第八章『旅の始まり』
何でこんな事になってるんだろうな…。俺なんか悪いことしたか?いや、してねぇ。
取り敢えず今日一日を思い出してみようか。
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「燕、結局あの後昨日何処行ってたのよ」
茜が本日…いや、昨日帰ってきてから何度目か分からない質問を投げかけてくる。
「だ~か~ら~!その辺ブラブラしてただけだっての!」
「嘘。そんな理由であんなに急ぐわけないじゃん」
はぁ~…超面倒くさい。何で言わなきゃいかんのだよ。ってか、言いたくねぇ。私服で学校行ったとか。空先輩に会いに急いだとか言いたくねぇ。絶対に弄られる。うん。だからここはしらを切り通す。
「まぁいいじゃねーかよ。どーでも」
「知りたいじゃん~!」
まだ食い下がるかこいつは…っ!…はぁ~。このネタはあんまり使いたくないんだけどな。ちょっと面倒臭くなるけど…でもまぁ、このことは忘れるだろう。
「そんなに知りたいなら教えてやるよ。俺は近くのコンビニでエロ本買いに行ってたんだよ」
「え…えぇぇえぇええぇっっ!?!?!?」
茜がものっ凄い音量で驚きの声を上げる。
先に言っとくけど、そんなもの買ったことも見たこともねぇ。
まぁ、昔から茜は下ネタは苦手。だからこれは話をはぐらかす必殺技だ。
「燕ぇ~っ!ちょっとここに座りなさい!」
ただし…小一時間説教される……引きつった怒マークのついた笑顔で。
必殺技だが、諸刃の剣ってわけだ。まぁ…しばらくしたらこいつ何で怒ってたか忘れるがな。
「あれ?で、何の話だっけ…?」
な?忘れただろ?ふぅ…これで何とか乗り切ったぜ。ホント面倒くさい…。
「ってか、そろそろ行こうぜ。時間無くなるぞ」
「え…?…あ~っ!ホントだ!せっかくの日曜日が~…」
その後俺たちはショッピング(2倍速)をして家に帰った。ってか、茜って勉強できるのにこういう時何故かアホだ。
そういえば明日からはまた学校だ。なんか入学式から物凄く時間が経ったように感じる…。はぁ~…休みのせいかな?
そんな事を思いながら俺は寝床に入り、睡魔に身を委ねた。
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「…………で、何でこうなるんだ?」
で、冒頭だ。俺の前には、またあの森の風景が広がっている。何でだよ。
服装も何故かしっかり制服を着ている。
「前も言ったじゃろう?我が呼んだ…」「そういうことを言ってるんじゃねぇ!何で俺がまた呼ばれたんだよ!」
心当たりまったくねぇ!ってか、もう巻き込むなこん畜生。
もう説明するまでも無くさっきの声の主は、あの頭がイかれたド変態大樹『長老』だ。隣には当たり前のように雨宮。雨宮はまたしても制服。制服姿以外って見たことないんじゃないか…?……裸以外は。
あぁ!もう思い出すな!俺!煩悩退散!
「お主。聞くところによれば発作が起きなかったようじゃないか」
「うん。まぁそうだな」
長老は俺の思いを無視するように、話し始めた。
が、確かに雨宮はあれだけ『絶対起こる』と断言してたのにならなかったな。
「この場合考えられることは1つなんじゃよ」
「1つ?答えが解ってるってことか。その答えってのは?」
「お前はとうの昔に発作を起こしてるということじゃ。つまり前回来たのが初めてではなかったということじゃな」
……はい?つまり俺は昔ここに来たことがあるってことか?
「んなアホな。こんな不思議森林パークなんて来たことないっての」
「この世界は全てが森林というわけではない。街などの場所も結構あるのじゃよ」
にしてもなぁ…異世界に来るなんてアホなこと…そんなそうそう無いってか、異世界何ておかしいしね?というか…
「それと俺が呼ばれたのに何の関係があるんだ」
「はぁ~っ。ほんっとに鈍いな少年。頭は使った方が良いぞ?」
「うるさいわっ!」
余計な御世話だっての!これでも学力は中間より少し上だっての!…自慢になるかは知らん!
「まぁ、ぶっちゃけると少年にさっさとこの世界を救ってもらおうと思ってな」
「軽っ!この世界をさっさと救うって!この世界で起きてることってそんな軽いことなの!?」
「軽いわけないじゃろっ!今だって結構瀬戸際なんじゃぞ?」
知らねぇよ~!?だって俺には全然実感ねぇもん!どうヤバいかもわかんねぇよ。
「で、じゃあその瀬戸際の状況で俺は何をすれば良いんだよ」
「少年にはそこの雨宮と一緒に旅をして、この世界を救ってもらう。何か問題あるか?」
…………絶対言うと思った。色々問題あるわ。
「まず、学校どうするんだよ。明日から学校だ」
俺は一応何処にでもいる普通の高校生(仮)なんだ。
…異世界に行こうが誰が何と言おうが、俺は普通の高校生!これは譲れない。
普通の高校生にとっては、どこか知らない世界の平和よりも、学校の出席の方が大事だ。
「その点は平気じゃ。この世界とお主らの世界では今、時間差が発生していてな?こっちで一日経ってもあっちではほとんど時は進んでないんじゃよ」
なるほど…一つ問題解決しちまったよ。
「ってか俺は力なんて何もないが大丈夫なのかよ」
旅するってことは、あの屋上の時みたいな目に何回か遭うんだよな?
普通に死ぬよな。あの状況からすれば、今の俺はスぺ●ンカー並に弱いぞ?
「そこは大丈夫じゃ。なんてったってお主は救世主なのじゃから」
なんだその理由は~っ!!説得力ねぇっての!現に力なんて何もないっての!
「まあ、このままじゃお主どっち道元の世界に帰れないから。頑張れよ」
…………泣きてぇ。もう帰るには旅するしかないってことかよ…。はぁ…。
「まず、この森を抜けた場所にある街『ニブルヒルズ』を訪れろ。そこに居る預言者に会いに行って来い」
…拝啓。命の恩人のお姉さん。何か大冒険が始まるみたいです。
ついに、異世界編です。
外伝投稿が先かと思ったんですが、まぁ外伝はまたの機会にすることにしました。
それにしても燕君…普通の学園生活が遠のいていくね。
作者も何だか同情してしまう…。
燕「同情するなら日常をくれ!」
うん、それ無理☆