02
「学校近くにある向こうの県でもあっただろうチェーン店はこれで最後だな」
「あの、どうしてチェーン店縛りなんですか?」
よく聞いてくれた。
「それはいきたくなるかもしれないからだ、それだけでしかない」
「は、はあ、天田君はそういうお店よりもこの場所らしい場所を教えてもらいたいはずなんですけど……」
「平日の放課後じゃ足りない、そもそも一色がいる時点で長く見て回るつもりはなかったよ」
「え、すみません」
「謝らなくていい、これは俺がそういうつもりでいるというだけの話だ」
現時点で暗いから彼が気にするのもわかる。
彼が送るという話をしたら嬉々として家を教えたから知ることになってしまった、これはずるではないだろうか。
そもそも彼女が興味を持っているのは彼にだけ、だが、最初に変な風にしてしまったから仲良くしようとするときに邪魔にならないかが気になる。
「一色、本当は鉄と仲良くするつもりがないんだろ」
「なんでだ?」
あまりに急で、俺と一色からすれば大事な話だ。
ここで上手くコントロールしておきたい、ただ、ほいほいと喋りたくもない。
本人から許可を貰えない限りはやっぱりな。
「勘だ」
「本当のところはわからないよ」
「そうか」
これは彼が一色と過ごしていく中で本当は……となってくれればよかった。
だからこの選択は間違っていないと思う、勝手に言えばこちらに来ることもなくなる。
上手にやれる人間なら勝手に進んだそれにもすぐに対応をして、いや、寧ろ利用していくだろうが俺はまだまだ一色のことを知らないから仕方がない。
「ハンバーガーでも食べていかないか?」
「また怒られるぞ……」
「はは、冗談だ」
大人しく家に帰って母作のご飯を食べた。
風呂にも入って早く寝て、引っ越してからも続けている早く起きるを繰り返している。
「早いね」
「なにか手伝えることはないか?」
「それならゆっくりしていな、それだけがしてもらいたいことだ」
父だって似たようなことしか言ってきていなかったから本当に似ている。
それでも少し拗ねていた、なんにもできないのはただただ辛いだけだ。
貫一が起きて下りてもなにか出すことはしなかったが。
「じゃ、また休み時間にな」
「おう」
学校に着いても内がすっきりしたりはしない。
これはやらなければいけないことだからだ、誰かに頼まれて頑張っているわけではないからずっとこうだ。
「おはよう、ちょっといい?」
「おう」
なにを言われるのか。
ただ、ここなら責められるぐらいの方がすっきりできる気がした。
だから期待をして待っていると「今度は土曜日か日曜日に三人で遊びにいこうよ」と言われてそっちかとなった。
いや当たり前か、だって別にこちらのことに興味があるわけではない。
「それなら俺が――」
「誘うのは自分でやるからいい、なんでも天田君にやってもらおうとはしないよ」
「そ、そうか? なら困ったときは頼ってくれ」
「うん、じゃあ今日も頑張ろう」
うーむ、そうやってできるのなら最初のところで失敗をしたことになるのではないだろうか。
暫くの間は俺が頼めば付き合ってくれるだろうがいつまでも来てくれるとは考えていない。
そうなったとき俺は間違いなくただの邪魔な存在になるからいまの内になんとかしておきたい。
「一色、貫一先輩にはっきりと興味があるって言わないか?」
「え、誘うのとそれはでレベルが違うでしょ……」
今後ここ! というところで邪魔が入るよりはいいだろう。
誰だって自分のせいで困りたくなんかはない、だから頑張っておくのは大事だ。
自分のためだ、それなら受け入れやすいのではないだろうか。
「でもさ、いまのままだと伝わらないというかさ」
