2面
ナレ「傲慢、憤怒、怠惰、色欲、強欲、暴食、嫉妬。人間を死に至らせる7つの罪として、見做されてきた欲望や感情を指す。
これらの大罪と比肩する悪魔は獣の半面を創り出し、銘銘罪の力を込めた。
集められた7名の人間は自らの顔を晒すことも名を明かすことも許されない。
力を得る。故に血を流す。
その戯れを悪魔は柒と喚ぶ。」
熊谷「柒。二の面、狩る兎と怯える熊」
01ベルフェ「…サタンが居なくなっちゃったかあ、…ってことは猿の面がやられちゃったのかなあ。」
ナレ『(説明するように)ベルフェゴール。女性の心に性的で不道徳な心を芽生えさせる力を持つ。女性に対して非常な不信感を持っている。』
02熊谷「猿って確か憤怒、だっけ。怒りっぽいんじゃ生き残れないでしょ。」
ナレ『(説明するように)怠惰、熊の面。29歳。関わることを諦めた男。』
03ベルフェ「んー、そうかもねえ。でももう奪い合いは始まっちゃったってことだから。熊の面も武器の出し方、忘れちゃわないようにねえ」
04熊谷「…うん。……あのさ、ベルフェゴール。」
05ベルフェ「なあに熊の面?」
06熊谷「君は暇つぶしって言ってたけど、どうして僕だったの」
07ベルフェ「誰でもいいわけじゃないんだよぉ。僕が君を選んだの。他の悪魔もみーんなそう。」
08熊谷「なんで僕を選んだの。怠惰の能力を与える奴なんていくらでもいるでしょ。」
09ベルフェ「熊の面ー、君は怠惰が面倒くさがりやさんのことを指してると思ってなあい?」
10熊谷「違うの?」
11ベルフェ「僕はねえ、君のことをずうっと見てたんだ。それが僕の趣味なの。君の気持ちはよおくわかったなぁ。人間、特に女は信用ならない、そうでしょお?」
12熊谷「…それが僕を選んだ理由?」
13ベルフェ「そうだよぉ、僕の怠惰は信用関心に対しての怠惰。男と女の関係に幸せなんてありはしないんだから。」
14熊谷「……そうだね。…行こう。」
15兎我野「で、誰を殺せばいいわけ?アスモデウス。」
ナレ『(説明するように)色欲、兎の面。17歳。信用出来ない奴は殺す女。』
16アスモ「がーはっはっは!殺さぬとも面を奪えばそれでいいんだがな?!兎の面は何とも気が早い!」
ナレ『(説明するように)アスモデウス。元天使。取り憑いて人間を殺すことが趣味だが、敬意を払い丁重に対応すれば好まれる。』
17兎我野「そういうんじゃないの。信用できない奴は殺す、ただそれだけの話。」
18アスモ「そうかそうか!!がーっはっはっは!それにしてはワシのことを殺そうとはせんのだな?!」
19兎我野「あんた悪魔なんでしょ?悪魔ってそもそも死ぬわけ?死なないのに殺そうとしても意味無いでしょ。無駄なことはしたくないだけ。」
20アスモ「がーっはっはっは!いやはや荒々しいと思いきや随分と冷めた娘よ!!しかし面白い!わしはお前の事を気に入っているぞ兎の面!がーっはっはっは!」
21兎我野「勝手に気にいられても。こんな馬鹿げたゲーム、さっさと終わらせてやる。面を全部奪ってね。」
22アスモ「良い顔だ兎の面!おお、アレをみよ、お前の獲物が見つかったようだな!」
23熊谷「……女性だ」
24ベルフェ「……ありゃ、よりによって兎の面か……一応一旦逃げちゃうっていう手もあるよ?熊の面」
25熊谷「……。」
26ベルフェ「どうする?」
27熊谷「……いや、大丈夫。こんな場所から一刻も早く戻って1人になりたいんだ…」
28ベルフェ「…ん、そう。」
29アスモ「おお!ベルフェゴールではないか!ふむ、ではこやつが怠惰だな。随分とひょろ長い男だが…大丈夫なのか?」
30ベルフェ「アスモデウス、心配いらないよ。えっと、その子が色欲の兎の面?」
31アスモ「その通りだ!こやつの名を……むぐう!!!いかんいかん!!ついつい口走ってしまうところだった!!」
32ベルフェ「言っちゃえばよかったのに。ね?」
