4、飛ぶ洗濯物、他
【耳のチャンネル】わたしはたまに耳のチャンネルがおかしくなります。思いっきり泣いたり、怒ったりした後に。電子レンジがニャーと鳴いて、猫がチンと鳴ったりします。子供が老人の声になって、夫が宇宙語を話したりします。あ、夫はいつもどおりでした。今日もUFOに乗って出勤していきます。
【赤いカクテル】深夜のバーに、漆黒のドレスを着た美女がやってくる。カウンターに腰かけると、待ってましたとばかりにバーテンダーがグラスを差し出す。そこには血のように赤いカクテルが。「今夜のブラッディ・マリーは『本物』ですよ」バーテンダーの言葉に満足げに飲み干す。彼女は吸血鬼。
【命を繰り返す男】あるところに、命を繰り返す男がいた。彼は百歳まで生きると誰かの家の前に籠を置いてその上で眠る。すると朝には赤ん坊になっているのだ。こうして何千年も生きている。ある時うっかり赤ん坊に戻る前に住人に気付かれてしまった。その瞬間、彼は霧のように消えてしまったという。
【飛ぶ洗濯物】洗濯物が飛んでいるのを見た。今日のこの強風で上空まで舞い上がってしまっている。じっと眺めていると、二枚三枚と他所からも合流してきた。洗濯物たちはV字になって飛んで行く。あれは全部、半袖のシャツだ。これから南へ行くのだろう。そして春になったらまた戻ってくるのだ。
【魔王の香水】どこからともなく花の香りがしてきたと思ったら、通行人の一人が倒れた。口から泡を吐き、目をひん剥いて、続々と住人たちは倒れていく。やがて一人の魔女が姿を現した。彼女は魔王からもらった香水を身につけていた。これから憎くて憎くてたまらない、愛しい国王に会いに行く。
【灰の人々】とある山の噴火が治まると、火口付近には人の形をした灰の塊がいくつも生まれておりました。それらは連れ立って下山し、麓に陶芸小屋を作りました。ろくろを回し、出来た器を窯で焼き、素晴らしい陶芸品を残した灰の人々は、人間たちに愛されたのちに、また山へと還って行きました。
【勝ち残った者】勇者が目を覚ますと、そこはただっ広い地下空間だった。他にも何十人と人が倒れている。「大丈夫ですか?」声をかけると、皆自分は勇者だという。広間の壁に魔王の幻影が映る。「これからお前たちに殺し合いをしてもらう。最後の一人まで勝ち残った者に、私を殺す権利をやろう」