に、盛大な血反吐をはき、
身動きがとれなくなった。
「駄目ですわ、
呪いの影響で、回復がダメージになるのですよ」
あわてて、止めにきたジーンの前に、
再度の
〈大回復〉
が唱えられ、僕らは、意識を失った。




