第144話 教会関係者の話を聞いてみよう
ユキナが教会に入ると、
いろいろな所で、ざわざわし始めた。
行方をくらませて、二年ぶりに戻って来たのだから、
当然だろう。
「ちょっと、行ってくるね」
ユキナさんは、軽くつぶやくと、こちらを見ずに、
建物の奥に入って行った。
奥では歓喜の声が聞こえていることから、
歓迎されているんだろう。
とりあえず、向こうは大丈夫そうだ。
リイナは、目の前のシスターから、数珠つなぎで、
順に偉い人を紹介してもらう作戦を実行中だ。
書状を開かずとも、封蝋をしたセブンズオールの蝋印は、
見せるだけで、直ぐに上の人を紹介してくれている。
今は、5人目だ。3階の高さまで来ている。
この上からは、待つ時間が多くなり、作戦の歩みが遅くなっている気がする。
4階まで、上がると、
3人の女性が現れ、大司教の執務室に案内された。
1人から、
2人のセブンズオールであることと、
ここを、取り締まる大司教様であると告げられた。
リイナは、書状を手渡すと、
三人は交互にその書状を読み始めた。
書状は、何枚もの便箋で書かれており、
一枚ごとに、読み終わると順繰りに手渡している。
三人は、顔色一つかえず、読み終わると、
三人そろって、大司教部屋の奥に戻った。
僕らは、ここで留まるように告げられた。
僕は、彼女らに続いて奥の部屋に入って行った。
「勇者様がおっしゃられたとおりになりましたわね」
一人の老婆が話し始めた。
「ここは、勇者様の言われたとおりに
した方がよろしいかと思います。」
もう一人のセブンズオールが語っている。
「それは、そうするとし、
体の件をどこまで、お話差し上げれば・・・」
大司教は、少し考えているようだ。
「いったんは、勇者様のお話どおりにして、
戻ってきてからで考えるとしましょう。」
「そうですよ」
「しかし、オリビア様の書状には、
先に提示するように、何度も・・・」
どうやら、書状と勇者との指示で、差があるようだ。
「体を先に話しては、いけないと
名言されておりませんし・・・」
大司教は、オリビア様寄りな感じがする。
「ですが、行動はさせるなと、いわれておりますでしょう」
「あの方たちが体をみたら、勝手に動くかもしれません。」
どうやら、しばらくは、話し合いは続きそうだ。
〈どう、ヒビキ、会話の内容は?〉
〈やっぱり、体はこの3人が知っているみたい。
ただし、教えるかは、まだ決めてないようだ。
勇者からの依頼をした後にするかで、
揉めているようだよ〉
僕は、軽く話を整理した。
もめ事が嫌になった僕は、いったんリイナのところに戻った。
一刻ほどたつと、3人は出てきた。
「リイナ様とヒビキ様、とジーン様、
一日ほどで、勇者様がお戻りになられますので、
一緒に魔王のダンジョンにいってほしい
との言伝を預かっております。」
うやうやしく、大司教様は、こちらに伝えてきた。
「判りました。
ヒビキの体は、ここにありますか?
なにか、知りませんか?」
「ヒビキ様のお体は、
当方で、介護させていただいております。
場所については、
この上のフロアとなり、
専属のシスターたちが、行っております。」
「見ることはできますか?」
「どうぞ」
そういうと、僕らは、上のフロアに連れていかれた。




