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第46話 清掃報告

「カーター君!?本当に、窓拭きまで終わったの???」


「はい!!!」


そう俺はバイトリーダーに答える。

モップ掛け2巡したし、足跡の痕跡確認もしたし、窓も拭いた。道具を片付けて戻ろうとしたタイミングで出社したばかりのバイトリーダーにすれ違ったのだ。


確認のために今リーダーと一緒に廊下を駆け足で進む。

目指すは受付や会議室のパブリックエリア…俺がさっき掃除したところだ。



「……凄いな! 絶対終わらないと思ってお願いしたのに……もしかして君、清掃バイト経験者?」


非常通路を抜けパブリックエリアへと繋がる扉を開けた途端ツヤツヤになった廊下を見て、そうバイトリーダーは答えたのだ。


俺は今、聴き捨てならない言葉を聞いた気がした。


「あの……絶対終わらないと思ったタスクを俺に振ったのですか???」


「はい。勤務態度、進め方、手際の良さなどを見るためにお願いしました。一般的にみれば2時間半で5フロア分のモップ掛けと窓拭きは終わらないでしょう。よくやりきりましたね……ちゃんと見ていっても良いですか?」


「え、あ…はい!」


俺の返事を聞くや否や、バイトリーダーのおじちゃんはパブリックエリアへ足を踏み入れた。


踏み入れた途端。足が前へ前へと、ひとりでに滑り出す。


咄嗟におじちゃんは扉の緣を掴んだ。


扉が閉じておじちゃんの手が挟まれないように俺は、後ろに回って扉を押さえた。


「大丈夫ですか?」


おじちゃんを引き上げる。パッと見40越えてそうだし…足腰弱いのかな?


俺はまじまじとおじちゃんを見る。

おじちゃんも俺を見てた。


「…………カーター君? 洗剤どのくらいいれました?」


「キャップ1杯分」


「キャップ1杯分!?」


「150Lで30mlって書かれてたので…キャップ1杯分の50ml入れて洗浄液を作りました」


脳内でザミエルの笑い声が聞こえる。

おじちゃんは目を見開き驚いた表情を見せる。

俺は不安になってくる。


え…でも1巡目キャップ半分ぐらいじゃ綺麗にならなかったし……

それに大は小を兼ねるって言うだろ?

多少多い方が良いんじゃないのか?


「……カーター君? 洗剤ボトルの裏にスポイト付いてませんでしたか?」


「えっ?……あっ、ああ。付いてましたね。あれ何に使うんですか?」


「………!!」


バイトリーダーが絶句した表情を見せる。

純粋に疑問をぶつけただけなのにそんな顔しないでくれ…

ザミエルはまだ笑っている。


もう無理…やだコイツら。

俺を不安で押し潰してそんなに楽しいのかよ…


俺の背中から汗が吹き出す。


「カーター君? 壁にしっかりと捕まりながらゆっくり片足だけ廊下へ踏み出してみて下さい」


意味のわからない指示を受けた。

意図を考えたくとも脳内には笑い声しか聞こえない。いつまで笑ってるんだよザミエル……俺、こんなに不安なのに。


指示通り壁に捕まりながらゆっくりと廊下に足を踏み出す……あ、待って?力が上手く伝わらない。踵が変な方向くんだけど……え、待って?なんで滑るの?


俺、ちゃんと綺麗にしたのに……


「床、滑りませんか?」


「……ものすごく滑ります。なんでですか?俺、ちゃんと掃除したのに……」


「2mlで足りるものを小僧は50ml入れたからだ」


(え???)


ザミエルが笑いながら告げる。俺は困惑する。


「カーター君、洗剤の入れすぎです。君がバケツに入れた水の量にもよりますが…通常の20倍ぐらいは入れてます」


「正確には、約25倍だがな……」


「え」


バイトリーダーとザミエルの同時攻撃が始まる。


「「なんで掃除中に気づかなかったん」」だ?」ですか?」


うあああああああああああああああああああああ!!!!


俺は大ダメージを受けた。


現実と脳内でハモるのやめてくれ!!!!


死んじゃう。俺死んじゃう!!!

そんなんわかんねぇもん…掃除中もいっぱいいっぱいでそこまで頭回らなかったもん……


てか気付いたならザミエル教えろよ。


もう泣きそうになる。初バイトでなにやってんだろう…俺。。。



「この床…_」どうすれば……いい……・・・

恐る恐る伺い立てようとしたら、廊下を貫くほどの明るい声に射抜かれた。



「あ!いたいたぁ! いちごみるく君!!!床めっちゃ綺麗になってるけど床めっちゃヤバいよ!」


俺達が向かおうとしたパブリックエリアの先にごみ袋の入ったカートを押しながら近づいてくるリリさんが見えた。


30m先ぐらいから普通に歩いて来てる…なんで?