「天田君に興味があると言ったわけではないんだよ?」
「それでも本当に仲良くしたいならさ」
仲良くもないのにずかずか踏み込まれてうざいだろうが我慢をしてもらうしかない。
「……わかったよ、だけどそのときはあなたにも付いてきてもらうからね」
「おう、約束だ」
行動力の塊なのか次の時間には言いにいくことにしたみたいだった。
どういう反応をするのか気になっていた俺だったが、あくまで出会ったときとそれからの貫一と変わらない。
「はは、俺の勘は結構当たるみたいだな」
「それより貫一的にどうなんだ?」
「どうなんだと言われても一色のことはまだ全く知らないからな、これから次第だよ」
自分だって似たようなことを聞かれて似たようなことを返したのにすっきりしなかった、自分勝手だ。
とはいえ、一色が自分からどんどんといけるようになったのはいいことだと言える。
自然と来てくれるから一緒に過ごしやすい、それは一ミリだけでも役に立てた結果ではないだろうか。
「切り替える能力がすごいな」
自分のせいでつまらない結果にはしたくないのだろう、いちいちこちらに来ることもなく表面上だけなら仲のいい男女の先輩と後輩に見えていた。
「あれ、貫一はどこにいった?」
「さっき遊びにいったよ」
「はぁ、じっとできない子だね。じゃあ鉄でいいや、買い物にいくから手伝ってよ」
「任せろっ」
なんと言われてもいい、母のためにも動ければそれでいいのだ。
スーパーの場所はチェーン店を紹介してもらっていたときにわかったから先導していた。
「じゃ、適当に見ていればいいから」
「いや、一緒に見て回るよ」
「そう? 好きにしてくれればいいけどね」
いきなり高級品ばかりを買う家庭になったとかでもないしまあいつも通りのそれだ。
向こうで何回もいった経験があるから新鮮味というのは――意外とある、何故ならこのスーパーではなかったからだ。
これも時間が経過すれば当たり前になって変わっていくのだろうがいまが面白ければそれでいい、付いてきてよかった。
「荷物は全部持つ、母さんだってそのつもりで誘ってきたんだろ?」
「んー別にそうしてほしくて鉄に来てもらったわけじゃないけどね」
「なんか装っていないか? 家族になったんだからそのまま出してくれていいんだけど」
そりゃいきなり貫一が相手のときと同じぐらいでやってくれと言われても難しいとはわかっている、それでも頑張ってもらうしかないのだ。
また離婚をしなければずっとこのままだからだ、俺は家族とぐらいは仲良くしていきたいからもちろん努力をする、だからここもしつこくいかせてもらう。
「それはあんたでしょ……と言いたいところだけどあの人から聞いていた分と合わせてもあんた通りとしか言えないのが……」
「家族に隠したりしないよ」
が、最強メンタルではないから二回続けたところで黙られて無理になった。
少しの間気まずい時間に、こういうときは貫一にいてもらいたいものだ。
「あ、天田君」
「よう、なにをしに……って菓子か」
「うん、コンビニで買うのは楽だけどスーパーにいくようにしているんだ」
彼女はそのまま隣にいた母にも挨拶をして別れ……なかった。
所謂陽キャってやつだ、流石の俺でも相手の母がいるときに残ったりはできないぞ……。
「残念なのは遊びにいってくると出ていった貫の遊び相手が一色じゃなかったことだ」
休日なら先輩はいらないだろう。
「流石にまだ二人きりで遊べるような仲じゃないよ」
「変な遠慮をするなよ、誘いたければどんどん誘えばいいんだ」
彼女が帰ってからも嫌な顔なんかしていなかったからこれまでの異性とは違う可能性がある。
