チャプター3 「そして、発動した」
登場人物解説 ・夏海アルゼ:執筆前は、冷徹な美青年でしたが、意識したつもりはなかったのに、某ロボットアニメの登場人物の一人とモロ被ったことに気付き、冷静な女の子に(今でも、これで良かったのかと、本気で悩んでいる…)。それに合わせ、性格を『フリーナイン』の焼野原をイメージしました。だから、ジャージを着ています。自分の作品の女の子はヘタレる子が多いので、クール&ビューティーな感じにしたかったのに、書いてるうちに、だんだん、ヘタレてきて、いろいろと困るキャラクターです。
この日の市内のショッピングモールは、夏本番と言わんばかりに暑かった。太陽を、窓や建物が熱反射させ、この辺り一帯を、暑くさせる。
しかし、その暑さを、更に暑苦しくするかのように、ショッピングモールに内接する公園のベンチに、ある男が座っていた。
それはそれは、すざましいアフロだった。遠くから見ても、明らかに解るほどに、すざましいアフロだった。
かって、シルベスター・スタローン主演のロッキーシリーズに出てきたライバルのアポロや、伝説の巨神が出てくるロボットアニメの主役を彷彿とさせるくらいの、すざましいアフロ。
公園に居た少年達は、思わず、そのアフロに群がっていた。
そして、このアフロの男は、いつの時代の服だと突っ込みたくなるような、ジョン・トラボルタが来ていたような長袖の白い服を着ており、サングラスをしていた。
肌は陽に焼けて、黒かった。
男は、少年達が群がるベンチに座りながら、いきなり、口を開いた…。
「ファーイ…、なんて、暑さだ…、ジャパンのサイタマシティーは…。かなり、暑いで…」
と、中途半端な英語混じりで、男は呟く。厚着のせいか、額から汗がこぼれていた。
一体、この男は何者なのか…。
少年達は、珍しいものを触るかのように、男のアフロに触っては逃げて行った。
「なんて…、アフロなんだ…」
たまたま公園の近くを歩いていた、まだ傷の癒えていない絆創膏だらけのゼファーナは、その男のアフロに驚きが隠せないで居た。
絆創膏だらけの口を半開きにして、驚きながら、公園の時計を見つめた。
それを見て、ゼファーナは、いかん!待ち合わせに遅れると焦りながら、驚くのやめて、また歩き始める。
すごい、アフロだったと興奮しながら、ゼファーナは、その場を去る。
スペース・ランナウェーイ!
と、ゼファーナが去った後の公園のベンチに座る、アフロの男のポケットから、妙な音が聞こえた。
これは、どうやら、彼の携帯電話の着信音のようだ。
少年達が散った後のベンチで、男はポケットから、携帯電話を取り出して、耳に当てて、第一声…、
「アンチヒューマンズの、『セプテンバー・ミリア』だ…」
と、確かに、アンチヒューマンズという単語を言いながら、男は電話に出た。
果たして、彼の正体は…。
「その顔の傷、どうした…」
と、昼下がりに立ち食いそば屋で、カツ丼を食べているカタナから、先日の件でついた顔の傷について、ゼファーナは聞かれた。
そのゼファーナの顔を見て、隼は冷やしたぬきうどんを食べながら、ガハハ笑いをして、
「女にでも、やられたか!?ハハハ!!」
と、ざるそばを食べているゼファーナに言う。
すると…、
「なんで、解ったんですか…?」
と、ざるそばを啜りながら、ゼファーナは答えた。
カタナ、隼は、えっ!?と驚いた。
アルゼの引っ掻き傷は、生々しく跡を残している。
三人は、東京の新宿駅前に居た。
アルゼと映画見るのに失敗したゼファーナの地獄同盟会同士の親交を良くしよう作戦の引き続きで、カタナ、隼と、東京観光をしようとしているのだ。
