第109話 街道を逆走してみよう
さっきよりも好意が感じられる、表情から簡単に読み取れた。
嬉しそうに、一個一個バックにしまってる。
急に一個、箱をあけてみると、
こちらに投げつけてきた。
「空箱じゃないですの!だましましたわね!!」
どうやら、さっき食べた箱も
半分にしたときにわけたみたいだ。
「ごめん。わざとじゃないだんよ。」
だが、怒っているのか、しまうのに夢中なのか、
こちらを向いてくれない。
入っている箱を一つ手に取り、
「こっちは、はいってるから、どうぞ」
と差し出すと、
笑顔をしながら、こちらを振り返った。
〈ヒビキ、甘やかしすぎだわ〉
リイナがあきれ顔でみているが、
〈弁当は、余ってるし、
もともと、二人分もらってるんだから、
いいじゃない。
本人も喜んでるし〉
リイナはしぶしぶ納得してるようだから、僕も納得することにした。
全ての箱をわけて
バックにしまったところで、
出発することにした。
だが
彼女の足取りは重かった。
単純に食べすぎなんだろう、
彼女のペースに合わせて、
進むことにした。
彼女は、至極当然と思ってるようで、
感謝の言葉はなかったが、
気を使ってることはわかってるようで、
途中での会話の
受け答えは少し柔らかくなった気がする。
これから、向かう、
聖都 エイトビに行く間に、
漁村 グナロルスがあり、
途中の街道で一泊すれば、徒歩で一日ぐらいで到着できるみたいだ。
荷馬車や乗合馬車であれば、一日かからずにつく運行だそうで、
僕らがすれ違うのは、お昼をすぎたころだった。
一回すれ違い始めたら、続々とすれ違った。
この辺の情報を、
ミカンちゃんに教えてもらっていて、
改めて、ありがたかったなと振り返った。
僕らは、荷馬車や乗合馬車の邪魔にならないように、
すれ違うまで、街道の脇でまっていた。
海側は、砂浜が広がっているときもあったので、
そっちで待つこともあった。
砂浜を歩き進まないのは、歩きづらいし、照り返しがとても、きついからだ。
ジーンは砂浜でまつのを、嫌がって、森の方でまっていたが、
僕は、いろんな体験ができてちょっとうれしかった。
夕日が綺麗だなと思う頃には、
すれ違うことはなくなり、
日が暮れるころには、
目的地のグナロルスが遠方に見えてきた。
徒歩でも、半日はかかると目算ができる。
強行するか、野宿か悩みどころだ。
「ジーン、強行か、野宿か、どっちがいいんだろう?」
「当然、強行ですわ。野宿などしようものなら、何があるか判らないですわ。」
といって、広場を見つけると、野営の準備を始めた。
「へ?進むんじゃないの?」
「一般論は、そうかもしれませんが、
やるとは、いってませんわ。
それに、わたくしたちには、魔法の布があるんですわ。
ふつうとは違いますわ。」
だったら、初めからそう言ってくれればいいのに。
と思いながらも
「そうだね、ぼくも使ってみたいや」
と同意した。
〈ヒビキが最初に使うことになるとは、残念。〉
〈目が覚めれば、はいってはいるよ、にひひ〉
悔しそうに話すリイナを後目に、僕は得意げに語った。




