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第8話 推し活の護衛

時間は16時ジャスト。場所はシヴィックセンター前にいる。

折角時間ぴったりに来てやったのにミラはまだ来ない。連絡だけは1時間前に入っていた少し遅れそう…と


5分後ようやく合流。

ミラを見た俺の第一声は「舐めてんのか!?お前ぇ!!!」……だった。


「舐めてんのか!お前ぇ!!!」


「ふふふ。可愛いでしょう?……あと、舐めてなんかないわ!本気よ!!! ルカ様に会う為に、精一杯お洒落してきたんだから!」


そういってミラはくるっと一周回った。へそ上ぐらいの長さのようわからないロックなT-シャツに、オフショルな肩がガッツリ見えている革ジャケット、黒のミニスカ、網タイツ、厚底のヒール風ブーツにチェーン付きのバックと、太ももとか腰に巻いてあるよくわからないベルトとチェーン……至る所にベルトが巻いてあるのもよくわからないし、メインとして黒系なのに、こんなにも目立ちすぎるファッションなのもよくわからない。革ジャンの肩が空いてるのもよくわからない……防寒性能ナシに等しいじゃないか!!!


「……とりあえず、その服脱げ。着替えてこい」


「イヤよ! なんてこと言うの!!! 最低!このT-シャツなんてカットオフして自分でリメイクしたんだから!!!」


……最低っておま…酷くないか?

俺は咄嗟にミラの顔を見る。ミラは耳元まで真っ赤になってプルプルと震えていた。

ああ。違うな…ミラの様子を見てわかった。酷いのは俺の方か……


「ごめん…そう言うんじゃない。俺は別にお前のセンスを否定したかったわけじゃないんだ。えっと…ミラさん?ナショナル・シティの治安の悪さは知ってますよね?」


俺は、弁解しつつ恐る恐る質問する。

この服装は…その、露出しすぎだと思うし、何より目立つから。上手く言えないけれど、良くない気がするんだ。

まだ、俺の中でよくわからないままのものを、よくわからないままミラにぶつけた。


「もちろん! じゃなきゃあなたに護衛なんて頼まないわ!」


「その服……すごい目立つし可愛いからさ、どうぞ私を攫って下さいと言ってるようなものなんじゃないか?」


「…だーかーら! あなたに護衛なんて頼まないわ!!!それに可愛いなら良いじゃない!」


俺は自然にため息が出た。


「お前が大丈夫でも、世の中はそうじゃねぇんだよ……」


「でも、早起きして支度頑張ったの! 可愛い姿で会いたいの!!」


俺の眉間にシワが寄るのがわかる。


「……何かあっても、知らないからな」


「でも、何かが起きないようにするのがエイデン君の今日の役目でしょ?奨学金の情報…どうでも良くなっちゃったの?」


どうでも良いわけないじゃないか。そんな事重々承知している。でも、不安なんだよ……それを、真っ向から提示してくるのは正直ズルいと思うぞ?

俺は、言語化できない不安を抱えながら、ミラの圧に圧倒されライブハウスに向かうことにした。途中、ミラに連れられメイク用品店と古着店に立ち寄ったが、俺は気が気じゃなかった。


_______________


「じゃぁ、21時頃にライブが終わる予定だから、10分前ぐらいにはここで待っていてくれると嬉しいわ!」


やっと辿り着いたライブ会場。しかし、会場前には数人しか人が居なかった。ミラのバックに付いている幽霊ウサギみたいなストラップをつけている人が何人かいる為、ちょっとした団体感を感じる。それにしても人…少なくないか?


「なぁ。本当に、ここであってるのか?…その、人が少ないように感じるんだが……」


「はぁ!??? 本当失礼ね! いい?確かにチャンネル登録者数100人ぐらいの規模のネット上がりのバンドだけれど、The Hollow Echo《ホロウ・エコー》のメンバー4人ともすっごくカッコいいし魅力的だし、でも、ちょっと可愛いところもあって最高に良いバンドなんだから!!曲も歌詞の言葉遊びが上手いしストーリーとして面白いし、ただただ聞いてて楽しいし…でも、楽しさだけじゃなくて掴めない何かを感じてすっごくエモいんだから!!!リーダーのルカ様とか見かけによらず、すっごい熱いところとか音楽に一途なところとかも本当最高なの!今は確かにファンが少ないかもしれないけれど、いつかきっと大きくなるバンドなんだから……これが、初ライブなんだから!!!本当、エイデン君失礼極まりないわ!」