様々なデパートが多い、新宿で、男三人で買い物でもして、楽しく食事でもしようと誘ったのだが…。
ゼファーナに、この二人をコントロールすることなんて出来なかった。
「かんぱーい!!」
と、数人の女性たちに囲まれながら、カタナと隼は酒の入ったグラスを片手に、乾杯をした。
買い物するはずなのに、いつのまにか、歌舞伎町のキャバクラに彼らは居た。
というより、あの二人が勝手に進路変更をした。
煌びやかな衣裳の女性たちに気分を良くしたカタナ、隼は、ガハハ笑いで酒を一気のみしているのを、近くで、ジュースを片手に踞りながら、
「こんなはずじゃない…、こんなはずじゃなかった…」
と、ゼファーナは呟く。シュガーレスの入ったカバンを、足元に置いて、二人の酒ビンをくわえた一気飲みを見つめていた。
いつもの着物姿のカタナに、アロハシャツの隼は、ジャンジャンと酒を飲んでいる。
気分良さそうに、女性たちと話している二人を見て、
(こんなときに、敵が現れたら、どーすんだよ…。大体、カタナさんは、今、大変なことになってたんじゃないのか…)
と、ゼファーナは一人、頭を抱えていた。
すると、一人の女性が、ゼファーナに近寄り…、
「あれー、眼鏡の君、なかなか、可愛い顔ねー。何歳なの?」
と、話し掛けてきた。
半袖のYシャツで真面目そうな感じのゼファーナは、ここでは浮いていたせいか、返って、目立ってしまった。
女性慣れしていない彼は、戸惑いながら話す。
「えっ、16です…」
「きゃー、カワイイー」
と女性は、ゼファーナに食い付いてきた。
こういうのは、初めてなのと、苦手なので、ゼファーナは困惑し、さらには、何故か、頭には、桜花の顔が浮かんできた。
視線を変えると、カタナと、隼は、周囲の女の子達と、山手線ゲームなどを始めていた。
なんだか、今は、自分は別世界に居るんじゃないかと頭が混乱してきたゼファーナは、カバンを持って、トイレに行くといい、席から立った。
「ハァ…、まるで、別世界だよ…」
と、そのまま店から出たゼファーナは、店内のアルコール臭を肺から出そうと、大きく深呼吸をした。
先日と同じく、また作戦が失敗したと嘆きながら、夜になり暗くなった歌舞伎町を恐る恐る歩いた。
周囲を見渡すと、サラリーマンや、恐そうな方々や、綺麗に化粧をした女性達が、街を歩いている。
この場所は、自分には合わないと思ったゼファーナは、逃げ出すように、ここから去る。
この場所から、去りながら、さっき、頭に浮かんだ桜花について、ゼファーナは考えていた。
(そういや、こないだ…、久しぶりに会った…)
と、先日のバイトのことを思い出す。
そのときの彼女は、いつものように、挨拶をしてくれたが、何故か、しばらく会わないうちに、どこか、彼女の雰囲気が変わっていたのが気になった。
それが、ゼファーナには、何故か、辛く感じた。
まさか、ダイゴとかと、なんかあったんじゃないのかとの邪推が、頭の中を駆け巡る。
「あれ、春日は?」
と、酒でベロベロに酔い始めてきたカタナは居なくなったゼファーナに気付いた。
それで、女の子達に囲まれている隼に聞いた。
「知るか、んなガキ!んなことより、飲むぞ!」
と返してきた隼に、カタナの顔が青ざめてきた。
そして…、
「なぁ、おまえ、財布持ってるか?」
自分の懐をパンパンしながら、青ざめた顔のカタナが隼に聞く。
隼の笑いが、止まった。
二人は、まさか…、と思った。
そう、二人とも、ゼファーナに立て替えさせるために、財布なんて持ってきてない。
本編ですら、見苦し性分でありますのに、さらに、見苦し番外編を御覧になってもらいまして、本当にありがとうございました。