そのご
女の子の生活は青年が来る前のものに戻りました。
畑を耕し、作物をつくり、夜には主人の息子に暴力を振るわれました。
以前なら女の子にとって慣れっこな生活のはずでした。
しかし今はなにかが違っていました。
仕事をしていると、時折どうしてだか目から涙が流れてくるのです。
殴られると、ここからいなくなりたいと思いました。
女の子は青年の優しさが忘れられなかったのです。
それでも、逃げ出す勇気はありませんでした。
あの人が探している人を見つけられますようにと女の子は祈りました。
そしてまたここに来てくれますように。
リンデバークの神官さまが、乱心なさった国王さまを止めようとしたそうだ。
国王のお怒りを買って逆に処刑されてしまうんだろう。おかわいそうに。
処刑は明日の夕刻、リンデバーク城のまえで行われるらしいぞ。
奴隷たちの噂をきいたのは、青年が帰って2日後でした。
女の子は背筋が凍るような思いがしました。
あの青年が死んでしまう。
女の子は噂をしていた奴隷たちに詰め寄りました。
リンデバークへはどうやって行ったらいいの。
奴隷たちは女の子の気迫に驚いて、いっぽ後ずさりました。
ここを出てお屋敷の前の道をずっとまっすぐ行けばつくらしいぞ。行ったことがないから本当かどうかわからないがな。
女の子はそう聞くが早いか走り出しました。
馬屋の後ろに塀が壊れかかっているところがありました。
女の子は納屋から金槌をとってきて、そこを思い切り叩きます。
どおんっと大きな音がして、塀が崩れ落ちました。
大きな音を聞いて主人や息子たちが集まってきました。
おいおまえと主人は言いました。
しかしそんな言葉女の子には届いていませんでした。
崩れた壁から外が見えました。
女の子は外へ走り出しました。
まっすぐな一本道でした。
リンデバークに向かって女の子は無我夢中で走り続けました。