どちらにしてももっと時間を重ねないとなにも変わらないからその気があるなら遠慮なんかしている場合ではなかった。
「それより天田君……」
「ん?」
一瞬、母の方を見てから黙ったから察することができた。
「母さん、この子は貫一の友達なんだ」
「鉄の、じゃないの?」
「おう、だけど一色はこっちにも優しくしてくれているから助かっているぞ。これで少しは安心できただろ?」
一人だけでも話せる存在がいると教えたら父も喜んでくれた。
急にできた血が繋がっていない存在とはいっても気になるものだろう、一ミリずつでも少しずつ変えていければいい。
「いや、友達じゃないなら安心はできないよ、そういうところもあの人から聞いていた通りだね」
「友達を一人作るという目標は卒業までに達成できればいいわけだからな、ゆっくりやっていくよ」
「わかった、じゃあこれはこっちに任せてその子と遊びにいってきな」
なにもわかってくれていないぞ……。
「それとこれとは別だ、それにいま急がないと言ったばかり――」
「一時間だけでもいいから遊んでから帰ってきな。この子をよろしくね」
「は、はい」
すまん一色、興味もないのに変なことに巻き込んでしまって。
返事をしているその内では離れておけばよかったと考えていることだろう。
俺にできることはもしまた似たようなことがあった場合にはさっさと離れること、いまはできないが次に活かすからな。
ちなみに母だけは一人楽しそうに「はは、ありがとう」と言って歩いていった。
「すまん……」
「別に謝らなくていいよ」
「だって菓子が食べたくて出てきていたんだろ? だったらほら、早く帰った方がいい」
「気にしなくていいって、それよりどうせならどこかにいこうよ――あ、連れていってあげる」
これは……そうか、最初の作戦は継続中ということか。
あとはいまなら俺といれば貫一も自然と現れるキャンペーン中みたいなものでそれを期待しているのかもしれない。
連絡先は交換できているからなんならいまから呼んで来てもらうのもありだが……どうする?
「待った、今日はいいから」
「よ、よくわかったな?」
「うん、とにかく移動しよう」
数分後、俺達はこじんまりとしている喫茶店にいた。
チェーン店とは違う入りづらい雰囲気がある、そういうのもあってこれはありがたいことだった。
何故なら自分だけだったら絶対に入ろうとは思わないからだ。
「俺はオムライスにするけど一色はどうする?」
「私はサンドイッチとオレンジジュースかな」
ささっと注文を済ませて目の前の彼女に意識を向ける。
これはあれか、貫一に気に入られたいそれもあるし彼女自身が世話を焼くのが好きというところか。
だって本当に貫一に気に入られたいためなら本人がいないところで頑張ってもあまり意味はない、なんなら自分から止めてきているぐらいだからな。
当然、じっと見ていれば気が付いて「どうしたの?」と聞かれてしまったものの、なんでもないと躱した。
客が他にいなかったのもあって結構早いタイミングで料理も運ばれてきたからまた気まずい時間になることはなかった。
「はは、実は今日寝坊しちゃって朝ご飯を食べていなかったからすっごく美味しく感じたよ」
「自分で作らなければいけないのか?」
「ううん、あ、作るときもあるけど〇〇時〇〇分までに起きてこなかったらなくなるルールなんだよね、捨てているわけじゃなくてお母さんかお父さんが食べるというだけなんだけどさ」
捨てているよりは遥かにいいが少しだけでも待てるのなら残しておいてやればいいのにと思わずにはいられない。
変なルールがある家ではなくてよかった、彼女には申し訳ないがそうとしか、なあ?
