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9. 犯人と、その動機
3. 犯人と、その動機
「……徳平さん。あなたの仕業ですね?」
つむぎの視線が、九条家の忠実な執事・徳平に向けられた。
徳平は、いつも以上に背筋をピンと伸ばし、しかし冷や汗を滝のように流して立っていた。
「……お嬢様、民俗学の知識というのは恐ろしいものですな」
徳平は、観念したように深々と頭を下げた。
「徳平、貴様、なぜこんな真似を!」
厳山が詰め寄る。
「旦那様、申し訳ございません。ですが、私の腰はもう限界だったのです!」
「腰……?」
「左様です。明日の『鏡開き』の際、この巨大な餅を私が一人で担いで、山の上まで運ぶ伝統……。今年は雪が深く、今の私の腰で担げば、間違いなく死に至ると医者に言われておりまして。せめて一日、家宝を『行方不明』にすれば、担ぎ出しの儀式が中止になるかと思い……」
「……つまり、重労働からのストライキですか」
つむぎは、期待していた「山の神の祟り」ではなかったことに少しガッカリしながらも、猛然とメモを取った。




