第45話 これは労働環境でよく見る主体性の押し付け合いです
もう日も沈んで暗くなってきた時間帯なのに受付フロアにはたくさんの人がいた。
なるべく邪魔にならないように俺はモップを定期的に洗い絞りながら隅から順に洗浄液で塗り潰していった。
モップ用バケツから水を搾り取る際に、スクイーザーが「ガコン」と音を立てる。
人は多いが静かなため俺がペダルを踏んでスクイーザーを動かすたびに思った以上の音が響く。なんか悪いことしてる気分になってくる……。
嘘。めちゃくちゃ楽しい。やっぱここ遊園地だ。
「なぁ。ザミエル!!!あの受付にあるの無線機だよな!? カッケー!!」
「『Mon-Open 24 hours』だって!!なぁ!24時間営業ってすごくない!?すげぇよな!!!24時間営業はヤベェよ!!!ドラマとかみたいに夜勤警察官もいるのかな? すげぇ!!」
「警察印章!!警察印章!!ある!!!エンブレムかっけー!……え?待って???印刷物にも小さく載ってるマジか知らなかったすげぇ!!」
「今すれ違った人制服着てた!!やべぇ!!やっぱかっけぇ!!!」
「ねぇ。ちょっと待って?ちょっと待って???ねぇねぇ気づいた?ザミエル!!?警察官の制服の襟元にもAKって書かれてる!作業服のメーカー一緒じゃん!!じゃぁ今俺が着てるこのポロシャツも実質制服ってことじゃん!?え?嘘だ。ちょっと待って泣きそう……」
「ねぇねぇザミエ…」
「……お前。一回怒られた方がいいと思うぞ?」
「なんでさ!!! なんも悪いことしてないもん!俺!!!それに超小声だしお前の存在誰にも気づかれた素振りないからいいだろ!?」
「……。あと3分でこの場所を出るぞ」
「なんでさ!!受付楽しいじゃん!!!俺このフロア好きなんだけど!?」
「……はぁ。。。18時半から20時までの1時間半で床だけでなく窓の水拭きまで終わらせるとしたら19時頃には窓拭き入ってないと間に合わない。廊下、会議室、控え室とまだ部屋があること忘れたのか?」
「わ、すれた・・・わけじゃないけど。そんなに?」
「ああ。」
「……ねぇ。時間早くない?19時から窓拭きとか、窓拭きに1時間も必要???」
「ここにいる人間の数を考えたら、小僧の今やってるその……床の塵拭いはもう1巡する必要性がある…………………………小僧、足元を見ろ」
「え?……うわっ!本当だ。 全然綺麗になってないじゃん!!」
「2巡後、足跡の痕跡を確認した方がいいかもしれん。……加えてそれらの用具の片付けまで行うとしたら尚の事早い方がいい。時間に対しやることの方が多い」
「掃除で痕跡確認とか初めて聞いたww 案外ザミエルさんもノリノリなのね?」
「違う。お前のテンションが耳障りだからだ」
「あ…そう。……ごめんね?」
「気にするぐらいなら黙って労働に徹しろ」
ザミエルに注意され俺は大人しく掃除する。
なんでこの悪魔こんなに真面目なんだ。悪魔じゃなく猫さんだとしてもお犬様だとしてもちょっとおかしい。
あと、多分だけどバイトリーダーは時間内に掃除が終わるなんて思ってないと思うぞ!?モップ掛けならまだしも窓拭きまで1時間半って…現実的に考えて無謀だ!!終わる訳ないじゃないか!
だから、掃除終わってなくても怒られないってかそれが正常だと思うんだけどなぁ…
「…は?」
一言。そう声が轟く。
とても冷たい一言で俺は芯から冷たくなってくる。首筋から汗がぽたぽたと垂れ一層身体を冷やしてくる。
「……あ、あの。ザミエルさん?今、その。。。俺の心読んでました?」
「ああ。俺が言うのも何だが、最初から契約破棄しようとするその姿勢は………とても素晴らしいと思うぞ。……っはぁ……もう小僧の好きにすればいい」
悪魔に呆れられて皮肉を言われた。しかも、ため息めちゃくちゃ溜めてから吐かれた。
俺、このままじゃダメかもしれない。
「あのぉ…。ザミエル様???……その、タイムマネジメントしてくれたり…って・・・」
「は?」
「いや、だって今。小僧の好きにすれば良い…って」
「言ったが……お前の労働だろ。そのくらい自分でやれ」
「やだ!!無理。できない!!!わかんない!!!俺、このままじゃ全フロア掃除しきれる自信ない!!!契約完遂できない!!!」
脳内でぶつぶつと罵声のようなものが轟く。
「……ねぇ。今俺のこととんでもなく貶しました?」
「ああ。なぜこうも小僧はクソガキなんだと呆れたところだ。」
「クソガキ!?……え???比較的言葉が綺麗なザミエルさんがクソガキ????」
「うるさい。対価はなんだ」
「ていうか、ザミエルさんの言葉で俺。まともに掃除しようと思えたから今回対価いらなくない???ねぇ。ザミエルさん俺に責任とってよ」
「小僧……お前、どこまで知ってる???」
「なにが?」
「……なんでもない」
「じゃぁ。掃除終わったらオルティスソーダ飲ませてやるよ!」
「いらない。」
「え?」
「契約者自身の身体操作は対価としては十分だが…いらない。」
「あ。そう。。。じゃぁお前の好きなタイミングで両腕だけ15秒貸すよ」
「!?……両腕15秒あれば3人は殺せるが……本当にいいのか!?」
は???なんて???
