いまどきの就活事情?
我が家のマイペース過ぎるしもべAも大学最終学年となり、三月から就職活動らしきものを始めている。
一昨年、昨年と段々就活の時期がズレてきて、今年の会社説明会は三月から始まった。インターンシップの普及により、既に就職活動に動いている大学生も多い中、とことんマイペースなAも三月に入ってようやく動きだしたのだ。
そもそも入学当初は司書資格を取るべく受講していたはずだが、肌に合わないと早々に断念。次に公務員関連に興味を持った様であるが、ゼミの中で人脈が広がるにつれて、一般企業の方へと舵を切ったのだ。
かくして県内の合同説明会や大学で開かれる説明会を回って、希望職種への求人がある、もしくは将来的にその分野への配属が可能である企業に絞ってエントリーしている様である。
Aの学科はマスコミ関係と広報関係に大きく別れてゆく。高校時代を考えるとマスコミ関係に進むものだと思っていたのだが、入学後広報関係が面白かったらしく、現在ゼミではとある地方行政とタイアップしながら広報関連の可能性について学んでおり、またゼミの教授が開いている学会の手伝いなどもしている。
これら高校時代や大学のゼミ、そしてバイト先において、同世代以外の人々と育んできた交流が、これから社会に出ようとしているAにとって、大きな力となっているようだ。
もともとAは、人見知りというものを一切しない。それはもう、まだほんの幼い三歳の頃から変わらない。Aが三歳の頃、私などご挨拶以外したことのないご高齢の御婦人に、言われた言葉がある。
「随分と、人懐っこいようだけど、世の中怖い人もいるんだから、お母さん、この子から目を離さない方が良いわよ」
ほんの数分の間に、大親友が出来たかの如き態度で甘えていたAを見ながら、しみじみとおっしゃっておられたくらい、外に開いた性格なのである。それは今でも変わらない。家では本を読んだり、漫画を描いたり、人形の服作りをしたりと、何かを篭ってしているAだが、一歩外に出ると一気に外向的になるのだ。
内弁慶という言葉があるが、Aの場合は典型的な外弁慶である。
そんなAだからこそ、メーカーではなく、販売系への就職を考えている様だ。如何に売るかというのは確かに今までの学習を活かせる分野であろう。
だが、私自身は一抹の不安も抱いている。Aは前作最終回で記した様に、片方の耳の聴力が殆どない。ない側から話し掛けられた場合、気がつかないのである。特に男性の低音の声は聴こえないらしい。
ただ、大学に入ってからずっと接客業でバイトしてきた事は、彼女の自信になったようである。周囲への周知は必要であるが、片方だけの難聴が、障害者ではなく健常者として扱われる以上、甘えは許されない。どんな仕事であろうと、しっかりと勤めて貰いたい。
さてここで、現在の実況中継をしようかと思う。実はこれを書いている今日も会社説明会に赴いている。趣味と実益を兼ねた、某ゲーム関連企業らしい。実に嬉しげにホイホイと都心まで出掛けて行った。暑い中、黒いスーツを着込んでの就活は大変そうだが、誰もが通る道である。まあ、頑張ってくれたまえ。
実は、すでに試験も始まっており、一社は最終面接を残すのみである。「早い段階で、とりあえず内定が欲しいよう」と、言っていたが、まさかこんなに早いとは。最近では、筆記試験はネットで行うところも多いらしい。時代は変わったなあ~と、驚くばかりである。
私は男女雇用機会均等法第一期生である。施行を前にどの企業も及び腰で、女子の超氷河期と呼ばれていた。学校に来る求人も、今で云うIT関連企業の発足期であったから、SEの求人が殆どであった。そういう学校だったから当然なのだが、情報系、事務関連、秘書を同じ割合で学んできた私には、SEのスキルなど、とんでもないお話で、完全に事務系に絞って就活した。ところが、この事務系自体の求人がすずめの涙しかなかった。
その数少ない求人のあった企業の説明会に赴き、履歴書を出し、試験を受け、面接をこなした訳だが、合否連絡があった時、実家でのんびり入浴中であった。慌てて受話器を受け取り、ひっくり返った声でお礼を述べたのは良い思い出である。
今の様に、エントリーシートではなく履歴書だったし、インターネットなどない時代であるから、勿論携帯電話などない。合否連絡は実家の固定電話にかかってきたのである。実家にいて良かったと、初めて思ったものだ。
結局この会社にお世話になった訳だが、面接で非常に面白い質問があった。
「神さんは野球は好きですか? どこか好きなプロのチームはありますか? その理由もお聞かせ下さい」
某球団が好きで観戦にも出掛けていた私は、意気揚々と答えたのだが、勿論履歴書等には野球の「や」の字もない。いわば、イレギュラーで唐突な質問である。だが、これが面接の合否の分け目になったのではないかと考えている。また、資格の欄に取得済み資格をこれでもかと書いたが、その資格があれば答えて当然な専門的な質問もあった。
この時ほど、お調子者で、よく言えば臨機応変、良く見ればただの適当な性格であった事に自ら感謝した事はない。ノリの良い面接官で良かった。
この面接官が後に上司となり、私と伴侶の結婚式で主賓を勤めてもらう事になるなど、この時点では思ってもいなかったが。
今年三月に卒業した大卒の就職率は、96.7%という高水準らしい。(5/19付け読売新聞夕刊)
記事によると、今年度も高水準が見込めるとしている。
どうか、マイペース過ぎるAを採用してくれる、奇特な企業があります様に。自立への第一歩を無事進んでくれる様、祈ってやまない母である。
お越し下さって、ありがとうございます!
*次回更新予定*
7月3日(金)夜10時
怪しい母がお待ちしておりますm(__)m