32アスモ「そういうわけにはいかん!!真名は終わりを表す。こやつらの本当の名を口にしてしまった時点でその者と悪魔は失格だからな!!」
33兎我野「それで私を殺そうとしたのはどこのだれよアスモデウス。」
34アスモ「誤解だ兎の面!!わしはお前のことを気に入っているのだぞ!」
35兎我野「だから。そんなの頼んでもないし迷惑。………(熊谷に目線を向ける兎我野)」
36熊谷「……っ(息を呑む)」
37兎我野「あんた、辞めたら?このゲーム」
38熊谷「…君に、言われなくとも、今すぐ辞めたいよ」
39兎我野「はぁ(溜息)、やる気のないやつの相手してらんないんだけど。さっさとそれ、渡してくれる?あんたの存在意義はそれだけ。わかった?」
40熊谷「………」静かに豹変する
41ベルフェ「ああ、だから女は。それで身を滅ぼすことを知らないんだなあ。」
42アスモ「熊の面が全面に…いかん兎の面、一旦引け」
43熊谷「……熊の面アケディア・シン」
44アスモ「うおおお?!危ないではないか熊の面!!!急に鎌を出すでない!!」
(突如現れた鎌に刈られそうになって避ける)
45兎我野「身体から鎌が生えてアイツを守ろうとしてる…?……急に武器を出すなんて……どいつもこいつも信用ならない…っ…殺してやる。兎の面ルクスリア・シン!」
46ベルフェ「短刀かあ、リーチが違いすぎてお話になんないんじゃなあい?アスモデウス」
47「がーっはっはっは!さあてお楽しみだな!」
48兎我野「はぁあ!!…ふん!!…ふっ!!…たああっ!!……くそ、鎌が動いて邪魔をする…!!この武器…意思を持ってる…?」
動き回ってスキを突こうとする兎我野、それを熊谷の鎌が防ぐ
49熊谷「僕のこれが欲しいの?兎の面。」静かに語り出す
50兎我野「さっきからそう言ってるでしょ。さっさと渡して。渡さないなら殺して奪うまでだけど」
51熊谷「ふっ(少し笑う)」
52兎我野「何がおかしいわけ?」
53熊谷「いや。…君はどんな過去を抱えてるんだろうって思って。」
54兎我野「は…?いい加減ふざけてないで戦え!!!はあああ!!!ふん!!!はあっ!!!」
55熊谷「無駄だよ、君は僕に勝てない」
56兎我野「くそ…!!当たらない…!!なんなのこの鎌…!!?」息を荒く
57熊谷「君が僕に勝てない理由を教えてあげようか。兎の面」
58兎我野「ふーっ…ふーっ…」息を荒く
59熊谷「君は信用してないからだ。だれのことも。……僕のことも。」
60兎我野「……あ?……ぐはぁっ!!!」
鎌の先が兎我野の身体を貫く
61アスモ「おお!!!」少し楽しそうに
62ベルフェ「あーあ、やっちゃった」
63兎我野「ぐ……がは…っ……お…まえ…」
64熊谷「兎の面…どうして僕達は…この面を手に入れてしまったんだろうね…。」
65兎我野「な……に………」
兎我野が地面に倒れる。
66兎我野「ねえもう辞めなって!いじめなんてよくないよ!…この子も嫌がってんじゃん。あんたらこんな酷いことして何が楽しいの?!」
67兎我野「いや…!!辞めて…!!お願い辞めて…!!誰か…!!誰かああああ!!!誰か助けてお願いいいいいやあああ!!」
68兎我野「……私が助けを求めても……皆見て見ぬふりだった……私に……味方はいない………もう誰も……信用出来ない………」
69アスモ「いやはや参った参った!!こりゃワシの惨敗だな!がーっはっはっは!」
70ベルフェ「負けた割に楽しそうだけど。アスモデウス」
71アスモ「負けは負けだ!!仕方あるまい!!この手の人間は星の数ほどおるし、次を探しにいくとするか!それでは……兎我野よ、参るぞ」
アスモデウスと兎我野が消える
72ベルフェ「……お疲れ様、熊の面。兎の面がきっかけを作ってくれて良かったね。君は帰りたがっていたから残念、なのかな。」
兎の面を拾って重ねる熊谷
73熊谷「いや……、おかげで思い出したよ。僕が勝つ理由は愛ゆえの怠惰。信頼し、愛していたからこそ生まれた憎しみ。…僕に戻る場所は無い。」