「え???…あ。ちょっとまって??? ザミエルさん人を殺す予定がおありで???」
「ないが。今作られた。」
「まって!?まって???じゃぁ今のなし。」
「…はぁ。どうでもいいがもうそろそろ3分経つぞ。用具持って移動しろ」
「え???……あれ???最終的にタイムマネジメントしてくださったりするってことですか???ザミエル様」
「しない。小僧のくだらん労働時間を預かるようなことはしない。ま、俺の言うことを黙って聞いて実行し稼働し続けてくれるなら話は別だがな」
「稼働し続け!?」
なんてブラック企業も真っ青な漆黒なんだ!!!
「あー。。。っと。その、……ザミエル様の指示通りモップや雑巾を動かすことぐらいなら俺、できそうなんですが”稼働し続けてくれる”ってところがなんていうか…その、めちゃくちゃ怖いのでやめときます。ていうかお前ん中でタイムマネジメントって預かり表現なの??俺てっきり管理とかかと思った。時間預かり??」
「ほどあづかり」
「ごめん……なんだって???ねぇ。もう1回。もう1回聞かせて???」
「仕事しろ小僧!!」
こうして俺はザミエルに促されるまま、俺はなるべく静かに労働という名の地獄へ勤しんだ。
環境はこんなにも遊園地なのに…ああ、警察署だから俺の様な殺人犯からしたら地獄か。いやでも俺からしたら遊園地!!ここはワクワクとドキドキとキラキラが混ざったアミューズメントパーク!!!この認識だけは誰にも譲らせない!!!
えっと…そうそう。清掃って時間がシビアすぎるとありえないぐらい頭使うんだなぁ…と人生初の大発見をして地獄を見たんだ。
おでこの奥がヒリヒリして、まだ熱が抜け切らない。
警察署内全体で言えることなんだけど、ぱっと見綺麗だから清掃いらなくない???と思える状態だった。
でも、よくよく見たら汚れてるところとか、出しっぱなしの椅子とか、なんか溢した跡とか……生きてる人が居たんだなって思える痕跡が至る所にあってさ・・・
そう言ったものを無くして行くうちに、徐々にフロアは整っていったから……おいおいザミエルさん!?擬似人殺しを楽しんでませんか???とか思えてしまって怖かった。実際俺も楽しかったしな……くそっ!気のせいだと思いたい。
なんで、なんだかんだ言いつつ教えてくれるんだよ!!ちくしょう…ツンデレ猫さんめ!!!
タイムマネジメントはしてくれなかったから、俺の両腕で人間を3人殺す予定は無くなったんだと思う………思うけど!!!
清掃中に過った「あれ??俺、人の痕跡めちゃくちゃ消してるじゃん???」とか思ったこの思考を拭いきれなくて、
ザミエルはそっと俺に「小僧から見て6時の方角5m先」とか清掃甘いところ教えてくれたし、それで実際……時間もちゃんと守れたからさ、、、ザミエルさんに救われたとしか言いようが無い。嘘。踊らされたとも言える。
ちゃんと掃除できたのに。不思議だよな。
とりあえず脳がじんじんしてやばいんだが。頑張ったから誰か俺のこと褒めてくんねぇかな・・・
次回更新:2025年10月19日(日) 21頃目標!
期限苦しめな目標設定してる自覚あるけど、期限近づかないと上手く着手できない子なんですよ……毎回更新遅れ気味で申し訳ございません。いい方法があったら教えてください先輩方!
あと、エイデン好きのお嬢様!20話と比較すると「うっわ…!!」ってなると思いますよ。これ以上詳しく言えませんが…気になったのならどうぞ!
話変わります!!!!聞いてくださいお嬢様!!!
コメント!!!コメントがついてたんですよ1、2、3話!!!
更新してないのに読まれた形跡があって、コメントがついてるってもうこの時点で嬉しいのに、コメントの感じが私の心の中のマーケティングの外にいる人っぽかったんですよ!!!
もうこれお嬢様が布教してくれたってことですよね?????
お嬢様がリンク共有して「読んでーや。」ってしてくださったってことですよね????
もう嬉しすぎて全力でコメント返させていただきました。ありがとうございます!
その子と語って、共有して、楽しんで、これからも広めていってください。
嬉しすぎたんでちょっとした恩返しも兼ねて本編外の削除予定二次創作書いたんで次話にあげときます。
次の更新と共に消すか移動するかするので、それまでに届くこと願ってます!
ありがと。お嬢様!!!