「なんというか……すごい家族だな」
「逆もあるからね、被害者面はできないよ」
なるほどっ、積極的に動けるのはそういうところからもきているのかもしれない。
ゆっくりしていたら取り上げられてしまうからそうならないように動いているのだ、つまり余計なことをしてしまったことになるので反省する。
「ここね、他のお友達にも教えていないお気に入りのお店なんだ。あ、これは優しくしてくれたことに対するお礼だからね?」
「そうか、教えてもらえて嬉しいよ」
学習して余計なことを言ったりはしない。
値段はそれなりにする場所でも教えてもらえてよかったことには変わらないため、内でもう一度礼を言っておいた。
食べ終えたら長居していても迷惑にしかならないから会計を済ませて退店、直前まで温かい場所にいた分、その差にやられて家にいくことになった、なんか母のことも知りたいみたいで一色も付いてきた。
「鉄、一時間も経過していないよ」
「こ、細かいことは見逃してくれ、それよりちょっと一色のこと頼むぞ」
急に掃除がしたくなったから仕方がない、こういうときはすぐに動かないと悪影響が出るからさっさとやるのだ。
「は? え、いや、そんなの冗談でしょ?」
「顔を見てくれよ」
「だから……うっ」
「だろ? だから少し頼む」
道具を持っていざ戦場へ、そこまではよかった。
問題だったのは最初からやりすぎてやりがいがなかったことだ、だから結局すぐに一階に戻ることになった。
コミュニケーション能力に自信があるのか二人はあっという間に仲がいい二人みたいに盛り上がっていた。
母的には急に娘ができたみたいで嬉しいのかもしれない……? これだけは貫一も俺もなにもできないから彼女には感謝だ。
「ただいま」
「いぎっ!?」
ああ、だからこそこの露骨なそれには残念だった。
いつも通りでいいのに変に意識をするからそういうことになる。
「ん? お、一色がいる」
「お、お邪魔しています」
「おう、ちょっと着替えてくる」
「は、はい、ふぅ……」
家に連れてきた俺も悪いか。
彼が誘って彼女が受け入れたのであれば全く問題はないが今日は彼以外の理由でここに来ていたわけだからな。
はっきりと言うことでやりやすくしたのに自分の行動一つで誤解なんかはされたくないだろうから――それならもっと冷静に対応をするべきだったが。
「なんか俺の部屋が奇麗になっていたが母ちゃんか?」
「そうだよ、鉄はまだ勝手にやったりできないでしょ」
「鉄でも父ちゃんでも自由にしてくれていいがな、物がちゃんと残ったままならありがたい」
「それより広子ちゃんのこと頼んだよ」
「おう」
おお、母は上手いな。
母が去ってからは慌てることもなくなったしよくわからないところが増えた一色だった。「学校近くにある向こうの県でもあっただろうチェーン店はこれで最後だな」
「あの、どうしてチェーン店縛りなんですか?」
よく聞いてくれた。
「それはいきたくなるかもしれないからだ、それだけでしかない」
「は、はあ、天田君はそういうお店よりもこの場所らしい場所を教えてもらいたいはずなんですけど……」
「平日の放課後じゃ足りない、そもそも一色がいる時点で長く見て回るつもりはなかったよ」
「え、すみません」
「謝らなくていい、これは俺がそういうつもりでいるというだけの話だ」
現時点で暗いから彼が気にするのもわかる。
彼が送るという話をしたら嬉々として家を教えたから知ることになってしまった、これはずるではないだろうか。
そもそも彼女が興味を持っているのは彼にだけ、だが、最初に変な風にしてしまったから仲良くしようとするときに邪魔にならないかが気になる。
「一色、本当は鉄と仲良くするつもりがないんだろ」
「なんでだ?」
あまりに急で、俺と一色からすれば大事な話だ。
ここで上手くコントロールしておきたい、ただ、ほいほいと喋りたくもない。
本人から許可を貰えない限りはやっぱりな。
「勘だ」
「本当のところはわからないよ」
「そうか」
これは彼が一色と過ごしていく中で本当は……となってくれればよかった。
