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鬼に日、昇る前に。  作者: 山狩楚歌
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プロローグ

僕は悩んでいた。

明日にしようか、明後日にしようか。


僕には上手く出来る自信が全く無かった。

タイミングはどうか。準備のミスは無いか。

勘ぐられてないか。体力は持つか。避難経路の確保。

島からの脱出経路。針の精度。毒薬の調合。


どれをとっても最終的な判断が出来ないまま。

どれをとっても僕はLOSER。どれをとっても僕を愛されたかった。


そして、ボンクラな僕は



桃太郎を殺した。



スカッとしたが、もう二度と自分を愛せなくなった。


忘れない様にこれまでの日記を償いとして村の掲示板に画鋲でピン止めし、野ざらしにした。

そして、荷物を処分するとやれやれと、この村から故郷への長い帰路に着く。


頭の中がぐるぐるしていた。


森は薄暗くとても口にしてしまいそうだったが、

「あ・・・あっ・・・」と言うと心が少し深呼吸した。。




出会いは2週間前突然現れた桃太郎。

空腹に耐えかねてキビ団子をもらった所からだった。


僕は村の公園でたむろしていた。

鬼が村にやってきては拡声器で大声を出してこの村の村長のゴシップや、

村役場の人間の名前が聞こえたと思ったら脱税額をくりかえし拡声器に叫ぶ。

ある日は通りがかった制服の学生をリンチし財布を巻き上げ本当に酷い始末だった。


そんな毎日が300回過ぎようとしていた頃、

自分の名前の段幕を背中に挿し、甲冑姿で陽気に歌う青年が1人歩いて居た。

頭には鉢巻をし、ズタ袋を腰にくくり、手編みの草鞋をはいて僕の前のベンチで腰を下ろした。。


スタ袋から凄くいい匂いがしたし、僕は鼻を効かせ食べ物の香りだと分かると目を合わせ、

身体を左右に揺らしながらコミュニュケーション出来ない中、女の子みたいに自分の存在をアピールし続けた。


こんな人が来ると信じていた。

この公園は動物のたまり場となってしまうため、

2年前から人間から動物への餌やり禁止と公園の周囲を覆い地面に突き刺さっていた。


それからと言うもの多様多種居る動物のコミュニケーションの場だったが、段々コミュニケーションを求めるやつも減った。

今や縄張りから追い出された動物や、怪我をしてしまった動物の小さなコミュニケーションの場となったり、

人間がダンボールを持ってきたかと思うと木の影にダンボールを置いていくだけなんだ。

それから1晩はダンボールから泣き止まない聞こえちゃいけない心が聞こえる。

日が登り始める頃にそーっと覗き込むと目の周りにを繊維をこびり付けさせて一生懸命寝ているんだ。


しかし、人間はそんな奴らばかりではない。

動物よりひとまわり大きい女の子が来たかと思うと目を輝かせて可愛いと言って抱きかかえ、

親人間に一生懸命その動物の可愛さを色々アピールするんだ。そうしたら親人間はその動物を撫でながら持って帰るんだ。

羨ましいよな。連れられれて行った後はまだ分からないが、その女の子も親人間も幸せそうに目に焼き付く。


まあ、僕みたいに大きくなってしまった動物はあまり触られることも、可愛いと言われる事も少ないが、

ワンカップのおじさんが来る日は、僕の足下にその時食事している食べ物を僕の足元に投げて



「綺麗事は言わねぇが、俺とお前は楽しい時も辛い時も痛み分けだぞ、食え。」と言うんだ。



意味はよく分からないけどいつもの一言が終わる前に僕はもそもそ食べ終わって、

水飲み場に行って一口水を飲むとワンカップのおじさんはもう居ないんだが、いつも感謝している。

ワンカップのおじさんのお陰で少し人間の言葉も覚えたし、

そのお陰で夕方頃には僕の足元にオレンジの地面に大きい陰を映し出せんるんだ。


そんな事を思いながら青年を見つめていると、青年はズタ袋をゴソゴソして大きい団子を出して、


「一緒に鬼退治に行かないか?報酬はこのキビ団子だ。どうだ?旅しよう。」


僕は一呼吸置いた後、キビ団子を勢い良く食べ飲み込むと、


「うん。僕でよろしければ。」


と、言ったんだ。そしたら青年は、


「決まりだ、行こう。鬼に日が昇る前に。」


と言い、ベンチから立ち上がったんだ。それが桃太郎との合言葉だった。


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