ボロクソ言うやん…お前、俺に対してボロクソ言うやん…

まぁ、登録者数100人程度でライブに踏み切るわけだし、すごいバンドだってのはわかった。全然知らないバンドだけれど。まぁ、興味ないしいいや。


「よくわからなかったけど。まぁ、初ライブなんだろ?楽しんで来いよ!20時45分頃にはここら辺にいるからさ。終わったらメッセージ入れてくれ」


ミラは無言でスマホを操作する。俺のスマホにメッセージが届いた。そこにはThe Hollow Echo《ホロウ・エコー》の曲リンクが。どうやら聞けって事らしい。


「……待ち時間に曲、聞いておくからさ。そう不貞腐れんなよ」


「不貞腐れてなんかいるわけないじゃない!!!もういい。ライブ行ってくる!!………終わったら連絡するから、帰りもちゃんとしなさいよね!?」


「はいはい。いってらっしゃい」


そう言って、ミラが扉の奥に消えて行くまで俺は見送った。

1時間ちょっと時間あるし、家に帰るには少し時間が足りないから、俺はバイト先で暇を潰してくることにした。

バイト先、このライブ会場から徒歩15分ぐらいだし、ご飯食べて、店長や常連さんと時間潰したりしたらまぁいい時間になるだろう…。


俺は、俺の知る中で1番タコスが旨くて安いメキシカンバー&レストラン「El Cielo Rojo|《赤い空》」へ向かった。


ライブ会場裏手の駐車場でイカつい雰囲気の奴らがたむろしているのが些か気になったが、まぁ。このナショナルシティではよく見る光景だから、そう気にしないことにした。


_______________


「………流石に、遅くないか?」


20時46分頃俺は、ライブハウス前に到着しミラにメッセージを送った。

その5分後ぐらいにミラから、ライブ終わった。グッズ買うからもう少し待ってて…と

そこから、15分。何の連絡もない。目の前の入り口からゾロゾロ人が出てくる…って言っても20人ぐらいだ。ミラと別れた開場10分前ぐらいの時間でも数人しか人が居なかったから、30人規模のライブだろうか。

……そう考えたら遅すぎるぞ!?


俺は心配になって、ライブ会場の方へ向かおうとした。

そこで、ついさっき、貧相な風貌の男がチラッ。チラッ。とライブ会場の裏手を見ていた事を思い出した。ライブ前にイカつい雰囲気の男たちも裏手の駐車場でたむろしていたのも思い出す。


そんなまさか…とは思うが。俺は、嫌な予感がして表の人の通りも多い比較的安全なここを離れ、ライブ会場裏口の方へ向かった。


身を屈めつつ、駐車場とライブ会場裏口がギリギリ見えるところで耳を澄まし、様子を伺う。うわぁあ!!!自業自得だ馬鹿野郎!!!


……案の定ミラだ。ミラが数人の男共に囲まれていた。ヤバい…どうするんだよこの状況!!!


この距離からじゃぁ顔はよく見えなかったし、1人の男に顔元をガッツリ押さえられている為、何を言っているのかさっぱりわからないが、必死に抵抗している姿はわかる。あと、あの服装はどう考えてもミラだ。肩空き革ジャンが半分脱げ掛けていて、もう見てられない。不安と恐怖でどうしようもなくならないように、俺は周囲を見渡しどうにか考えることにした。


男の数は、全部で5人?運転席に1人と、ミラを抑える男が2人、周辺を見張る奴が2人…目に見えるだけでこれだけの人数だ。それに、抵抗しつつもずるずると車の方に引きづられて行っている。これ、ヤバくない?正直マズい状態…だよな。どうにかして男たちの注意を引いてミラを助け出さないと!!!


どうする?どうすればいい???

俺は必死に考える。俺が出て行ったところで、体格が大きいやつが居るし、この人数じゃ勝ち目がない…なにか、投げて注意を引くか?いやでも、投げるものが見当たらない。それに、そんなの探す時間もなさそうだ。どうする?どう注意を引く??何か音が出るものとか、設置するか?


あ。そうだ!


そう思い俺は駆け出した。向かうはライブ会場。

一か八か。俺は間に合ってくれと願いながら駆け出した。お願い。本当頼むからもう少し待っててくれミラ!

俺は、ただ。めいいっぱい走った。あんな奴でも護衛お願いされている訳だし、それに俺は…もう、これ以上。何かを失いたくはなかったのかもしれない。

次回更新:2025年5月4日 15時…いや16時頃かなぁ。


そういえばお嬢様、そろそろ私、この物語の主人公エイデン・カーターのイラスト描き終えるので、明日ぐらいには活動報告の方に載せられるかと思います。

絵がない方が好みのお嬢様もいらっしゃるかもしれませんが、一応報告させて頂きたく……はい。そうです。言いたかったから言ったのです。「よかったら見て!」…と。ね?

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― 新着の感想 ―
ノア・クレインさんは、この裏で黙々と問題集作ってると思ったら泣けてくるぜ……
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