だからこの選択は間違っていないと思う、勝手に言えばこちらに来ることもなくなる。
上手にやれる人間なら勝手に進んだそれにもすぐに対応をして、いや、寧ろ利用していくだろうが俺はまだまだ一色のことを知らないから仕方がない。
「ハンバーガーでも食べていかないか?」
「また怒られるぞ……」
「はは、冗談だ」
大人しく家に帰って母作のご飯を食べた。
風呂にも入って早く寝て、引っ越してからも続けている早く起きるを繰り返している。
「早いね」
「なにか手伝えることはないか?」
「それならゆっくりしていな、それだけがしてもらいたいことだ」
父だって似たようなことしか言ってきていなかったから本当に似ている。
それでも少し拗ねていた、なんにもできないのはただただ辛いだけだ。
貫一が起きて下りてもなにか出すことはしなかったが。
「じゃ、また休み時間にな」
「おう」
学校に着いても内がすっきりしたりはしない。
これはやらなければいけないことだからだ、誰かに頼まれて頑張っているわけではないからずっとこうだ。
「おはよう、ちょっといい?」
「おう」
なにを言われるのか。
ただ、ここなら責められるぐらいの方がすっきりできる気がした。
だから期待をして待っていると「今度は土曜日か日曜日に三人で遊びにいこうよ」と言われてそっちかとなった。
いや当たり前か、だって別にこちらのことに興味があるわけではない。
「それなら俺が――」
「誘うのは自分でやるからいい、なんでも天田君にやってもらおうとはしないよ」
「そ、そうか? なら困ったときは頼ってくれ」
「うん、じゃあ今日も頑張ろう」
うーむ、そうやってできるのなら最初のところで失敗をしたことになるのではないだろうか。
暫くの間は俺が頼めば付き合ってくれるだろうがいつまでも来てくれるとは考えていない。
そうなったとき俺は間違いなくただの邪魔な存在になるからいまの内になんとかしておきたい。
「一色、貫一先輩にはっきりと興味があるって言わないか?」
「え、誘うのとそれはでレベルが違うでしょ……」
今後ここ! というところで邪魔が入るよりはいいだろう。
誰だって自分のせいで困りたくなんかはない、だから頑張っておくのは大事だ。
自分のためだ、それなら受け入れやすいのではないだろうか。
「でもさ、いまのままだと伝わらないというかさ」
「天田君に興味があると言ったわけではないんだよ?」
「それでも本当に仲良くしたいならさ」
仲良くもないのにずかずか踏み込まれてうざいだろうが我慢をしてもらうしかない。
「……わかったよ、だけどそのときはあなたにも付いてきてもらうからね」
「おう、約束だ」
行動力の塊なのか次の時間には言いにいくことにしたみたいだった。
どういう反応をするのか気になっていた俺だったが、あくまで出会ったときとそれからの貫一と変わらない。
「はは、俺の勘は結構当たるみたいだな」
「それより貫一的にどうなんだ?」
「どうなんだと言われても一色のことはまだ全く知らないからな、これから次第だよ」
自分だって似たようなことを聞かれて似たようなことを返したのにすっきりしなかった、自分勝手だ。
とはいえ、一色が自分からどんどんといけるようになったのはいいことだと言える。
自然と来てくれるから一緒に過ごしやすい、それは一ミリだけでも役に立てた結果ではないだろうか。
「切り替える能力がすごいな」
自分のせいでつまらない結果にはしたくないのだろう、いちいちこちらに来ることもなく表面上だけなら仲のいい男女の先輩と後輩に見えていた。
「あれ、貫一はどこにいった?」
「さっき遊びにいったよ」
「はぁ、じっとできない子だね。じゃあ鉄でいいや、買い物にいくから手伝ってよ」
「任せろっ」
なんと言われてもいい、母のためにも動ければそれでいいのだ。
スーパーの場所はチェーン店を紹介してもらっていたときにわかったから先導していた。
「じゃ、適当に見ていればいいから」
「いや、一緒に見て回るよ」
「そう? 好きにしてくれればいいけどね」
