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ミッションA オークとの戦い1

 兵舎の天幕で、肩まであるストレートの漆黒の髪をかきあげ、一人たたずむ軍服を着た少女。勲章から高位の階級である事がわかる。

 妖精のように長くカールした睫毛まつげと狼のような気高く鋭い目つき。柔和で美しいものの、戦いの女神を思わせる顔立ち。少女は矛盾するものを数多く抱えていた。

 少女は資料を見ながらブツブツとつぶやく。考えがまとまらないのか、割と立派な机、椅子があるのに使わず、立ったまま時折、何歩か歩いては、行きつもどりつする。その度に振動で部屋にあるランプの灯りが揺らめく。


「マリー将軍、失礼します! 先ほど偵察部隊が戻って来ましたのでご報告に参りました」

 情報将校と思われる人物によって天幕の仕切りの布が開かれる。


「入っていいわよ。バジル中尉。お勤め、ご苦労さん。今、ちょうど煮詰まっていたところなのよ。新しい情報が欲しかったの。助かったわ。敵の様子について教えてちょうだい」

 マリー将軍と呼ばれた少女は、軽い感じでバジル中尉にねぎらいと感謝の言葉をかけた。バジル中尉は敬礼すると部屋に足を踏み入れた。


「はい、では説明します。敵の本拠地である黄の洞窟は噂通りの難攻不落の要塞です。洞窟内は至るところに罠が仕掛けられ、敵のオークも完全武装でかなりの強敵です。敵の首領オークキングまで辿り着くまでにどれだけの犠牲が出るか想像したくもありません。それから……」

バジル中尉は軍人らしい精悍な顔つきで敵地の状況について淡々と説明した。偵察部隊からの情報を簡潔にまとめ、独自の分析を加えた。情報将校としては有能なようだ。


「なるほどね。あなたの説明でだいたい状況が掴めたわ。なかなか厳しそうな感じね。これから私は作戦を練り直すわ。あなたは、もう下がっていいわよ」

 マリー将軍は得られた情報に満足すると作戦を練り直すために一人になりたい様子だった。意を汲んだバジル中尉は再び敬礼すると、すみやかに部屋を出た。マリー将軍は一人になると椅子に座り、両手で頬杖を突きながら考え始めた。


「それにしても戦闘前のこの静けさが不気味ね。一体、どういう風の吹き回しかしら。普通なら、小出しに戦力をぶつけて、こちらの出方を探ってくるはずなのに」

 マリー将軍は敵の出方を不審に思った。何か罠でもあるのか、敵陣営に大きな異変が生じたのか、不測の事態に対応できるように思案を巡らした。


「あ、そうだ。いいこと思いついた!この手で行きましょう!これなら敵の出方に臨機応変に対応できるわ」

 マリー将軍は思わず手を打つと、ひらめいた事を慌てて机にあるノートに書き付けた。将軍なのに日常の行動に落ち着きがない。こういうところは年相応の天真爛漫な少女らしい。


「みんな、集まってくれたようね。では、作戦について説明を始めるわよ。黄の洞窟。まず手始めに、この洞窟から攻めるわ。みんな、あたしの作戦通りに動けば、必ず勝てるから心配、要らないわよ。この不敗のマリー将軍がついているのだから大船に乗ったつもりでいてちょうだい。ちなみに今回は火攻めよ。焼き殺すの。ちょっとした細工が必要になるわね」

 翌朝、マリー将軍は会議室に軍幹部を集め、昨夜に立てた作戦について説明を始めた。

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