5. 掃除禁止の呪い
「皆さん、動かないでください!」
つむぎがいきなり立ち上がり、一同を制した。 「……何だ、お前は。道成の連れてきた、この『不届き者』め」 厳山が忌々しげに言うが、つむぎは気にしない。
「民俗学的に見て、この事件には決定的な証拠が残っています。九条家の禁忌……『三が日の掃除禁止』です!」
つむぎは床を指差した。 そこには、肉眼では辛うじて見える程度の、うっすらとした「白い粉」の筋が廊下に向かって続いていた。
「餅の粉だ!」
と道成が叫ぶ。
「そうです。通常、犯人は証拠を隠滅するために掃除をしますが、この屋敷で箒を使えば『福を掃き出す』として厳山さんに勘当されます。つまり犯人は、この粉を片付けたくても片付けられない……究極の『縛りプレイ』状態にあるんです!」
一同が顔を見合わせる。 長男の正成が、不自然に足元を隠すように一歩下がった。
「そ、そんなものは、ただの埃だろ。第一、こんな巨大な餅を一人で運べるわけがない」
「ええ、物理的にはそうです。でも、もし餅を『転がした』としたら?」
つむぎはニヤリと笑った。
「粉の跡は点ではなく、幅広の線のようになっています。これは重い円盤状の物体を引きずった、あるいは転がした跡です。そしてその先にあるのは……正成さん、あなたの部屋ですね?」
「なっ、馬鹿なことを言うな! 私は昨日から一歩も……」 「じゃあ、そのスリッパの裏を見せてください。掃除できない廊下を歩いたのなら、真っ白なはずですよ」
つむぎの指摘に、正成は顔を真っ青にして後ずさりした。




