第四 『人の村』
「その角と尻尾はどうにかできますか? 角は帽子を被るとかになりますけど……」
「隠せばいいのか? 出来るぞ」
彼女はゆっくりと目を閉じ、全身に力を込めた。薄く魔力が漂い始め、段々と尻尾と角の姿が消えていき、近くから見ても人間と大差のない姿になる。角度を変えて見ても角の生え際は見えない完璧なものだった。その技術に感心し、そっと頭に触れてみると固い何かが手のひらにぶつかる。さらによく見ると頭に触れる前にぶつかっている。もしやと思い尻尾の方にも手を伸ばす。
「ひゃっ……!」
可愛い声と共に手には何かを掴んでいる感触が伝わる。きめ細かいざらざらとした尻尾の感触が段々と真っすぐに固くなっていく。そして服に穴が開いている事に気づく。尻尾を外に出せるように開けた穴だが、今はただの綺麗に切り取られた変な穴だ。どうにか隠そうと穴の辺りをいじると頭を思いっきり叩かれる。
「変態牧師! お前は変態牧師だ!」
顔を真っ赤にして殴ってくるほど何か重罪を犯してしまったのかもしれない。尻尾からそっと手を離し、とりあえず謝罪をする。今後は気を付けなければならない。魔族の生態にはこれからも悩まされそうだ。
「服とか日用品も一緒に買うとしましょう。必要な物があったら言ってください」
「お、おう……」
まだ顔を赤くし、こちらを向いてくれない。手を後ろに組み、穴を隠しているのだろう。ぎこちなく、不自然に見られるかもしれないがそれでも村へと向かうしかない。
初めは何ともなかったが、村に近づくに連れて歩幅が段々と小さくなっていく。人間の村に行くのはやはり難しいのかもしれない。争っている種族の中に飛び込むのだから相当の勇気が必要だろう。
「やめときますか? 必要なものを言ってくれれば買ってきますよ。無理はしないでください」
「こ、怖くなんてないし! 余はビビってないし!」
ならば問題ないと振り返り村へと足を進める。後ろから聞こえる罵倒と強がる声には聞く耳を持たずに村へと向かっていく。ちょうど人影が見え始めた頃にうるさい声は止まり小さな声で呼び止められる。
「ま、迷子になってしまうかもしれない」
「ちゃんと付いてきてください」
予想外の答えに彼女は慌て、さっさと村へと入ろうとする私にさらに彼女はに焦る。先程よりも大きな声で呼び止め、立ち止まった私の元へゆっくりと近づく。手を後ろで組みながらもじもじとしながらゆっくりと顔を上げる。
「少し手を貸してほしい……」
それだけを言うとまたすぐに顔は下を向いて顔を隠すが、赤く染まった耳を隠せていない。少しだけ笑いを零ぼしながら手を出す。
「これで迷子にはなりませんね」
差し出した手に彼女はそっと触れた。小さいその手はしっかりと私の手を掴む。決して離れないように、決して一人にならないように。
なるべく人通りの少ない道を選び、必要な最低限の物だけを購入する。衣服はサイズの合うものを買い、穴を隠せるように布を買った。急ぎ足で周りから隠れるように歩き回ったからか遊び感覚が芽生え彼女も少し笑う瞬間があった。彼女は人間を悪い目で見ていない。村に入った瞬間の虐殺もあり得たが予想通りの性格で助かった。この魔族は人間を殺さない。
買い揃えるものを全て買い終わり静かに教会へと戻る。こそこそと走り回ったせいか汗がダラダラと鬱陶しい。
「だから太陽は嫌いなんだ。もう一度ぶっ放してくるか」
「そんな事を二回もされては面倒見切れません」
「じょ、冗談だよ~」
ぎこちない苦笑い。止めなければ撃つところだったのだろう。二人で荷物を抱え教会への坂を登った。




