8、家庭訪問シリーズ、他
呟怖です。
【家庭訪問】何十年と教師をやってきたが、こんなものを出されたのは初めてだった。今日はとある家庭に訪問している。どうぞと言って出されたのは、氷の浮いた赤黒い飲み物だった。「暑くなってきましたからねえ」そう言われるが、生臭く、固形物のようなものも漂っているのでどうにも手がつけられない。
【家庭訪問2】今日は別の家庭を訪問している。この家は室内犬を飼っているのだろうか。呼び鈴を鳴らすとけたたましい鳴き声がした。「あら先生、ようこそおいでくださいました。こらっシロ、大人しくしなさい!」玄関先の女性が、足元の何もない空間に向かって注意する。あれ? 犬は…。「さあどうぞ先生」
【家庭訪問3】今日も別の家庭を訪問する。「いらっしゃい」そう出迎えてくれたのは強面の男性だった。「先生、俺はね、実はこの家の者じゃないんだ」どういうことかとリビングに行くと、泣いている生徒がいた。「俺もこいつの親に会いたくて『家庭訪問』してんだよね。今呼び出し中」どうも借金取りらしい。
【家庭訪問4】今日も別の生徒の家を訪問する。マンションの五階なので、エレベーターを使う。呼び鈴を鳴らすと顔色が真っ青の女性が出てきた。思わず心配して声をかけるが、無言のまま部屋に通される。ベランダに通じる窓が開いていて、救急車の音が聞こえてきた。「また飛び降りがあったみたいで…」
【家庭訪問5】今日も別の家を訪問する。玄関前に水の入ったペットボトルがあった。猫避け、だろうか。出てきた女性に通されると、廊下にも同じペットボトルがあった。リビングにも。テレビの横にも二つ。「先生、あれ気になります? うち、そういった宗教なんです」水の入ったグラスが目の前に置かれる。
【羊毛フェルト】家に帰ると、妻がちくわを針で刺し続けていた。何をしているのかと聞くと、羊毛フェルトだという。でも、テーブルの上には開封済みのちくわの袋が…。「ああ、やっぱり羊毛にならないわ」妻はそう言って、針を投げ出す。
【サッカーボール】夕暮れの公園で一人、小太りのオッサンがサッカーをしていた。なんていうか、ものすごく一生懸命に蹴っている。必死過ぎてちょっと引くくらい。あたりには誰もおらず、わたしだけが物陰からそれを見ていた。「ギャンッ!」何かの鳴き声がしたので見てみると、それはサッカーボールではなく、