満腹令嬢ポチャリーヌの秘密のお夜食会! 〜健康管理に厳しい婚約者様にバレませんように☆ ※なぜかバレる〜
とある侯爵家で夜会が行われると、参加したご令嬢たちは一泊して帰ることが多い。
今日もまた、侯爵家で夜会が開催され、無事に終了した――――。
「皆さま、もうお揃いで?」
「ええ、ポチャリーヌ様で最後ですわ」
夜会のあとに行われる、女子だけの秘密の夜“食”会。
今日の参加者は五人。
この侯爵家の娘であるポチャリーヌは、ウェーブした金色の髪を耳にかけながら、参加者たちの顔と服装を見てニンマリと微笑んだ。
「今日は、秘蔵のお夜食ですわよ」
「秘蔵っ! 招待状をいただいたときから気になっていましたのよ」
招待状には、『白い夜着で参加すること』と書いていた。その理由は、今日の夜食にある。
「東の国で人気を博している、茶色いドロッとした食べ物はご存知で?」
「もちろんですわ! カレーでございましょう?」
参加しているご令嬢の一人が前のめりになって答えた。テーブルの上にふくよかな胸がもふりと乗ったが、それを気にする者はここにはいない。
「そう、カレーですの。そして、東の国には有名な食べ物がもうひとつありますよね?」
「「ヌードル」」
「どちらもお夜食にするには罪深い食べ物ですわね」
「ええ、ええ。そうでしょう――――」
ポチャリーヌはうんうんと頷きながら言葉を続けた。
「――――なので! 今日はどこまでも罪深く行こうと決めましたの」
パンパンと手を打ち鳴らし、使用人を呼び込む。そうして運ばれてきたものが令嬢たちの前に並べられた。
深めのスープボウルに並々と注がれたカレー。
カレーといえば、ライス。だがそれらしきものはスープボウルの中には見当たらない。
中に入っていたのは、麺だった。
「これは――――」
「カレーヌードルですわ!」
夜食にするにはあまりにもハイカロリーすぎるカレーヌードル。しかも、白い夜着である。
「っ…………! これは厳しい戦いになりそうですわ!」
令嬢たちは各々で髪の毛をまとめながら、これから訪れる戦いに武者震いした――――。
「ポチャリーヌ様、ごきげんよう」
「ごきげんよう」
侯爵家の玄関では、多くを語らず視線のみでやり取りする令嬢たちがいた。それはまるで歴戦の騎士のよう。
侯爵家をあとにした令嬢たちは、みな一様に頬がプリッとしていて、触ったら気持ちよさそうだなどと、言われていることを知らない。
◇◇◇◇◇
とある日の侯爵家で行われた夜会のあと、またいつものように夜食会が行われた。
「本日はお招きいただき、ありがとう存じます」
「まぁ! 王女殿下までもハイカロリーメイツに!?」
「ええ。今までは敵にバレてはならないとお誘いしていなかったのですが…………」
今年十六歳になる王女殿下は、一昨年に社交界デビューしていた。だが、ポチャリーヌの婚約者の妹ということもあり、この秘密の夜食会には誘ったことがなかった。
先日ポチャリーヌは王城で行われたお茶会で、王女殿下が無理して食事制限をしていると知ったのだ。
そこから話はとんとんと進み今日の日を迎えた。
「秘密の夜食会の初参加時は、特別な回なのですよ」
「ええ、ポチャリーヌ様にお伺いしましたわ。私が食べたいものを独断と偏見で選んでよいのですよね?」
「ええ!」
これは、背徳的な会。それに参加するにあたり、新参者は自ら望み進んで背徳的な行いをする。そうして共犯関係にするのだ。誰にもバレないよう、誰にもバラされないように――――。
「何を選びましたの?」
「私は…………十二センチのホールケーキを」
艶々しい頬を桃色に染めた王女殿下は、それはそれは完璧なるハイカロリーメイツと化していた。この時間にホールケーキ。十二センチといえど、ホールケーキ。
「くっ…………なんという視覚の暴力でしょうか。今夜も厳しい戦いになりそうですわね…………!」
「どうしましょう、私……感動で泣きそうですわ! 一人でホールケーキなど、夢でしかありえないと思っていましたわ!」
この日の夜食会は伝説となった――――。
「ごきげんよう、ポチャリーヌ様」
「ごきげんよう」
今日もまた、歴戦の猛者のごとく視線だけで会話をし、侯爵邸をあとにする令嬢たちだった。
この日も平和に解散できた――――と思った直後、ポチャリーヌは、人生最大の敵と対峙することとなった。
婚約者、マスキュラール王太子殿下である。
「…………おい」
美味しそうなチョコレート色の髪の毛をクイッとかき上げ近付いてくるマスキュラールに内心ドキドキとしながら、ポチャリーヌは腰に手を当て、仁王立ちする。
「なんですの?」
「またハイカロリーなもの食べただろう?」
「なななななんのこと?」
「むちむちしてる」
ズイッと近付いてきたマスキュラールに、むにむにと二の腕をつままれてしまう。慌てて振り払いながら、次こそはバレずに夜食を楽しもうと意気込むポチャリーヌであった――――。
□□□□□
ポチャリーヌと婚約したのは、かなり幼いころだったと思う。お互いにあまり自我も芽生えていない内に。
それでもお互いがお互いを想いあっていた。
ポチャリーヌは、食べればすぐ身になってしまう体質を気にし、無理な食事制限をしていた。
その反動のせいでドカ食いをしては、またむちむちに逆戻り。
適度な運動とバランスの良い食事をしろと言っているのに聞きやしない。
「またハイカロリーなものを食べただろう?」
そう言いながらな二の腕を揉む。
ふにふにポヨポヨとして、どこもかしこも柔らかいポチャリーヌ。
別に痩せなくてもいいのだが、健康には気遣って欲しい。だから今日も、つい厳しくしてしまう。
「むちむちしてる」
「きぃぃぃぃ! 淑女に『むちむち』は禁止ですっ!」
「ならば、夜中のつまみ食いをやめろ」
「ななななななんのことでしょう」
――――可愛い。
何の変哲もない、茶色いだけの私の髪を『チョコレート色』だと愛でてくれるポチャリーヌ。
頼むから健康にだけは気を付けてほしい。
いつまでも、ともにいたいから。
◇◇◇◇◇
「さて、今夜は――――エビフライですわ!」
「夜中に揚げ物!?」
「背徳的でしょう? むふふふふっ」
―― fin ――
こちら、昨晩にノリと勢いでの会話から生まれました。
タイトルは『ちむちー』さんからいただきました(ほぼ強奪)
楽しい機会をありがとうございますヽ(=´▽`=)ノ
ちむちーさんは魔法少女のエッツな作品で認識してますが、しっとり系やほんわか系も書けるマルチなお方です☆
https://ncode.syosetu.com/s3117h/
↑↑
彩り豊かな季節作品もありますので、ぜひ!
あ、ノリと勢いで評価やブクマなどしていただけますと、作者のモチベになりますです!ぜひ!!
ではまた、何かのノリと勢いの作品でお会いできれば幸いです。
笛路





