表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

すこぶる陽気なダメ人間 〜釣り編〜

作者: アルミ3

勝利の方程式は勝つ確率を上げるものではありません。

そもそも行動一つで運が良くなるなんてありえないことです。

それが分かっていながら信じてしまうのは、狂っていることに変わらないからかもしれません。


今日は釣りの話をしようと思う。

因みに俺の持論は釣りとギャンブルは紙一重だ。


まず行うことは場所選びだ。

いつも行く防波堤、その中でも比較的釣り人の少ない場所を選ぶ。

特に理由はないが、人が少ない方が比較的大物が釣れることが多い。


世の釣り上級者は、波の立ち方や潮の流れを調べて決めるそうなんだが、俺はそんな物には頼らない。

あくまでも俺は、ギャンブルが好きなだけだ。

その一環として、釣りをするだけ。

だからこそ、勝利の方程式だけで勝負する。



今日は造船場の向かい。

そこに作られたヘリコプターのエアポートの上で釣ることにする。

本来ならここは、もし救助ヘリなんかが止まれなくては困るとのことで釣りは禁止だが、今は深夜帯。

ましてや殆ど誰もいないんだから、問題ないだろう。


それに俺はここでとんでもなくデカイ鯖を釣った。

その鯖はゆうに30センチはありそうな大物だった。

俺が今まで釣った魚の中でいちばんの大物だ。


最高の1匹だった。

なんせ帰ってから魚拓までとってしまったほどだ。

その鯖の味はほんのり墨汁の色と匂いが、そして薄く妙な味がしたが、それでも最高の味だった。


だからこそ、この防波堤ではここで釣ると決めている。

ここなら大物が釣れる確信がある。


使う釣竿は3千円のボロだが、長年愛用している一品だ。

何度か折れたり、金具が飛んだりしているが、修理してずっと使い続けている。

俺の釣り人生の全てを知っていると言っても過言ではない。



仕掛けを作る。

今日は天秤にサビキを垂らす。

サビキの先には30センチは開けて針をつける。

この仕掛け、サビキはあくまでも囮、稚魚を惑わす餌にすぎない。

本当の狙いは、先の針。


稚魚の群れの下、そこで虎視眈眈とはぐれた稚魚を狙う大物だ。


この仕掛けで並み居る大物を釣ったものだ。

かの鯖もこれで釣った。

一瞬のような激闘を俺が制したんだ。


さあ仕掛けは完成だ。

餌はジャンボにパン粉を袋半分程度混ぜたもの、針には無難にオキアミをつける。


今日は風が気持ちいい。

近頃は夜も暑い日ばかりだったが、今日は絶好の釣り日和だ。

こんな日は大物が釣れるに違いない。


すっごいのが釣れたら真っ先に、あいつらに見せてやろう。

あいつら俺の鯖の魚拓を見て、「大した事ない。」だの「素人くさい。」だの言って来た。

頭に来て言い返したが、でっかい太刀魚の写真を見せられてぐうの音も出なくなってしまった。

なんでも週末に船釣りをした際に釣り上げたらしい。


しかし船釣りなんて卑怯だ。

あいつらと違って定職についてない俺が、船釣りなんてする金がない。

それを分かっていて言っているんだからタチが悪い。


でも、俺が負けているとは思っていない。

あいつらの太刀魚はすごかったが、鯖の写真はなかった。

つまり、鯖では俺が勝っている。


それに、今日はあいつらがあっと驚く大物を釣る予定だ。

今日は木曜日。

木曜日は大物が釣れやすい日。

朝からも大物を釣るための行動をして来たんだ。

もう勝利を確信しているぐらいだ。


ああ、風が気持ちいい。

今日も楽しい日になりそうだ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