7. 容疑者の「縛り」とつむぎの確信
「……待って。もし、餅を隠す場所が『目に見える場所』だとしたら?」
つむぎの声が、火の気のない広間に響いた。
九条家の人々は、寒さと空腹、そして「家宝を失った」という絶望感で、すでに限界を迎えていた。当主の厳山は、もはや怒鳴る気力もなく、不自然に膨らんだ自らの布団(実は珠江が隠したカップ麺の残骸)の上で丸まっている。
「つむぎ、いい加減にしてくれ。これ以上父さんを怒らせたら、本当に僕たちの結婚が『歴史の闇』に葬られてしまう……」
「道成さん、逆ですよ! 民俗学において、禁忌とは『禁止』であると同時に『守護』なんです。犯人は禁忌を破れないからこそ、最も安全な場所に餅を隠したんです」
つむぎは、廊下に残された「粉の跡」をもう一度指差した。
「この粉の跡、よく見てください。広間から一度廊下に出て、そして……また広間に戻ってきているんです」
一同の視線が、つむぎの指す先に向く。
そこには、厳山が堂々と座っている「主座」のすぐ背後、昨日まで巨大な餅が置かれていた「祭壇」があった。




