2. 九条家の重き門
雪をかき分け、ようやく辿り着いた九条家の屋敷は、巨大な黒い化け物がうずくまっているような威圧感を放っていた。
重厚な薬医門をくぐると、そこにはすでに一族の面々が勢揃いしていた。
「遅かったな、道成」
玄関先で腕を組み、仁王立ちしているのは、当主の九条厳山だった。その背後には、凍りついたような笑みを浮かべる長男の正成、そしてどこを見ているのか分からない老女・菊乃が立っている。
「申し訳ありません、父さん。道が雪崩で……」
「ふん。部外者を連れてくるから山の神が怒ったのだ」
厳山の鋭い視線がつむぎを射抜く。
普通の女子大生なら泣き出して逃げ出すような場面だが、つむぎは臆するどころか、厳山の足元を食い入るように見つめていた。
「(……なるほど、これが『歳神様の通り道』を汚さないための、あえて左側を空ける歩法。実物を見られるなんて……!)」
彼女のペンが、猛烈な勢いでノートの上を走る。
「……何をしている、その娘は」
厳山が不審そうに眉をひそめる。
「あ、いえ! これはですね、九条家の素晴らしい伝統を……その、魂に刻んでいるところでして!」
つむぎが慌てて取り繕うと、母の芳江が後ろからおっとりと現れた。
「まあまあ、あなた。せっかく道成さんが連れてきたお嬢さんなんですもの。さあ、中へ入って。もうすぐ『奉納』の時間ですから」