いきなり高級品ばかりを買う家庭になったとかでもないしまあいつも通りのそれだ。
向こうで何回もいった経験があるから新鮮味というのは――意外とある、何故ならこのスーパーではなかったからだ。
これも時間が経過すれば当たり前になって変わっていくのだろうがいまが面白ければそれでいい、付いてきてよかった。
「荷物は全部持つ、母さんだってそのつもりで誘ってきたんだろ?」
「んー別にそうしてほしくて鉄に来てもらったわけじゃないけどね」
「なんか装っていないか? 家族になったんだからそのまま出してくれていいんだけど」
そりゃいきなり貫一が相手のときと同じぐらいでやってくれと言われても難しいとはわかっている、それでも頑張ってもらうしかないのだ。
また離婚をしなければずっとこのままだからだ、俺は家族とぐらいは仲良くしていきたいからもちろん努力をする、だからここもしつこくいかせてもらう。
「それはあんたでしょ……と言いたいところだけどあの人から聞いていた分と合わせてもあんた通りとしか言えないのが……」
「家族に隠したりしないよ」
が、最強メンタルではないから二回続けたところで黙られて無理になった。
少しの間気まずい時間に、こういうときは貫一にいてもらいたいものだ。
「あ、天田君」
「よう、なにをしに……って菓子か」
「うん、コンビニで買うのは楽だけどスーパーにいくようにしているんだ」
彼女はそのまま隣にいた母にも挨拶をして別れ……なかった。
所謂陽キャってやつだ、流石の俺でも相手の母がいるときに残ったりはできないぞ……。
「残念なのは遊びにいってくると出ていった貫の遊び相手が一色じゃなかったことだ」
休日なら先輩はいらないだろう。
「流石にまだ二人きりで遊べるような仲じゃないよ」
「変な遠慮をするなよ、誘いたければどんどん誘えばいいんだ」
彼女が帰ってからも嫌な顔なんかしていなかったからこれまでの異性とは違う可能性がある。
どちらにしてももっと時間を重ねないとなにも変わらないからその気があるなら遠慮なんかしている場合ではなかった。
「それより天田君……」
「ん?」
一瞬、母の方を見てから黙ったから察することができた。
「母さん、この子は貫一の友達なんだ」
「鉄の、じゃないの?」
「おう、だけど一色はこっちにも優しくしてくれているから助かっているぞ。これで少しは安心できただろ?」
一人だけでも話せる存在がいると教えたら父も喜んでくれた。
急にできた血が繋がっていない存在とはいっても気になるものだろう、一ミリずつでも少しずつ変えていければいい。
「いや、友達じゃないなら安心はできないよ、そういうところもあの人から聞いていた通りだね」
「友達を一人作るという目標は卒業までに達成できればいいわけだからな、ゆっくりやっていくよ」
「わかった、じゃあこれはこっちに任せてその子と遊びにいってきな」
なにもわかってくれていないぞ……。
「それとこれとは別だ、それにいま急がないと言ったばかり――」
「一時間だけでもいいから遊んでから帰ってきな。この子をよろしくね」
「は、はい」
すまん一色、興味もないのに変なことに巻き込んでしまって。
返事をしているその内では離れておけばよかったと考えていることだろう。
俺にできることはもしまた似たようなことがあった場合にはさっさと離れること、いまはできないが次に活かすからな。
ちなみに母だけは一人楽しそうに「はは、ありがとう」と言って歩いていった。
「すまん……」
「別に謝らなくていいよ」
「だって菓子が食べたくて出てきていたんだろ? だったらほら、早く帰った方がいい」
「気にしなくていいって、それよりどうせならどこかにいこうよ――あ、連れていってあげる」
これは……そうか、最初の作戦は継続中ということか。
あとはいまなら俺といれば貫一も自然と現れるキャンペーン中みたいなものでそれを期待しているのかもしれない。
連絡先は交換できているからなんならいまから呼んで来てもらうのもありだが……どうする?