「え。待ってラッキー!バイトリーダーもいるじゃん!!!バッテン無いゴミ箱はスルーでおけ?」


リリさんが何気ない調子で質問する。

真っ青な顔のバイトリーダーは数秒間顔を引き攣らせて口とか頬とか眉とかをピクピクさせてからリリさんに向けて大きな声を放った。


理性により感情から主導権を取り戻したみたいで、すげぇ大人っぽかった。


「メイ君!床滑るのでその場所から動かないで下さい!!!」


うん? リリさん普通に歩いてるし、バイトリーダーも普通なこと言ってる……

あれ。じゃぁ実は床滑るとか25倍の希釈とかって夢なんじゃ…???

ていうかリリさんの苗字メイなのか……リリ・メイさんってこと???語呂良すぎね???


「…はぁ、現実見ろよ小僧」


「コロコロロックかけてる」


「「...なるほど」」


今度は俺とバイトリーダーがハモった。


「とりあえず無理せずその場にいるか、ゆっくりこちらまで歩いて来て下さい!転ばないように気をつけて!!


カーター君は、水だけを入れたバケツとモップを3セットほど用意してきて下さい。床の洗剤を洗い流します。人手は多い方がいいので同じ清掃服来た人がいたら捕まえてきて下さい。この時間から2人増えるんです。あとでちゃんと紹介します。


私は、これからセキュリティーエリアを案内してくれる予定だった警察官の方にごめんなさいしてきます。ちなみにカーター君? モップがけはどのエリアを行いましたか?」


「受付、廊下、会議室1、2と控え室です!」


「・・・こんな状況でなければ本当に5フロアやりきったんですね!と純粋に褒めれるのに……」


目を細めて残念そうな顔をされた。

ちょっとその呆れたような苦笑いマジでやめてくれ…俺もおじちゃんも、いたたまれないじゃないか!


「ごめんなさい。。。」


「いや、いいんです。ちゃんと説明しなかった私も悪かったので」




このミスを取り戻すために俺は急いでバケツとモップ用意した。

同じ清掃服を着た人は見かけなかった。

3往復目に、バイトリーダーとリリさんが先ほどまで俺たちが居た扉の前で話してたため聞き耳立てた。


バッテン印がついてない場所にゴミ箱が何個かあったらしい。

その場所のゴミ箱をどうしたか?とか他に気づいたことはなかったか?とか聞いていた。


こいつ、俺にも時間内で終わるはずのないタスク振りやがったし何か見られてたり試されてたりするのか???


俺はちょっと疑問に思った。

でもそれより、ザミエルさんの計算が早い方の疑問が強かった。

だって、俺の入れた水の量わかったってことだろ???


でもザミエルさん、水嫌いを公言してるだけあって俺が水を汲んでいる時運んでいる時…ていうか水近くにある時、すげぇ静かなんだよ。


マジで存在を感じないぐらい静かでちょっと不安になる。


だから聞くタイミングなかった。質問してもスルーするしさ。

ま。いっか。覚えてたら聞こ。


「初日から気合い入っちゃったんだね、いちごみるく君」ってギャルからの煽りを受けながら、俺はまた再度モップを手にして床を拭き上げていった。


今度は1人じゃないのに、1人の時より10倍大変で、1人の時より時間もかかりそうだった。ミスって怖ぇや。





次回予告:2025年10月24日(金) 18時頃更新目標!


ねねねねね。聞いて下さいてか見て下さいお嬢様!

「次回予告目標より2日も早く投稿できてます!!!!」


……いやはや何とは言いません。嘘です。褒めて欲しいです。ほめてぇぇぇぇぇぇぇええええ!!!

エイデンと同じぐらい私も頑張ったので褒めて下さいませお嬢様!!!!

(特に頑張ったところ:誰のセリフかわからない問題を生じさせない為の筋肉作り)


追記。

「【削除予定】外来語に弱いザミエルさん」は削除しました。

二次創作的立ち位置の物も読まれていて嬉しかったです。礼は返せてるでしょうか?……というか「ありがとう」の気持ちが伝われば何よりです。いつもありがと!お嬢様!!!次回更新もがんばりますb

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