おじいちゃん(20歳)の秘密
まぁ、なんやかんやで、死神は
俺の家に、住むことになった。
そして、俺はおじいちゃんのふりを
することを、やめた。
「いやぁー、部屋はちゃんと若者なんだねー。」
くつろぐ死神。ふざけんな。
「それより、君のほんとの名前聞かないと。
名前なんなの?」
意外としっかりしてるんだな。
そういうところは。
そう思った。
「俺は、内尾 恭よろしくな。」
「ほう。恭か。よろしく!んじゃあ、家事得意?」
えっ、何でそんなこと?
まさか…な?
少し嫌な予感がした。
「まぁ、料理はピカイチだ。洗濯もできるけど
掃除はできない。」
「ほう。じゃあ、私掃除するから。あとは、よろしく。」
多分これずっと俺の家住むつもりだー!!
嫌だぜ。死神と暮らす日々なんて。
神様助けてくれー!
そうして、俺と死神の日々は、始まった。
ー翌日ー
「あぁ、おはよう。おぉ、料理ほんとにうまいんだ。」
疑ってたのかよ!
「まぁな。専門学校行ってるし。」
「ふーん。てか、何でおじいさんのふりなんか
してたの?普通に、学校行けてるなら
する意味ないと思うんだけど…。」
核心来たな。意外と侮れない。
「まぁ、ほんとの自分を知られたくないっていうか。
孤独を埋めたいっていうか。」
そう。俺は、親もいなければ、祖父母もいない。
引き取ってくれる親戚さえ、いなかった。
あいにく成人近くだったので、一人暮らしで
解決された。
もちろんお金は、親戚が義務として
払わされている。
だから、学校に行けるのだ。
…そもそも俺は、小さいころから
孤独だった。
母は、小さい頃に亡くし、父と
二人っきりだった。
男手1人で、育てるということで
家事などは、俺が全部やっていた。
学校へ行くのも、規定ギリギリまで
休んだ。
そんなこともあって、学校でも
孤独だった。
少しぐらいは、かまってくれる人が
いたが、何かのせいで みんな
俺のそばを、去って行った。
孤独を埋めたかった。
ただ、それだけだった。
父が亡くなったのを機に、一人暮らしを始め
誰も俺のことを知らない街で、違う俺で
平和に暮らしたかった。
それだけだった。
変装して過ごす日々は、あたたかい日々だった。
周りのおじいちゃんやおばあちゃんと他愛ない
話をして、時間がすぎてゆく。
それだけで、全てが満たされた。
だけど…、死神が来たってことは
そう遠くないうちに、俺はこの世から
いなくなる。
それなら、今のうちにやりたいことを、やっておきたい。
けど…、ほんとにしたいことは、一生かなう訳がない。
お母さんを、見たいなんて…。