「待った、今日はいいから」
「よ、よくわかったな?」
「うん、とにかく移動しよう」
数分後、俺達はこじんまりとしている喫茶店にいた。
チェーン店とは違う入りづらい雰囲気がある、そういうのもあってこれはありがたいことだった。
何故なら自分だけだったら絶対に入ろうとは思わないからだ。
「俺はオムライスにするけど一色はどうする?」
「私はサンドイッチとオレンジジュースかな」
ささっと注文を済ませて目の前の彼女に意識を向ける。
これはあれか、貫一に気に入られたいそれもあるし彼女自身が世話を焼くのが好きというところか。
だって本当に貫一に気に入られたいためなら本人がいないところで頑張ってもあまり意味はない、なんなら自分から止めてきているぐらいだからな。
当然、じっと見ていれば気が付いて「どうしたの?」と聞かれてしまったものの、なんでもないと躱した。
客が他にいなかったのもあって結構早いタイミングで料理も運ばれてきたからまた気まずい時間になることはなかった。
「はは、実は今日寝坊しちゃって朝ご飯を食べていなかったからすっごく美味しく感じたよ」
「自分で作らなければいけないのか?」
「ううん、あ、作るときもあるけど〇〇時〇〇分までに起きてこなかったらなくなるルールなんだよね、捨てているわけじゃなくてお母さんかお父さんが食べるというだけなんだけどさ」
捨てているよりは遥かにいいが少しだけでも待てるのなら残しておいてやればいいのにと思わずにはいられない。
変なルールがある家ではなくてよかった、彼女には申し訳ないがそうとしか、なあ?
「なんというか……すごい家族だな」
「逆もあるからね、被害者面はできないよ」
なるほどっ、積極的に動けるのはそういうところからもきているのかもしれない。
ゆっくりしていたら取り上げられてしまうからそうならないように動いているのだ、つまり余計なことをしてしまったことになるので反省する。
「ここね、他のお友達にも教えていないお気に入りのお店なんだ。あ、これは優しくしてくれたことに対するお礼だからね?」
「そうか、教えてもらえて嬉しいよ」
学習して余計なことを言ったりはしない。
値段はそれなりにする場所でも教えてもらえてよかったことには変わらないため、内でもう一度礼を言っておいた。
食べ終えたら長居していても迷惑にしかならないから会計を済ませて退店、直前まで温かい場所にいた分、その差にやられて家にいくことになった、なんか母のことも知りたいみたいで一色も付いてきた。
「鉄、一時間も経過していないよ」
「こ、細かいことは見逃してくれ、それよりちょっと一色のこと頼むぞ」
急に掃除がしたくなったから仕方がない、こういうときはすぐに動かないと悪影響が出るからさっさとやるのだ。
「は? え、いや、そんなの冗談でしょ?」
「顔を見てくれよ」
「だから……うっ」
「だろ? だから少し頼む」
道具を持っていざ戦場へ、そこまではよかった。
問題だったのは最初からやりすぎてやりがいがなかったことだ、だから結局すぐに一階に戻ることになった。
コミュニケーション能力に自信があるのか二人はあっという間に仲がいい二人みたいに盛り上がっていた。
母的には急に娘ができたみたいで嬉しいのかもしれない……? これだけは貫一も俺もなにもできないから彼女には感謝だ。
「ただいま」
「いぎっ!?」
ああ、だからこそこの露骨なそれには残念だった。
いつも通りでいいのに変に意識をするからそういうことになる。
「ん? お、一色がいる」
「お、お邪魔しています」
「おう、ちょっと着替えてくる」
「は、はい、ふぅ……」
家に連れてきた俺も悪いか。
彼が誘って彼女が受け入れたのであれば全く問題はないが今日は彼以外の理由でここに来ていたわけだからな。
はっきりと言うことでやりやすくしたのに自分の行動一つで誤解なんかはされたくないだろうから――それならもっと冷静に対応をするべきだったが。
「なんか俺の部屋が奇麗になっていたが母ちゃんか?」
「そうだよ、鉄はまだ勝手にやったりできないでしょ」
「鉄でも父ちゃんでも自由にしてくれていいがな、物がちゃんと残ったままならありがたい」
「それより広子ちゃんのこと頼んだよ」
「おう」
おお、母は上手いな。
母が去ってからは慌てることもなくなったしよくわからないところが増えた一色だった。




