そのよん
ときは夕方でした。
女の子はお屋敷の外まで走りました。
そしていつも農具をしまっている納屋の陰に隠れました。
青年は天界の王子様。
それなら青年は神様なのでしょう。
青年の話の通りなら、青年は青龍を探しているのでしょう。
そして自分は青龍に似ている…
でも似ているだけで本物じゃないと女の子は思いました。
本物じゃなければ意味がないとも思いました。
そんなことを考えると、なんだか胸が苦しくなります。
すると少し離れたところで主人と息子の話し声が聞こえました。
仕事をしていないのがばれたら怒られてしまいます。
女の子はそうっと納屋を離れて青年の夕食をとりに厨房へむかいました。
その頃、青年のもとには一通の書簡が届いていました。
書簡には、リンデバーク国王が乱心したと書かれていました。
青年は窓の外の夕焼けを見て顔をしかめました。
女の子は青年の部屋に食事を運んでいきました。
先ほどのことで、なんだか気まずいような気分になったのですが、仕事なのでそんなこと気にしてなんかいられません。
青年はなにもなかったかのように、いつもと同じく優しく迎え入れてくれました。
青年は自分の食事を少しずつ別のお皿に取って女の子に渡しました。
奴隷はまともなものが食べられないでしょうと、女の子が初めて食事を運んだ日から毎食、青年は女の子に料理を、半分分けていたのでした。
女の子は戸惑っていました。
青年に、一緒には行けないと言わなければならないのです。
しかし、自分のなかに、今の生活から逃げ出したいという強い思いが生まれてしまいました。
行けば主人に殺されてしまいそうですが、行かずに仕事をして、夜には殴ったり蹴ったりされるのも嫌でした。
すると、青年は突然言いました。
明日、リンデバークに戻らなければならなくなりました。
女の子は驚きました。
戸惑いも忘れるほどに。
どうしてなのですか、と女の子は尋ねます。
リンデバーク国王が乱心なされました。城の召し使い達がなき罪で殺されようとしています。戻って彼を止めなければ。
青年は、女の子が今までみたことのなかった険しい顔をしていました。
わたしは…あなたと一緒には…と女の子はつぶやきました。
すると青年はいつもの笑顔に戻って、しかし少し寂しそうに、わかっていますよと答えました。
翌朝、青年はお屋敷を後にし、リンデバークへ帰っていきました。




