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第40話 黒のジャケット

クローゼットの中の引き戸の一番下、ぱっと見ただけでは見つけられない程の奥底に俺は1つの服を隠している。


しっかりとした生地のただの黒いジャケット。


……俺が殺した人から奪った服だ。


人を殺して、ただその凶器を隠して移動する為だけに奪ってしまった服だから早く処分しないと!…って頭の中ではわかっていたのに、なかなか行動に移せなかった。動く事などできなかったんだ……


向き合いたくなかった。人を殺した事実から。

思い出したくなかった。あの夜の冷たさを。


もう、2人殺しているしちょっと吹っ切れてしまったところはあるけれど、それからもできれば避け続けていたかった。

ああ。違うな。吹っ切れる事などできていない。罪を背負いきれなくて現実逃避を繰り返しているだけなんだ……あと5人殺す事でしか逃げ道は作れないはずなのに。


ジャケットを持つ手が震えうまく広げられない。

落とさぬまいと持つだけで精一杯で、俺が触れているところから不規則なシワが作られていく。綺麗なジャケットだったのに、俺のせいでこんなんになっていってもう見てられなくなる。


「なぁ…ザミエル。あのさ……答えてくれればでいいんだけれど、俺の前の持ち主はなんで路地裏で死んでたんだ? ガタイのいいあの血まみれの男性…前の契約者だったんだろ?」


恐る恐るずっと聞けなかった事を口に出す。

これは、何日もその疑問が頭から離れなくて、何度も喉元まで出掛かっていたものだった。

「お前が全身の血を破裂させて殺したんだろ?」という言葉までは…どうしても怖くて、外に出すことはできなかった。


「……対価は?」


そうザミエルは告げた。

俺が押し黙っていると「そうだな…お前の友人にノアって奴が居るだろ?そいつの魂とかでどうだ?」って言ってきやがった。


その後すぐ、俺の返答すら待たずに「…冗談だ」と掠れた声で言われた。

ムカついたけれど、そんな声色で言われたら許してしまいそうだった。


「……小僧の前の契約者は、会いたくない奴に会いに行こうとしていた」


「だから殺した」


「……いや、殺していたに近いかもしれないな」


「気づいた時には死んでいた…それほどまでに会いたくなかったのかも知れん」


曖昧にぽつりぽつりとザミエルが言葉を紡いでいく。

悪魔らしからぬ懺悔の様に聞こえて、俺は言葉を引き出したくなった。


もう少し聞きたかった。

……ただ、お前も俺と同じで”後悔していた”と思いたいだけなのかも知れない。




「お前がそんなに会いたくない奴って…どんな奴なんだ?」


「……埋めた奴だ」


「ん???」


「……その銃を、埋めた奴だ」


「……ッ」


(それは……すごくいい奴なのでは???)


急いで言葉を飲み込んだが、咄嗟に俺はそう思ってしまった。

だって考えても見て欲しい。必中必殺の7発撃ち切ったら願いが叶うなんて超強力ロマン武器なんてモノは埋めて人目につかないでいた方が明らかに平和じゃないか。


口には出していないが、一瞬過ぎったこの思考がザミエルに伝わってないか少し不安になる。


「……だから、命拾いしたな小僧。お前の提案が”掃除用具入れの中か消火栓の中”ではなく”土の中”とかだったら前の契約者みたいに今頃は血まみれだったかもしれん」


「ゴミ袋でも一応は包んでくれるのだろう?」と、ザミエルは皮肉気に笑って答えた。


俺は、全然笑えなかった。額から汗が滴り落ちる。体が冷えてきゅーってお腹が痛くなる。


パチパチと視界が数回ほど暗闇に包まれた後、体の不自由を解放するが為に振り絞った俺の知性がなんとか言葉を作り出した。


「あの……ザミエルさん???もしかして俺のこと、、、すごく脅してます???」


「ああ。」


「最初、ノアの事出したのも……その、俺を黙らせる為???」


「今日はやけに察しがいいな。小僧」


脳内に響き渡るカラッとした声がいつもより少し爽やかに感じて余計に気味が悪い。

ザミエルに褒められるなんてことも、なかなか無い事だから怖い。本当に怖い。腕寒いしお腹痛い。


ザミエルは「前契約者の情報」という契約者の大切な人の魂が対価レベルで必要な情報をタダで教えるから、あんま深掘りしてくんなと言ってるのである。

いや言ってはいない。でも俺はそう聞こえた。


知らぬ間に口止め料を払わされていたのだ。

この銃持って帰る時、茂みの中に隠しただけで土とか掛けなくて良かった…と俺は心から思った。


この恐ろしい悪魔から逃げる様に俺はジャケットに視線を戻した。

胸元のボタンの付いたポケットの中から「カサッ」っと小さな音が聞こえた。


俺は恐る恐るボタンを外し、ポケットの中に指を数本突っ込んでいく。

ザラっとした感触が指先に当たる。1枚の小さな名刺が出てきた。

走り書きで人名と思われる言葉が書いてあった。


「あー…う”ぃんぐ??? なぁ、これって__」


振り向きかけた俺に違和感が押し付けられる。

額に冷たいものがピッタリとくっつき、足元に長い長い影を落とす。

宙に浮いたマスケット銃が俺のこめかみに照準を合わせているのだ。


現実離れしたこの違和感は、どう考えてみても「死」であった。





次回更新:2025年9月21日(日) 22時頃更新予定!


お待たせしました。エイデンの心境考えたらこんな事2回も聞き返してごめんってなりました。

今後はこうならない様に気をつけます。本当、お嬢様をあまり待たせることのない様にしようと心から思いました。毎日お嬢様に会える様に頑張りたく思います。


・・・毎日会えて嬉しいのは、私だけじゃないですよね???

毎日すとれいに会えて嬉しいとお嬢様も思ってる……そう思い込んでも良いですよね???

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