チャプター2 「若さ、若さってなんだ」
登場人物解説 ・秋羽隼:ゼファーナ、アルゼ、カタナの三人だけだと、なんかバラエティがないと思い生まれたキャラ。急遽、作ったため、キャラが上手く立てられず、出番が少ない…。キャラは、『ゼイファーマン』の主役の翔助と、昔の少年マガジンの主人公達をモデルに。なんとか、上手く動かしたいキャラです…。
いつものように、藤岡剣友会の練習に、マネージャー役で参加しているゼファーナ春日。
スポーツドリンクの粉を開きながら、遠目で、竹刀を振っている雪乃を見つめていた。相変わらず、彼女はみんなと稽古に熱を入れていた。
そして、ゼファーナは、スポーツドリンクを作りながら、自分の首を抑え…、あの日のことを、ふと思い出す…。
あれは、スリーピンクが本格的攻め始めた頃…。市内体育館の玄関にて、スリーピングのケリーホッパが、冬風カタナを騙すために現れ、ゼファーナの前に現れた時のこと…。
ケリーは、ゼファーナ春日が、シュガーレスの正体であるのを知らなかったが、何故か、彼を初対面とは思えなかった。
「えっと、カタナさんに、用ですね?少々、お待ち下さい」
と、ゼファーナはカタナを呼びに、道場に向かって行った。
そんな彼の後ろ姿を見て、ケリーは…、「あの眼鏡の彼、結構、かわいい顔してるわね…。わたしのタイプ…」
と、ゼファーナの顔を見て、クスッと笑った。
そして、彼女は、ポケットに手を入れて、一枚の紙切れを出した。
カタナの顔写真である。
敵である彼の前に、現れた彼女の狙いとは…。
「凄い美人さんでしたよ?」
「なんだと!?なんだって!!」
と、練習中のカタナを呼び止めて、ゼファーナは、そう言った。
凄い美人というフレーズを聞いた瞬間、カタナは、大きく鼻息を出し、すざましい勢いで、防具を脱いで、一気呵成に、玄関に向かって、飛んで行った。
その姿を、ゼファーナは、あらら…、と見つめていると…、
「春日くん…、どういうことかしら、これは…?」
「はっ…!」
と背後から、防具と竹刀を持った雪乃が、すざましい殺気を放っているのに、ゼファーナは感じた。
その竹刀で、干物にされるかと思った…、と後に、彼は語る。
客間の和室の畳の上に、カタナと、ケリーが正座で座っており、その中にある和室の給湯室で、ゼファーナは、二人の分の茶の準備をしていた。
客間の襖の間から、剣友会の面々が、防具を外して覗いているのを、ゼファーナは黙認し、気付いてないフリをした。とりあえず、雪乃が襖の間から、すざましい殺気を放っているのが、凄い気になってはいた。
誰だか知らないが、美人なケリーを前にして、興奮気味のカタナは、
「ところで、お嬢さんは、どちらさんかな…」
と、声を1トーン低くした、いつもより、ダンディな感じの声で話す。
ゼファーナは、二人の前でお茶を出しながら、襖の間から、雪乃の無言の圧力を感じていた。
すると…、
「はっ…!」
カタナは、驚いた。
いきなり、ケリーが涙を流し始めたのだ。
お茶を出し終わったゼファーナは、大きく、目を見開いて驚き、襖の間から、雪乃の驚きの声も聞こえた。
すると、ケリーは、いきなり…。
ガバッ!!
なんと、カタナの胸元に抱きついた。
「えっ?えっ?」
さすがのカタナも、訳が解らず、思考がメチャクチャになった。
だが、先日、通販で購入した異性を引き寄せる魔法のフェロモン香水が、こんなに効果が出るとは…、とカタナは思った。
ゼファーナは、驚きで口を開けながら、襖を見つめると…、
「雪乃さん、落ち着いて!!それ、危ないから、持たないで!!」
「なに、構えてるんですか!」
「うわ、目が据わってる!!!」
「姉ちゃん!眼が、抜刀斎みたいだよ!!」
と、襖の間から、なにやら、とんでもない状態になっている雪乃を実況するような小室、中田、尾崎、大樹達の声が聞こえた。
なので、ゼファーナは、仕方なく、その場から出て行った。
すると、ケリーは…、
「逢いたかった…。やっぱり、記憶喪失は、本当なのね…」
と、言った。
カタナは、えっ!と声を漏らした。
襖の間からは…、
「所詮、この世は、弱肉強食…」
「なに、言ってるんですか!?ぬふぅ、首はやめて!首は…、くっ…」
と、とんでもない事になっている雪乃と、止めに入ったら、なぜか、彼女に首を絞められたゼファーナの声がした。
そして、カタナの胸元で泣きながら、ケリーは…、
「忘れたの?わたしたち、結婚を誓って、あんなに愛し合ったじゃない!」
と言った。
カタナは、かなり驚いたらしく、声が出なかった。
襖の間からは、
「誰か、救急車を!」
「雪乃さん、気を失わないで!!」
「春日!春日!目を開いてくれ!!」
「姉ちゃん!姉ちゃん!」
と、ケリーのその言葉を聞いた雪乃が、ショックで気を失ったらしく、全員が全員、取り乱す声がした。
ゼファーナは、後に、お花畑や、川が見えたと答えた。
それを思い出しながら、ゼファーナはため息を吐くと…。
「春日君!スポーツドリンク、まだなの!?」
あの首に締め付くような雪乃の声がして、背筋がピーンとした。
まったく…、と言いながら、ゼファーナはスポーツドリンクを用意していると、ふと、桜花の顔が頭によぎった。
(桜花さんなら、きっと…、優しい感じで…)
…………………
「ゼファーナ君…。ひどい傷ね…、見せて…」
と、体育館のロッカールームで、何故か、ナース服姿の桜花が、傷だらけのゼファーナの顔に片手で触れる。
体のラインを、はっきりと強調するかのような、彼女の白衣のナース服姿ゼファーナは、照れながら…、
「あっ、いや、大丈夫です…、これぐらい…」
と、言う。
しかし、桜花は、その柔らかい両手で、ゼファーナの顔を掴み…、
「遠慮しないの…。君は、年下の男の子なんだから、私みたいな、お姉さんの言うことは、素直に聞きなさい…」
と、彼女は自分の顔を、彼に近付けて、いつも以上に、色気の混じった唇の動かした方で言う。
ゼファーナは、顔を真っ赤にして…、
「はっ、はい…」
静かに、目をつぶった…。
ゼファーナが、目をつぶったのを確認するかのように、桜花が彼の顔に近づき…、そして…。
…………………
「あっ…、桜花さん…。いけません!そんな、卑猥な…!」
スポーツドリンクが来るのが遅いので、雪乃と大樹が給湯室を見に行くと、そこには、妄想に浸るゼファーナの姿が…。
呆然と見つめる雪乃の手を握りながら、大樹は言う。
「姉ちゃんが、こないだ、あんなに首絞めるから…」
このあと、現実に戻ったゼファーナに対して、雪乃が妙に優しかったと、大樹は後に語る。
登場人物解説 ・冬風カタナ:本来、この作品は彼が主人公でした。しかし、これだと、以前、自分の書いた作品と内容が被ると気付き、ゼファーナをメインに。なので、ゼファーナ以上に設定を多くしたため、メインになりやすいキャラ…。秋羽隼とは逆パターンです。今まで、書いたことのないキャラにしたいと思い出来たので、いろんな顔を持っていて、動かしやすいキャラです。