第145話 自分の体をみてみよう
フロアにあがると、いくつか小部屋が分かれており、
真ん中の部屋に通された。
高級そうな調度品や棚がおかれたおり、
その奥の大きなベッドで、僕が横たわっていた。
僕は直ぐさま体に、駆け寄ったが、
近づくことはできなかった。
何かに遮られているからだ。
膜が張られているようだが、
その膜を見ることは、できない。
だが、リイナやジーンは、僕の横を通り過ぎ、
僕の体に近づいていく。膜の影響はない。
〈寝ているようね〉
〈寝ているように見えるね、
っていうか、何か膜みたいなものがあって、
近づけないんだよ〉
〈そうなの?わたしは、近づけるのに。
何ででしょうね。そのせいで、自分の体に戻れないかもしれないわね〉
そうかも、しれない。
きっと、そのせいだ、それでいいや。
誰がっていうと、魔王のせいなのかな。きっと、そうだ。
びえぇぇん。
取り乱している僕は、
自分の体を少し離れたところから、指をくわえて、眺めている。
「ありがとうございます。
本人も自分の体をみれて、満足しています。
ですが、
残念ながら、近づけないようです。
何か、理由はわかりますか?」
流石リイナだ、聴いてほしいことを尋ねてくれてる。
できる人って素敵。
むしろ、リイナ様って呼びたい。
「お答えしかねます」
老婆のセブンズオールが、
むげもなく返答した。
大司教は、もう一人のセブンズオールと小声で相談しているが、
追加の回答を聞くことはなかった。
リイナは、無表情のまま、
「わかりました。
では、私たちは、自宅にて待機しますので、
勇者様が来られましたら、
ご連絡ください。」
と返答し、
業務スマイルを3人に向けると
返答を待たずに、さっさと、部屋から出て行った。
もっと、聴いてもいいと思うよ、リイナ様~
僕は自分の体から、視線を動かしがたく、
リイナ達とは、どんどん離れていく。
部屋内では、3人の会話が始まった。
「どうしてですか、勇者様が魔法を唱えたことを伝えても
いいと思うのです。」
二人がいなくなったのを見計らって、
大司教様が、二人のセブンズオールに声をあらげた。
「伝えても、伝えなくても、どちらでも、
いいことでしょう。
だったら、伝えないに越したことはありません。」
老婆はぴしゃりと放った。
「勇者様のお考えは、
勇者様にしか、判らないのですよ。
うかつに、話を始めたら、後で、取り返しのつかないことになった時、顔を合わせられません。」
もう一人のセブンズオールも同等の意見を述べている。
「数日たてば、勇者様もお戻りになられますでしょうし、
その時でいいでしょう」
最後に老婆がしめたことで
「・・・・判りました」
大司教は説得を諦めたようだ。
腑に落ちないのか、顔には不服の色が見えたが、
二人は、特に気にしていないようだ。
そうか、やっぱり勇者が関連しているにしても、
話がすすむのは、数日か。
一日程って言ってたけど、話が少し違うな。
僕は、リイナの体から引っ張られるように、斜め下に
向かっていった。




