プロローグ『後の祭り』
「やってしまった……」
我に返り、そんな言葉をつい零してしまう。
俺の目の前にいるのは路上でうつ伏せに倒れている数人の男。彼らは俺にボコボコにされたのだ。
男達が俺の入学する高校の制服を着た女子に絡んでいた。しかし、あからさまにその女子が嫌がっていたので、気づけば俺は男達を殴り倒してしまっていた。
同じ高校に通う女子高生を助けたということで、俺は時の人にでもなるのだと少しだけ期待してした。だって、女子を助ける男子ってかっこいいじゃない。俺だってそんな男子を見たらかっこいいって思うし。
でも、現実は甘くなかった。苦く冷たいものだった。
観衆の大半は俺のことを差別する目で見ていた。俺が周りを見渡していく中で目が合ってしまうとその途端に逃げてしまう人もいた。
俺にはそうなる原因がすぐに特定できた。
「ひくっ、ひくっ……」
俺の助けた女子が怯えた表情で俺のことを見ており、俺と目が合うや否や小さな声で泣き始めてしまったからだ。
――やっぱりこうなってしまうのか。
どこの地に立とうが、俺は非難の目で見られる運命ってことなのか。
今日から高校生だっていうのに。
恋人云々は期待していないが、友達と一緒に楽しい高校生活を送るという儚い夢がこの瞬間に散ってしまった気がした。
俺、成瀬篤人という人間に待っているのはやっぱり、孤独で灰色な高校生活だけ、か。